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ラウ・アレハンドロとMILLENNIUM PARADE、コラボ曲「KIZAO」初披露に見た可能性

柴那典音楽ジャーナリスト
ラウ・アレハンドロ(撮影:Marco Perretta)

10月20日に埼玉県・さいたまスーパーアリーナにて開催された「Coke STUDIOライブ 2024」に訪れた。

この日のライブには、NewJeans、Creepy Nuts、リタ・オラ、ラウ・アレハンドロなど国内外の人気アーティスト総勢7組が出演。集まったオーディエンスが思い思いに楽しむ様子が見て取れた。

なかでも大きな盛り上がりとなっていたのが、この日のヘッドライナーとして登場したNewJeansのステージだ。来日は今年6月の東京ドーム公演から4ヶ月ぶり。バンド編成を従え「Attention」や「Ditto」など人気曲を次々と披露すると、観客はペンライトを振って応える。コカ・コーラとのコラボレーション曲「Zero」での「コカ・コーラ マシッタ」(コカ・コーラ、おいしい)と繰り返すサビも印象に残った。MCでは日本滞在時にいつもドン・キホーテに行くというエピソードを明かすなど、5人のメンバーのリラックスして楽しげなムードも伝わってきた。

Creepy Nutsのライブも熱狂を呼んでいた。2024年を代表する一曲となった「Bling‐Bang‐Bang‐Born」を筆頭に、ドラマ『不適切にもほどがある!』主題歌の「二度寝」などヒット曲を次々と披露。R‐指定による変幻自在のラップ、DJ松永の巧みなスクラッチと、卓越したパフォーマンスを見せつける。TVアニメ『ダンダダン』オープニングテーマとして書き下ろされた新曲「オトノケ」も披露。ジャージークラブの疾走感溢れるビートにメロディアスなラップが乗るユニークでキャッチーな曲調で観客の心を掴んでいた。

そして個人的に最も印象的だったのがラウ・アレハンドロのライブだった。プエルトリコ出身のシンガーソングライターで、これまで4度のグラミー賞ノミネートなど数々のアワードでも実績を持つラテン・ミュージック界のスーパースター。レゲトンを軸にしながらR&Bやハウス・ミュージックなど様々なジャンルを旺盛に取り入れたスタイルとセクシーな歌声が持ち味で、中南米だけでなく北米やヨーロッパなどグローバルに支持を広げる新世代のアーティストだ。

撮影:Marco Perretta
撮影:Marco Perretta

これまでミュージックビデオの撮影などで日本に訪れたことはあったが、ラウ・アレハンドロにとっては今回が日本での初ライブとなる。観客も初めて観る人が大半だったが、そう感じさせないほどの圧巻のパフォーマンスで会場を沸かせていた。バックダンサーを引き連れてステージに登場し、世界的なヒットとなった「Todo DeTi」や新曲の「Pasaporte」など代表曲を次々と披露。MCではラーメンが好きで訪日中にたびたび食べたことを日本語で明かすなど親しみやすいキャラクターも垣間見えた。

この日はスペシャルなコラボも展開された。中盤でMILLENNIUM PARADEの常田大希がギターを手に登場。ラウ・アレハンドロと共にMILLENNIUM PARADEの新曲「KIZAO」を初披露した。

「KIZAO」はラウ・アレハンドロとラテン・ポップの気鋭のプロデューサーであるタイニーをフィーチャリングした一曲。東京とマイアミのスタジオで共作した、レゲトンとシティ・ポップをかけ合わせたユニークなテイストと情熱的なメロディを持つ一曲だ。3DCGアニメーションのミュージックビデオを背後にラウと常田が並び立つ鮮烈なパフォーマンスを見せてくれた。

楽曲は双方にとって異国でのファンを獲得する機会になるだろう。国境を超えたコラボの可能性を強く感じた。

音楽ジャーナリスト

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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