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NYの大空に飛行部隊が舞った日 コロナ症例数、米が世界最多の100万件突破

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:ロイター/アフロ)

ニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルべニアでは4月28日、アメリカの空軍と海軍の2つの飛行部隊が大空を舞い、地上から大きな歓声が沸き起こった。

この航空ショーは、新型コロナの医療従事者や救急隊員らフロントラインワーカー(最前線で働く人々)を讃えるために行われた「America Strong」ツアー。市民レベルでは、毎日午後7時の拍手や歓声などさまざまな試みがなされているが、今回は空軍のサンダーバード部隊と海軍のブルーエンジェルス部隊が陣頭指揮を執り、青空を彩った。

これら航空部隊は平時より航空ショーを行ない、全米の人々を楽しませている。ニューヨーク州では郊外ロングアイランドの海岸上空で、メモリアルウィークエンド(戦没将兵追悼記念日)に毎年開催される。超高層ビルが立ち並び、飛行機の往来も普段なら激しいニューヨーク市上空で、このような航空ショーが行われることは滅多にない。

ニューヨーク&ニュージャージーエリアでは正午に2部隊が飛び立ち、約40分の華麗なる航空ショーを披露した。

サンダーバード(空軍)とブルーエンジェルス(海軍)が共同飛行した。ブルックリン上空にて。(c) Kasumi Abe
サンダーバード(空軍)とブルーエンジェルス(海軍)が共同飛行した。ブルックリン上空にて。(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
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ニュージャージーを出発しニューヨーク上空を周った後、ペンシルベニアに向かった。
ニュージャージーを出発しニューヨーク上空を周った後、ペンシルベニアに向かった。

この航空ショーを観るため、医療従事者をはじめ大勢の人々が各所に集まった。

筆者の住むブルックリンでも近隣の人々が携帯電話で写真やビデオを撮っていたが、皆ソーシャルディスタンシング(社会的距離)をきちんと保ちながら鑑賞していた。

しかし地元メディアによると一部のエリアでは社会的距離が保たれなかったケースも見られたという。

(c) Kasumi Abe
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困難期に、このようなポジティブで派手な盛り上げ方はさすがアメリカらしいと思った一方、一部では社会的距離が無視される機会になったのも事実。また「時間の無駄」「別にどうでもいい」「我々は子どもではない」といった冷ややかな意見など賛否両論ある。

筆者は以前取材した寿司職人の齋藤正樹氏の言葉を思い出した。

齋藤氏は鮨銀座おのでらの東京店と香港店で寿司を握った後、異動辞令で2016年ニューヨーク店に赴任。当地でつけ場に立ちながら、客のリアクションで思ったことがあると言う。

「アメリカって心の底からエンタメの国だとつくづく感じます。それは、どんな冗談を言っても素直に笑ってくれ(自分が言ってることが)わからなくてもこちらに合わせてくれることだったり、逆にこちらを(会話や質問で)楽しませてくれることだったり...」

彼の分析は「ブロードウェイやコメディなどの文化もさることながら、ベースにこちら(職人)へのリスペクトがあるから」ということだった。

この困難期において航空ショーを開催と聞き、筆者は齋藤氏のコメントをふと思い出したのだった。

このイベントは、小春日和の天気も手伝い、どんよりとした日々を生きる人々に一瞬でも笑顔や希望をもたらしてくれたのは間違いない。

感染症例数、世界初の100万突破

ただし、明るいニュースだけではない。

この日ニューヨーク州では、前日の死者数が335人、新規入院患者が1000人を下回ったとの発表があった。これらの数字は減少傾向にあるが、依然高い。

また全米では、感染症例数101万717件、死者5万8365人、回復11万5372人という数字も発表された。症例数が100万人超えたのは世界で初めてだ。全世界の症例数は約311万人だから、その3分の1がここアメリカということになる。

ホワイトハウスの新型コロナ専門家チーム、タスクフォースのデボラ・バークス博士は、検査能力の拡大に伴い重症度の低い症例も数字に含まれるようになるため、症例数は今後も増加し続けると語っている。

ジョンズ・ホプキンス大学の最新の研究データ

NY州

感染確認 29万5137件

死者1万7638人

NY市

感染確認 16万2348件

死者1万2067人

(Text and photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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