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5000人超が投票、国内最大規模の音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」新設の狙いとは

柴那典音楽ジャーナリスト
提供:CEIPA(写真はイメージ)

■「日本版グラミー賞」の実現へ

アーティストを中心とした5000人以上の音楽関係者が投票メンバーとして参加する国内最大規模の音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」が誕生する。

「MUSIC AWARDS JAPAN」は、音楽業界の主要5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモーターズ協会)が垣根を越えて設立した一般社団法人カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)が新設したアワードだ。「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」をコンセプトに掲げ、主要6部門をはじめ60以上の部門の表彰を予定。授賞式は2025年5月22日に京都・ロームシアター京都で行われ、その模様は地上波での放送、YouTubeでの配信が予定されている。

10月21日にはメディア説明会が開催され、CEIPA理事長の村松俊亮氏(日本レコード協会会長)、「MUSIC AWARDS JAPAN」実行委員会委員長の野村達矢氏(日本音楽制作者連盟理事長)、副委員長の稲葉豊氏(日本音楽出版社協会会長)が登壇した。

村松氏はアワード設立の背景として、ストリーミングサービスの拡大によって音楽業界が海外とボーダレスに繋がり、アーティストの活動の範囲がグローバルに広がっていることを指摘。「才能ある日本のアーティストをどうしても海外で認知させたいと思い、発信型のアワードが必要なのではないかという話になった」と語った。

モデルにしているのは世界で最も権威ある音楽賞の一つである米グラミー賞だ。主要5団体はグラミー賞の授賞式に10年ほど前からそれぞれ視察に出向いていたという。

「いつか日本でもああいったアワードができるといいなという話は以前からあった」「ここ数年でアーティストやクリエイターからも日本でもグラミー賞のようなアワードを切望する声が出始めてきた状況もあった」と野村氏は説明した。稲葉氏は「5年、10年、15年と、アメリカのグラミー賞のように長きにわたって継続していきたい」と展望を語った。

■アーティストが選考に参加する透明性あるプロセスを重視

野村氏はアワードの4つの約束・理念として「透明性」「グローバル」「賞賛」「創造」を掲げた。

重視しているのは透明性のある選考と投票のプロセスだ。ノミネート対象は2024年1月29日~2025年1月26日にビルボードジャパンやオリコンなど主要音楽チャートにランクインした楽曲やアーティスト。対象期間以前にリリースされた作品でもこの期間にチャートインしていれば選考対象となる。選考は、アーティストやマネジャー、エンジニア、音楽評論家など幅広い音楽関係者で構成される5000人以上の投票メンバーによって行われる。

日本の音楽業界は急速にグローバル化が進みつつある。日本版グラミー賞とも言うべき「MUSIC AWARDS JAPAN」の狙いのひとつは、その中で日本の音楽カルチャーの充実を世界に発信し、グローバルなプレゼンスを高めていくことにある。国内だけでなくアジア地域のアーティストや楽曲にスポットを当てるきっかけにもなるはずだ。

また、同賞の従来の国内音楽賞との大きな違いは、アーティスト自身が選考に参加するということにある。セールスや動員などの経済的な側面、また業界内外の政治的な意図に左右されない選考を実現することで、日本の音楽文化の価値をこれまでにない形で発信することができるだろう。

授賞式前後の5月17日~23日には「アワードウィーク」として国内外の音楽業界関係者によるカンファレンスやアーティストのショーケースライブも予定しているという。新たな音楽の祭典に期待したい。

音楽ジャーナリスト

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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