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ベスト4が出揃った皇后杯準々決勝。”オレンジ対決”を制したのはアルビレックス新潟レディース(1)

松原渓スポーツジャーナリスト
雪が舞う中での試合となった(C)松原渓

皇后杯準々決勝は、12月17日に Pikaraスタジアム(香川県立丸亀競技場)と ユアテックスタジアム仙台で2試合ずつ行われた。

ここではユアテックスタジアム仙台で行われた、アルビレックス新潟レディース(なでしこリーグ1部) vs AC長野パルセイロ・レディース(なでしこリーグ1部)の一戦をお伝えする。

【見どころ】

今シーズン、アルビレックス新潟レディース(以下:新潟L)は辛島啓珠新監督のもとでスタートを切り、成績は9勝3分6敗と勝ち越した。だが、上位の成績が拮抗したため、最終順位は昨年に続く5位と奮わなかった。

しかし、一発勝負の強さは健在だ。

皇后杯(2011年までは「全日本女子サッカー選手権大会」)では2011年からの5大会中、3大会で決勝に進出している。今季はリーグ終盤の3連勝も含め、公式戦は5連勝中と良い流れで来ていることも大きい。2回戦でオルカ鴨川FC(チャレンジリーグ)に4-1で勝利し、3回戦はちふれASエルフェン埼玉(2部)との接戦を、アディショナルタイムのゴールで制し、準々決勝にコマを進めた。堅い守備から、上尾野辺めぐみを中心に連携が成熟した攻撃陣のスムーズな速攻は見応えがある。センターバックの中村楓は今季からキャプテンマークをつけ、なでしこジャパン候補にも選ばれている。

MF山田頌子とGK小金丸幸恵が今大会での引退を発表しており、目の前の一戦に全力を注ぐ。

一方、アウェイのAC長野パルセイロ・レディース(以下:長野L)は、今季は昇格1年目ながら優勝争いに加わり、最後は3位でフィニッシュ。なでしこリーグに「長野旋風」を巻き起こした。皇后杯では2回戦でASハリマアルビオン(2部)に5-1と勝利し、3回戦は日体大FIELDS横浜(2部)に2-1と勝利。日体大戦では延長戦で先制を許すも、その後の3分間で逆転。劇的な勝ち上がり方は、今季の長野Lの戦いを象徴するようだった。

18試合で16ゴールをあげたFWの横山久美や、全試合に出場し、豊富な運動量を誇るFW泊志穂、なでしこリーグ1部のチームの中で唯一のワンボランチを努める國澤志乃らを筆頭に個性豊かなキャラクターが揃い、「3点取られても4点取る」攻撃的なサッカーが魅力だ。

両者は、今季4回対戦しており、長野Lが3勝1敗と勝ち越している。新潟Lが勝った試合は、長野Lの主力の横山と國澤が代表の海外遠征で欠場していた。6月のカップ戦では横山にハットトリックを許しており、最終ラインでの駆け引きは見どころである。

両チームのスタメンは以下のようになった。

【新潟L】

FW  10上尾野辺めぐみ 8大石沙弥香 

MF 28八坂芽依        24佐伯彩          

MF   15阪口萌乃  20山田頌子

DF 4渡辺彩香 3中村楓 6左山桃子 14小原由梨愛

GK       22福村香奈絵

【長野L】

FW   14泊志穂    10横山久美   

MF 13児玉桂子      8大宮玲央奈

MF      11齊藤あかね    

MF      6國澤志乃

DF 3矢島由希 15鈴木里奈 7坂本理保 18五嶋京香

GK   21林崎(※)萌維

※崎の右側は「大」ではなく「立」

【試合レポート】

午後から降った雨の影響でピッチが水を含み、後半は雪が舞う極寒のコンディションとなった。

序盤から長野Lが高い位置からプレッシャーをかけ、コンパクトな陣形を保って主導権を握る。

6分に横山がミドルシュートを放ち、29分には齋藤が抜け出し決定的な形を迎えたが、GK福村の安定したセービングに阻まれ、ゴールネットを揺らすまでには至らない。31分には國澤のパスに抜け出した横山がGKと1対1を迎えるが、オフサイドの判定に。

そんな中、新潟Lが徐々に形成を立て直す。守備では、FW横山に対して最大4人が囲むなど対策を徹底。GK福村がいくつかの決定的なピンチを救い、守備が安定すると、的確なポジショニングと安定したボールキープで長野Lのプレッシャーをはねのけ、ゴールまで持ち込む場面を増やしていった。

雨の影響で滑りやすくなったピッチで、細かいパスミスが重なった長野Lに対し、新潟Lは上尾野辺が攻守のつなぎ目となって流れをたぐり寄せた。昨年の皇后杯準々決勝(ジェフ千葉レディース戦)では、ヒールキックで相手の頭上を越すスーパープレーで味方のゴールを演出するなど、上尾野辺の技術の高さは折り紙付きで、見るものを楽しませるアイデアに満ちていた。

新潟Lの先制点は前半35分。渡辺のミドルシュートがバーに弾かれた跳ね返りを大石がヘディングで競り勝って押し込み先制すると、その4分後には、CKを左山がヘディングで完璧に合わせて2点目。

後半、長野Lは中盤に内山智代と木下栞を投入し、反撃に出るが、最後までラストパスが定まらず。

徹底したリスクマネジメントと連携を生かし、「一発勝負の理想的な戦い方」を示した新潟Lが、2−0で勝利。昨年に続くベスト4に進出した。

急成長中の八坂や福村ら、若い力も躍動し、チーム力を上げている新潟Lの勢いは本物だ。 

試合の詳細はこちら

日テレ・ベレーザ、INAC神戸レオネッサ、アルビレックス新潟レディース、ベガルタ仙台レディースの4チームが準決勝に進出。

ベスト4は昨年と同じ顔ぶれとなり、23日に味の素フィールド西が丘で準決勝が行われ、25日にフクダ電子アリーナで決勝戦が行われる。

(2)【監督・選手コメント(アルビレックス新潟レディース)】

(3)【選手コメント(アルビレックス新潟レディース)】

(4)【監督・選手コメント(AC長野パルセイロ・レディース)】

に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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