震災10年。水道管の耐震化40%。災害に強いまちづくり財源とコロナ禍の生活対策財源は分けるべき
岩手、宮城、福島、茨城、千葉を中心に220万世帯以上が断水
2011年3月11日に発生したM9.0の巨大地震、それに伴う大津波は、水道インフラに壊滅的な打撃を与えた。水道管が壊れ、市中に水があふれ出した。浄水場の地盤が陥没し、ろ過池や貯水池が崩れた。電源を失い機能停止になり「水はあるが送れない」浄水場も多かった。水源もダメージを受けた。大量の土砂が流れ込んで水が濁った。沿岸部では津波で塩水が入り地下水(井戸)が利用できなくなった。
蛇口をひねれば当たり前のように出た水が、その日からぴたりと止まった。岩手、宮城、福島、茨城、千葉を中心に220万世帯以上が断水した。
各地の水道事業者らによる支援隊が続々と現地入りし、応急給水活動が始まった。最大時には全国から355台の給水車が集まった。
耐震性のある水道管(耐震管)であれば防げた地域も
水道事業は地域環境に左右される。内陸部は急ピッチで復旧したが、沿岸部は難しかった。標高の高い内陸部は比較的作業がしやすかったが、海沿いの津波に襲われた地域、液状化した地域の作業は困難を極めた。震災直後、沿岸部は情報すら入ってこなかった。なんとか被災地に行けるようになっても、まず路上に堆積した瓦礫と土砂を取り除くことから始めなくてはならなかった。
震災を通じて水道がかかえている問題点が浮かび上がった。その1つが、水道管や浄水施設の耐震化の必要性だった。
東日本大震災では激しい横揺れによって水道管が継ぎ手部分で抜けた。これによって断水が起きた。耐震性のある水道管(耐震管)であれば、ある程度防げたと考えられる。
水道管の耐震適合率は全国平均で40.3%、浄水施設の耐震化率は30.6%
では、現状はどうか。厚生労働省によると、平成30年度末時点の導水管や送水管など「基幹管路」と呼ばれる水道管の耐震適合率は全国平均で40.3%。調査がはじまった平成20年度末が28.1%だから、12.2ポイント上昇している。
<用語>
耐震適合率=耐震適合性のある管の割合
耐震適合性のある管とは
1)耐震管
2)耐震管ではないが、布設された地盤の性状を勘案すれば耐震性があると評価できる管
耐震適合率は都道府県によって差異がある。
さらに同じ都道府県内でも都市部と地方部で差異がある。水道事業者別(自治体、一部事務組合など)でも進み具合に大きな開きがある状況となっている。
また、浄水施設の耐震化率は30.6%。平成20年度の16.3%から14.3ポイント上昇した。着水井から浄水池までの処理系統の全てを耐震化するには施設停止が必要で改修が難しい。
<平成20年度>
水道管の耐震適合率 28.1%
浄水施設の耐震化率 16.3%
<平成30年度>
水道管の耐震適合率 40.3%
浄水施設の耐震化率 30.6%
水道料金の減免は水道管整備の資金で行われている
国は、南海トラフ地震や首都直下地震など、発生が想定される大規模自然災害に対して強靱な国づくりに関する取組として、「国土強靱化基本計画及び国土強靱化アクションプラン2019」を策定し、水道においては基幹管路の耐震適合率を2022年度末までに50%以上に引き上げる目標を掲げている。
しかしながら、水道料金収入の悪化で耐震化の財源が不足し、また、人材も不足している。それに加えて新型コロナの影響もある。
また、水道料金を減免する自治体が増えているが、料金の減免の財源は何か。減免を実施する自治体の発表では、水道事業の黒字分を料金の減額に回すケースと、一般会計からの繰り入れを行うケースがある。
水道事業の黒字分とは本来、設備の更新に使う資金だ。使うことで管路の整備はスムーズに進まなくなるだろう。
災害や地震に強いまちをつくる財源と、コロナ禍での生活対策の財源は、分けて考えるべきだ。