「伝え方」を変えずに部下を動かす話し方
「伝え方」で悩んでいい人、「伝え方」で悩まなくていい人
「どう伝えたら、相手は理解してくれるのか……」
「伝え方」で悩む人はとても多いようです。「伝え方」をテーマにした書籍が飛ぶように売れる時代です。私もコンサルタントとして「伝え方」は大切だと日々痛感します。
ただ、気になることがあります。「伝え方」で悩む必要がない人まで「伝え方」で悩んでいるケースがあることです。たとえば私が経営者、マネジャーの方々を対象にセミナーをした際、よく以下のような相談を受けます。
「横山さんが言っていることはわかるんですが、それをどうやって部下に伝えたらいいのかわかりません」
部下を育成するうえで、こちらの意図や考え方が正しく伝わっているかどうかは重要なポイントです。ですから、部下にうまく伝わっていない場合は、上司の悩みは深まるばかりです。しかし、このケースの場合、どうやって伝えたらいいのか、という「伝え方」で悩む必要はありません。
一方通行だと「選択的認知」を回避できない
「伝え方」をどうすべきかは、以下の2つの視点で考えましょう。
● コミュニケーションが「一方通行」か?
● コミュニケーションが「双方向」か?
コミュニケーションが「一方通行」であれば、「伝え方」はとても重要になります。商品のキャッチコピーや、テレビCM、演説などはもちろん「一方通行」。ブログやフェイスブックなどの記事も、コメント機能によって「双方向」にもなりますが、どちらかというと「一方通行」です。ですから「伝え方」は気をつけたほうがよいでしょう。
ただ、面と向かって話ができる相手であれば基本的に「双方向」になります。特に、相手にアウトプットを強制できるのであればなおさら、「伝え方」で悩む必要はありません。どんな話し方、どんな伝え方でもかまわないのです。正しく伝わっているかどうかは、相手にアウトプットさせればいいだけだからです。
「先日私が朝礼で言っていたことがキチンと伝えわってるかな? 具体的に、来週から君は何をすればいいのか、ちょっと言ってみて」
上司からこう言われて、
「ええーっと……。来週から、ですか……。何でしょう?」
このように曖昧に答える人がいます。
「伝え方」が良くても悪くても、聞いているほうは意外と正しく認知していないものです。自分の都合のいいことは耳に入るが、そうでないことは認知しないことを「選択的認知」と呼びます。どんな言葉を選んで伝えたらいいのかと悩んでも、聞いている相手が言葉自体を認知しなければ、どうしようもありません。ですから、確実に伝えるためには、相手にアウトプットさせるよう仕向ければいいのです。
プリフレーミングで、強制的にアウトプットさせる
冒頭の話し方ですべてが決まる! 人を動かす話し方で紹介した「プリフレーミング」を使うことで「伝え方」に悩まなくとも、相手に伝わるようになります。「プリフレーミング」とは、話し手が最初にフレーム(枠組み)を作り上げて相手を誘導するコミュニケーション技術です。本題に入る前に、プリフレーミング技術を使ってアウトプットを強制するのです。
「これから言うことはとても大事なことなので、メモをとって欲しい。そして私が話し終わったら、君がいつまでに誰と何をしなければならないのか、具体的に私に言ってくれないか。繰り返すけれど、これはとても大事なことだ。私はキチンと確認したいので、よろしく」
こう言われて適当に聞く部下はいないでしょう。「ちょっと待ってください」と言ってメモを取り出し、一字一句、上司の言葉を漏れなく拾おうとするでしょう。「選択的認知」は起こりようがないのです。とても簡単なことですが、ほとんどの人ができていません。言葉や表現に頼りすぎ。そして言いっぱなしで終わるのです。
高度情報時代となり、言葉や言語表現に振り回され、難しく考えすぎている人が増えています。上司と部下の関係も同じです。問題はシンプルで、解決策もまたシンプルであることが多いのです。ぜひ試してみてください。