南太平洋に超大型サイクロン
双子の熱帯低気圧
12日午前3時、台風3号が発生しました。台風は一年中発生するけれど、一年で最も少ない月は2月、次いで1月と3月です。冬から春にかけては「台風のバカンス」と言える時期です。一方で、南半球は夏から秋へ、ちょうど台風シーズンまっただ中です。
台風3号の南、赤道を挟んでサイクロン(黄色の丸囲み)の大きな渦巻きが見えます。まるで双子の熱帯低気圧のよう。
南太平洋の熱帯低気圧を監視しているフィジー気象局ナンディ熱帯低気圧センターによると、13日15時(日本時間)現在、サイクロン・パム(SEVERE TROPICAL CYCLONE PAM)の中心気圧は900hPa、中心付近の最大風速は65メートルで、強さは最大級のカテゴリー5です。
同じ熱帯低気圧でも、赤道を挟んで北側の海域で発生したものは台風と呼び、南側の海域で発生したものはサイクロンと呼びます。ややこしいですが、世界で発生する熱帯低気圧は、生まれる場所で呼び方が変わる特異な気象現象なのです。
特別警報の暴風雨
サイクロン・パムが接近しているバヌアツ共和国では、風速45メートルを超える猛烈な風が吹いているとワシントン・ポスト紙は伝えています。また、ニュージーランド・ヘラルド紙はサイクロン・パムに襲われたツバルの被害を伝えています。
風速45メートルといえば、特急列車並みの時速160キロ。電信柱や木が根こそぎ倒れ、走行中のトラックが横転するほどの風で、屋外に出ることは極めて危険な状態です。日本では特別警報が発表されるような暴風でしょう。
サイクロン・パムは今後も、南寄りに進む予想で、ニュージーランドやフィジーでは最大限の警戒が呼びかけられています。
この夏の台風シーズンは?
昨夏は台風が4個上陸し、2004年以来10年ぶりに台風の上陸が多くなりました。台風の上陸は平均すると一年間に2個から3個程度ですが、2004年のように10個(過去最高)を記録する年もあります。とくに、最近は、昨年7月の台風8号のように、日本近海で発達のピークを迎える台風が目立つようになり、油断ができません。
この夏の台風がどうなるのか?非常に興味がありますが、予測は難しいのが現状です。最近はスーパー台風が増えるなどといって、リアルなコンピューターグラフィック動画を目にしますが、現実的な予測ではなく、将来的な見通しを示したに過ぎないのです。
ただ、アメリカのように、ハリケーンのシーズン予報を発表している国もあり、まったく希望がないわけではありません。
日本でも予測技術は着実に向上していて、台風の発生数が多い、少ないを確率で示すことができるようになると思います。
この夏の台風の見通しですが、先月発表された暖候期予報によると、フィリピン付近の対流活動は平年程度とみられています。フィリピンからマリアナ諸島にかけての海域で発生する台風は日本へ影響しやすい。今後、この海域で対流活動が活発になるのか、注目したいと思います。
【参考資料】
バヌアツ共和国気象局(Vanuatu Meteorological Services)
フィジー気象局ナンディ熱帯低気圧センター(RSMC Nadi-Tropical Cyclone Centre)
ワシントン・ポスト,Tropical Cyclone Pam in South Pacific close to Category 5 as it nears Vanuatu
ニュージーランド・ヘラルド,Cyclone Pam: NZ bracing for destructive weather
上野充,山口宗彦,2012:図解台風の科学 発生・発達のしくみから地球温暖化の影響まで,講談社ブルーバックスB-1778.