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感染者数も死者数も少なかった日本で、過去最大の「第7波」に今直面して、今後世界経済で取り残される危険

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
新型コロナの新規陽性者数(資料:厚生労働省オープンデータ)

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の新規陽性者数が、過去最多を記録して、感染拡大「第7波」に直面しているとされる。

ただ、重症者数も死者数も過去の感染拡大期と比べて少ないため、今のところ、行動制限は極めて限定的である。

確かに、重症者数も死者数も少ないことから、新規感染者数が多少増えても深刻にはならないとの見方が支配的である。

しかし、7月18~24日の1週間の新規感染者数は、日本が約96万9000人で世界最多だったという。

先週の新規感染、日本が世界最多 新型コロナ、アジアで深刻化―WHO報告(時事通信)

世界中で感染がますます拡大していく最中に、一時的とはいえ日本で世界最多の新規感染者数となるなら、世界でも感染防止策を講じようとする方向で、軌を一にして動いていくことになろう。

そうなった場合、日本だけが不利益を被るということは考えにくく、世界とともに、感染防止策を講じてゆけばよい。

ところが、日本が「第7波」に直面している今日、実はそうした状況ではない。世界では、むしろ行動規制を概ね緩和する方向に動いている。

しかも、今後世界は、予想外に抑制できない変異株の発生さえなければ、新型コロナは収束の方向に向かって、行動規制は撤廃されて経済活動を活発化させてゆく局面に入ってゆくと考えられる。

感染拡大初期に、感染拡大をうまく抑えられていたとしても、諸外国では深刻な感染拡大に直面していれば、世界経済では規制を緩和して活発な経済活動を営もうとすることはできない。そんな日本は、感染拡大初期に感染拡大をうまく抑えられた恩恵はあっても、世界経済での活発な経済活動から恩恵を受けることは少なかった。

その逆を考えてみたらどうなるか。

感染拡大が全体として収束局面に向かいつつある中で、諸外国では感染拡大があっても行動規制は行わず、経済活動を活発化させていく一方で、重症者数や死者数は少ないものの、新規感染者が記録的に多いために、政府による強い規制はないものの自主規制をせざるを得ない状況に追い込まれてしまっては、どういうことになるか。

その兆候は既に見出せる。それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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