アメリカ大統領選挙の激戦州とNATOの拡大
トランプの勝利で2024年の大統領選挙が終わった。アメリカ大統領選挙の行方を決めるとされるスイング州と呼ばれる7つの激戦州の全てを制してトランプが圧勝した。民主党側はキャンペーンの終盤ではハリス候補のために、バラク・オバマとビル・クリントンという二人の元大統領が激戦州で応援演説を行った。オバマはともかく、クリントンの応援には疑問を覚えた。
このクリントンという人物は、多くの女性スキャンダルを抱えながらも1992年と96年の2回の大統領選挙を勝ち抜き1993年から2001年までの2期8年の間、ホワイトハウスの住人だった。
クリントンは、1992年の大統領選挙では、共和党の現職のジョージ・ブッシュ大統領を破った。父親のブッシュ大統領の方である。その敗れたブッシュ大統領が任期切れ直前の1992年12月に署名し、1994年のクリントン大統領期に発効したNAFTA(北米自由貿易協定)が、アメリカ中西部のミシガン、ウィスコンシン、ペンシルバニアなどの激戦州の製造業に大きな打撃を与えた。関税なしにカナダやメキシコからアメリカへ製品を自由に輸出できるようになったために、多くの企業が賃金の安いメキシコに工場を移したからだ。これが高卒白人層の大量失業を生んだ。この人々の恨みが、消えていない。この層が、2016年の大統領選挙で、ドナルド・トランプに投票してビル・クリントンの妻のヒラリー・クリントンを落選させた。
NAFTAの交渉を行い協定に署名したのは共和党の父親ブッシュ大統領だった。ブッシュ家に代表される伝統的な共和党の主流派がトランプに駆逐された背景でもある。
共和党の大統領の署名したNAFTAの悪影響でクリントンを責められるだろうか。それは不当ではない。というのは、アメリカの大統領には大きな権限があるからだ。トランプは、前の大統領の任期中に、オバマ大統領期にアメリカが署名したイラン核合意や地球温暖化の協定から離脱している。クリントンにも、そのつもりならば、NAFTAから離脱する権限があった。だが、もちろんクリントンは、そうしなかった。工場労働者の仕事が音を立ててメキシコに吸い込まれていった。やがて中国からの安価な輸入品が、さらにアメリカの雇用を破壊した。
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