学校図書館の蔵書平均冊数や図書購入費をさぐる
学校図書館の図書数は漸増中
「子供の本離れ」は本当に生じているのだろうか。環境面からの観点として、学校図書館にスポットライトを当て、学校図書館の蔵書の平均冊数や学校における図書購入費の動向を、全国学校図書館協議会が公開している学校図書館調査の結果から確認する。
まずは学校図書館の平均蔵書冊数。直近の2018年度分では小学校で9856冊、中学校で1万2585冊、高等学校で2万5787冊となった。
いくぶんの振れがあるものの、小中高ともに冊数は漸増状態にある。書籍は永遠にその状態が維持されるわけでは無く、閲読に耐えきれないほどに劣化してしまうものもあれば、不祥事や事故、事件などで失われてしまうものもある。同時に毎年時節に合わせる形で、あるいはリクエストに応えて新しい書籍が入荷され、新陳代謝が行われている。この過程の中で、少しずつ増強されていくようすがうかがえる。
ただし小学校に限ると、ここ数年では漸減に転じたとも解釈できる動きをしている。要注意な動向には違いない。
冊数では圧倒的に高等学校が多く、小学校と中学校では大きな差異はみられない。高校になると取り扱う分野も多様におよび、小中学校のような体制ではカバーできないからだろう。
予算は小中学校で横ばい、高校は漸減
図書館の書籍は寄付などによって増強される場合もあるが、多くは組まれた予算の中で時節やリクエストに応じる形で購入され、新しく蔵書として加わることになる。その予算の執行額(予算額を経て実際に執行された額)は、直近の2017年度分では小学校で48.9万円、中学校で68.0万円、高等学校で73.4万円となる。
小中学校の予算はほぼ横ばいで推移しているが、高等学校は2008年度あたりまでは漸減傾向にあった。記録が取得できる1999年度から2008年度までの間に、おおよそ40万円程の減少を示している。あくまでも平均額なので高校の特性の変化や教育方針・予算配分のシフトがあったのだろうが、それにしても小さい額ではない。また消費税率の引上げや、書籍単価の上昇を考えると、今後はさらに厳しい図書館運営が迫られることだろう。
公営図書館では蔵書を乱暴に扱い、あるいは故意で棄損する事件をよく見聞きする。学校図書館の図書で似たような事案が発生しているかは定かでは無いが、自分自身の所有物で無い書籍だからと粗雑に扱う事例が皆無とは考えにくい。
書籍は知識、情報、書き手の想いが詰められたもので、大切に扱うことで自分より後の人達にまでその内容を伝え続けることができる。いわば歴史をつづり、歴史とともに生きていく存在であり、物言わぬ教師であり、アナログのデータベースでもある。たとえそれが図書館の図書であったとしても、慈しみを忘れずに接することを心掛けたいものだ。
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