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ブラックホール同士が衝突すると何が起こる?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「ブラックホール同士が衝突するとどうなるか」というテーマで動画をお送りしていきます。

ブラックホールとはその重力が大きすぎて、そこから光でさえも逃げだせない天体です。

ブラックホールのすぐそばに星が近づくと、強い重力で星がばらばらに壊され、吸い込まれていきます。

吸い込まれていく星のガスはブラックホールの周りを高速で回転し、降着円盤というガス円盤を形成します。

降着円盤の中では高速で運動するガス同士の摩擦によって超高熱が発生し、強いX線を放射します。

ブラックホール同士の衝突

それでは、ブラックホール同士が衝突すると一体どのようなことが起きるのでしょうか?

ブラックホールのほとんどは、大質量の星が進化の末に行きついた姿です。

太陽の質量の30倍以上の星がその最期に超新星爆発を起こすと、星の内部が潰れてブラックホールになります。

非常に明るい大質量の恒星の多くは連星系を成しているという観測結果があります。

連星系のそれぞれの恒星がブラックホールになると、ブラックホール同士の連星系ができます。

連星系のふたつのブラックホールは、らせん状の軌道を描きながら互いに落ち込んでいきます。

両者が近づくにつれ、周りの空間のゆがみが増し、ついには合体して1つのブラックホールになります。

合体直後のブラックホールは激しく振動し、エネルギーを失いながら次第に落ち着いていきます。

重力波とは

ブラックホールの衝突の過程では、強い重力波が発生します。

重力波とは、時空のゆがみが波として伝播していくものです。

アインシュタインの一般相対性理論によると、重力は時空のゆがみとして理解されます。

地球は太陽の周りを回っていますが、太陽の質量によってその周囲の時空がゆがみ、そのゆがみによって地球は重力を受けています。

Credit:R. Hurt - Caltech  JPL
Credit:R. Hurt - Caltech JPL

質量をもつ物体が運動すると、それに伴って時空のゆがみが波となって光速で伝わっていきます。

重力波が通過すると空間が伸び縮みします。

しかし、重力はとても弱いため、重力波の効果は非常に小さなものです。

ダンベルを振り回すだけでも重力波が発生しますが、そのパワーはとてつもなく弱いです。

太陽をめぐる惑星や恒星同士の連星でさえ、人類が検出できるレベルの重力波を発することはありません。

重力波が検出される可能性が高いのはブラックホールや中性子星などの高密度な天体同士の合体です。

Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center
Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center

ブラックホールの合体については、私たちの銀河系では100万年に1度の頻度で発生すると考えられています。

非常にまれな現象ですが、この大イベントは10億光年離れた場所で起きたとしても検出可能です。

その範囲には何百万もの銀河があるので、1年に数回はこのイベントを観測できるという見積もりになります。

重力波によるブラックホール衝突の観測

人類が初めて重力波イベントを捉えたのは、2015年9月14日のことでした。

この日、LIGO(レーザー干渉計重力波天文台)の2つの観測所でほぼ同時に重力波が観測されました。

この信号は地球から約13億光年離れた場所で起ったブラックホールの合体による重力波であることが確認されたのです。

Credit:B. P. Abbott et al. (2016)
Credit:B. P. Abbott et al. (2016)

LIGOが観測した重力波信号は時間にしてたったの0.2秒程度でした。

この0.2秒の重力波信号を解析することで何が分かったのでしょうか?

観測された重力波の波形は、大きく3つの段階に分けられます。

最初はインスパイラル期と呼ばれる、2つのブラックホールがお互いの周りを公転している段階です。

重力波を放出しつつ、そのエネルギー損失によってお互いに落ち込んでいきます。

すると公転周期は早く、重力の効果は強くなるので、より高い周波数、大きな振幅の重力波を放射することになります。

結果として、時間とともに周波数と振動数が増大して特徴的な波形が現れます。

2つ目の段階は、合体期と呼ばれます。

2つのブラックホールが合体し、非常に大きな重力波を放射する瞬間です。

最後はリングダウン期と呼ばれ、合体によって新しくできたブラックホールの振動が重力波を放射して、エネルギーを失いながら落ち着いていく段階です。

重力波の周波数からは、連星の公転周期が求められます。

公転周期が分かれば、そこからケプラーの法則と一般相対性理論の効果を使うと、公転軌道の大きさが得られます。

重力波の振幅はエネルギーの大きさを表しています。

連星系を構成するブラックホールの質量が大きいと、放射される重力波のエネルギーも大きくなり振幅が大きくなります。

また、ブラックホールの質量が大きいほど、重力波を放出して連星の公転エネルギーを失いやすく、すぐに公転軌道が小さくなります。

このように重力波の波形からブラックホールの質量が分かるのです。

結果として、2015年9月の重力波イベントは、それぞれ太陽質量の36倍と29倍のブラックホールが合体し、太陽質量の62倍のひとつのブラックホールができた現象であることが判明しました。

また、合体の直前には、ブラックホールが光の速度のおよそ60%もの速度で運動していたこともわかりました。

ここで、合体前のブラックホールの質量の合計は36+29=65太陽質量ですが、形成されたブラックホールは62太陽質量のものです。

残りの太陽3つ分の質量はどこに行ったのでしょうか?

相対性理論によると質量はエネルギーに変換可能です。

実は太陽3個分(地球100万個分)の質量は重力波のエネルギーとして一瞬にして放出されたのです。

Credit:http://www.worldwidetelescope.org/
Credit:http://www.worldwidetelescope.org/

この重力波のエネルギーは、地球から現在の距離で465億光年以内の観測可能な宇宙の中にある全ての星や銀河が放つ光のエネルギーの、さらに10倍以上も大きいエネルギーだったそうです!

瞬間的とはいえ、本当に想像を絶するエネルギーが、ブラックホール同士の合体の際の重力波によって放たれたことが分かると思います。

Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center
Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center

ブラックホール同士の衝突というのは、とてつもなく大きな重力が関わる出来事です。

そこでは一般相対性理論でも予測できなかった事象が見つかるかもしれません。

それが新しい重力理論のヒントになるかもしれません。

ブラックホールの衝突というのは宇宙の中でも極めて激しい現象です。

重力波によるブラックホールや初期宇宙の探求にこれからも期待したいですね!

今回の動画の関連で、以下の動画では仮説上の天体「ホワイトホール」の解説と、ホワイトホールが実在する証拠となる可能性のある唯一の天体現象を解説しているので、併せてご覧ください!

https://www.ligo.org/science/Publication-GW150914/science-summary-japanese.pdf
https://svs.gsfc.nasa.gov/13043

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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