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なぜオアシスの再結成は世界を熱狂させているのか。デビュー30周年特別展から考えた

柴那典音楽ジャーナリスト
(提供:ソニー・ミュージック)

11月1日から23日まで東京・六本木ミュージアムにて開催される展覧会「リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30 周年特別展」に訪れた。

1994年にデビュー、世界中にセンセーションを巻き起こした英国の伝説的なロックバンド、オアシス。今年8月には2009年の解散以来15年ぶりとなる再結成を発表し、2025年にはワールドツアーの開催を予定している。発売された英国、アイルランド、北米、オーストラリアのチケットは全て即日完売した。

バンドのデビュー30周年を記念した展覧会は、今なお熱狂的な人気を持つ彼らの軌跡を辿る内容だ。リアルタイムで追ってきたコアなファンだけでなく、若い世代にとっても彼らの魅力をわかりやすく伝えるものになっている。

バンドの活動年表やこれまでに発表した7枚のアルバムの紹介に加え、受賞トロフィーの数々や表紙を飾った雑誌、ライブ映像の上映、初来日公演時のスケジュール表などもあり、バンドの歩みと共に当時の時代の空気を生々しく感じられる内容だ。

メンバー愛用の楽器や手書きの歌詞などの貴重なアイテムも展示。アルバムやシングルの告知ポスターやツアーポスターが並ぶコーナーでは、ビジュアルイメージやデザインを重視してきたバンドの姿勢も伝わる。作詞家のいしわたり淳治が新たに翻訳した代表曲の対訳歌詞も展示され、専用アプリで楽曲を聴きながら彼らの音楽の世界観を体験できる。

■世界的な「ロック復権」のトレンド

なぜオアシスはここまでのモンスターバンドになったのか。なぜ今も求められ続けているのか。

リアム・ギャラガーとノエル・ギャラガーの兄弟を中心に、マンチェスターの労働者階級出身のメンバーで結成されたオアシス。その音楽的なポイントは、あくまで普遍的なスタイルのロックバンドであるということにある。何らかの革新的なサウンドやジャンルを打ち出し、それが評価を集めたというわけではない。彼らのルーツにはビートルズやローリング・ストーンズなどのロック・レジェンドがある。セックス・ピストルズなどのパンクバンドや、「マッドチェスター」と呼ばれたムーブメントも大きな影響を与えた。60年代、70年代、80年代を通じて活躍してきた数々の偉大なブリティッシュ・ロックのバンドたちを受け継ぐような存在として評価を集めてきた。

度重なる兄弟喧嘩を筆頭にバンドにまつわる様々なニュースが当時のメディアを賑わせたが、バンドのブレイクは決して話題先行型のものではなく、人気拡大の原動力はあくまで楽曲の持つ強度だった。「ワンダーウォール」や「ホワットエヴァー」、「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」など、一度聴いたら耳に馴染みライブでは大合唱になるメロディの親しみやすさが人々の心を捉えたのである。

下の世代に与えたインパクトの大きさも見逃せない。本国の英国はもとより、日本においてもASIAN KUNG-FU GENERATIONや[Alexandros]などオアシスの影響を公言している人気バンドは多い。

また、ヒップホップやR&Bの楽曲がヒットチャートを席巻していた数年前に比べ、マネスキンなど若手バンドが飛躍を果たし世界の音楽シーンにおいて「ロック復権」がトレンドとなってきた時代の追い風もあるだろう。解散後もリアムとノエルはそれぞれソロアーティストとして着実にキャリアを重ね、第一線で活動を繰り広げてきた。楽曲の持つ普遍的な魅力が改めて評価を集め、待望の再結成となった。

先日には南米での公演も発表された。現時点では未定だが、来日公演の実現にも期待したい。

音楽ジャーナリスト

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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