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築地・水産仲卸組合「今の豊洲には行かれない」 青果仲卸組合と共同歩調へ

池上正樹心と街を追うジャーナリスト

「今の豊洲(市場)には行かれない」

5月15日、東京都の「市場のあり方戦略本部」の本部長インタビュー(意見交換)で、築地市場最大の団体である水産仲卸業者でつくる「東京魚市場卸協同組合」(東卸)の早山豊理事長は、そう明言した。

「小池都知事に会わせてほしい。我々の思いを直接伝えたい」

「我々は、今の日常が保たれている以上、焦っていない。ゆっくり考えてほしい」

関係者によると、この日、東卸の正副理事長から出された意見は、「生殺しにしている」「移転できずに困っている」といった一部代弁者の声を真っ向から否定する当事者の声だった。

実際に、現場で市場を使う側のいちばんの当事者である仲卸たちが、長年、都の市場移転騒動に翻弄されてきて、いま何を思い、これからどのように考えているのか。今回の「今の豊洲には行かれない」というように、築地の仲卸たちの意向が、都のヒアリングを通して、初めて外部に伝わり明らかになる。

そんな市場の中核となる当事者団体に対し、都のインタビューは非公開で行われた。

都の説明によると、東卸側からは「昨年11月、盛り土がないことをわからない状態で移転していたら大変なことになっていただろう」「現状のままでは豊洲移転できる状況にはない」「検討を急ぐことなく、ゆっくりと考えて頂きたい」「消費者が理解、納得できて、選んでもらえる市場にすべき」「知事に直接思いを伝えないまま、判断してもらいたくない」といった意見が出されたという。

「組合員には知る権利もある。豊洲市場の問題点と築地市場改修案について、もう一度、都市場局が市場PTと一緒に説明会を開催するよう要望しました。それに対し、(本部長の)中西副知事から返事はありませんでした。その後、雑談形式で“PTと一緒にやるのはきついかな”という発言もありました」

東卸は近々、小池都知事と市場長宛てに、豊洲と築地の説明会開催の要望書を出す。

一方、青果の仲卸業者約100社でつくる「築地本場青果卸売協同組合」(山田安良理事長)と「東京築地市場青果仲卸協同組合」(増山春行理事長)の2つの組合は、今年2月、「風評が完全に払拭され、食の安全・安心が担保されない限り、豊洲市場への移転はできない」という声明を両組合員向けに出している。

「我々は、早く移転しろとは言ってません。豊洲に行ったら風評被害に遭うことは確実で、学校給食など様々な飲食で取引できないと言われている実態を話しました」

同組合の山田理事長によれば、都側に説明した実態は、2月に出した声明の趣旨と変わっていないと話す。

「青果だけ豊洲に行けばいい、ということはあり得ない。卸さんは向こうのほうが商売しやすいとかねがね言ってるけど、我々仲卸が言ったように記事にも書かれた。仲卸という市場内業者の視点から、水産の仲卸と話し合いを持ち始めたところなのに」

このように、市場を使っていく側の水産と青果の仲卸として、これから共同歩調をとる意向だという。

小池都知事の総合的判断のためのロードマップは、昨年11月に示されたとおりに予定通り進んでいる。

専門家会議は、5月18日に盛り土がなかったことによる確認とリスク管理上必要な対策案などについて報告、市場PTでも5月下旬に報告書案が取りまとめられる。

一方、市場のあり方戦略本部は、引き続きヒアリングを進め、知事の総合的判断につなげるための総点検を行うことになるが、市場の仲卸組合が都に「説明会開催」や「ゆっくり考えて」などと要望したことにより、「早ければ今月下旬」と見られていた知事の判断時期の可能性は、少し遠のいたかもしれない。

心と街を追うジャーナリスト

通信社などの勤務を経てジャーナリスト。約30年前にわたって「ひきこもり」関係の取材を続けている。兄弟姉妹オンライン支部長。「ひきこもりフューチャーセッション庵-IORI-」設立メンバー。岐阜市ひきこもり支援連携会議座長、江戸川区ひきこもりサポート協議会副座長、港区ひきこもり支援調整会議委員、厚労省ひきこもり広報事業企画検討委員会委員等。著書『ルポ「8050問題」』『ルポひきこもり未満』『ふたたび、ここから~東日本大震災・石巻の人たちの50日間』等多数。『ひきこもり先生』や『こもりびと』などのNHKドラマの監修も務める。テレビやラジオにも多数出演。全国各地の行政機関などで講演

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