じんわり増えてる図書館数、その実態は!?
印刷物業界が不調な理由の一つとしてよく挙げられる説に「読書離れが進んでいるから」がある。その話が事実なのか否か、それを推し量る指針の一つとなり得る、図書館の数について、文部科学省の社会教育調査から確認していくことにする。
「社会教育調査」とは文部科学省が3年おきに実施している、「社会教育行政に必要な社会教育に関する基本的事項を明らかにすることを目的とする」調査。原則的に全数調査によるもの。調査開始は1955年だが、結果内容が容易に確認できるのは1999年分以降となっている。
まず最初に示すのは、日本における図書館、あるいはそれに類する施設の数。博物館、さらには博物館類似施設の動向も示しておく。今調査は3年おきのもので、次の公開値となる2014年度分は2016年春先の公開予定であるため、現時点では2011年度分のが最新。
また博物館と博物館類似施設の違いだが、前者は博物館法第2条に規定する施設。博物館法に定められた各種要件を満たしている(開館日が年150日以上であることなど)のが条件となる。後者は博物館と同種の事業を行い、博物館法第29条に規定する、博物館と同等の施設。要は博物館ほどの厳格さでは区分に入らないが、博物館的な施設のことを指す。
直近の2011年度で博物館類似施設が減っているが、それ以外は大よそ少しずつながらも増加。図書館は直近では3274館。もっとも古い1996年度の2396館と比べ、4割近い上乗せ。
図書館数が増えれば当然利用者数も増加する、はず。そこで全体の年間施設利用者数と、図書館1館あたりの平均利用者数を確認したのが次のグラフ。年間利用者数のカウントなので、特定時期における館数を示した最初のグラフとは1年ずれた値であることに注意。つまり直近のデータは、館数は2011年10月1日時点、利用者数は2010年度一年間分(2010年4月から2011年3月)の値を示している。
仮に図書館を利用する層に変化が無ければ、図書館数が増えても分散化するだけで、総利用者は増えない。しかし図書館数の増加と共に総利用者数も増加を続け、2010年度では1年間に延べ1.9億人近い人が利用している計算になる。さらに幾分のイレギュラーな動きがあるが、図書館単位での利用者数も増加し、1995年度当時と比べて2010年度では14%ほどの利用者増が確認できる。
図書館数が増え、利用者全体数が増え、図書館単位での利用者数も増えている。雑誌や書籍などの出版業界の動向はまた別だが、少なくとも本離れ、読書離れといった状況は現実としては起きていないと判断できる状況に違いはあるまい。
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