ロシアがウクライナ戦で使用した北朝鮮のミサイルの部品の多くは米国製だった! ゴールドに続き部品まで
北朝鮮のロシアへの武器供与を当事者の露朝両国とも否定しているが、ウクライナの戦場でロシア軍が発射したミサイルの残骸から北朝鮮製の動かぬ証拠が次々と見つかっている。
ウクライナ検察当局の発表により露朝の武器取引が明白になったことで米国は北朝鮮のミサイルの調達に関わったロシアの国営企業など3つの団体と幹部1人に制裁を科し、欧州連合(EU)27カ国もまた、北朝鮮に新たな制裁を科すことにしている。
当然の措置だ。北朝鮮の外国への武器輸出も外国の北朝鮮からの武器購入もすべて国連安保理の決議違反に該当するからだ。
北朝鮮の対露武器輸出は昨年10月頃から取り沙汰され、これまでに152mm砲弾と122mm砲弾数百万発とロシア製「イスカンデル」や米国製「ATACMS」に酷似した戦術誘導ミサイルがロシアに引き渡され、ロシア軍のウクライナ攻撃に使用されていると伝えられている。
欧米に限らず、国際社会は北朝鮮の大量破壊兵器の開発、拡散を防ぐため国連安保理で延べ10回も北朝鮮に経済制裁を掛けてきたわけだが、驚いたことに、英国の調査組織「紛争兵器研究所」が20日に公表した「最新の電子部品に依存する北朝鮮ミサイル」と題する報告書によると、先月ウクライナの戦場でロシア軍が使用した北朝鮮製ミサイルの残骸から回収した290品目の部品の多くは欧米製で、そのうち75%が米国の企業が設計し、販売していたことが明らかとなった。
北朝鮮制裁を主導し、国連加盟国に対して、特に中露に対して制裁を徹底するよう呼び掛けている肝心の米国が国内の監視、統制が甘く、ルーズであったことをさらけ出してしまった。
この件について米国務省は昨日、米企業の最新部品が数百個も含まれていたことについては直接言及せず、「米国は北朝鮮の不法な大量殺傷兵器と弾道ミサイル開発に使用される敏感な品目及び技術取得を防ぐため輸出統制、制裁、遮断及び法的措置を履行している」とコメントしていた。
米国の落ち度はこれが初めてではない。
国連安保理は北朝鮮への制裁の一環として北朝鮮に金(ゴールド)の輸出を禁じているが、2016年にロイターが規制当局への開示書類を分析したところ、米上場企業の25社が北朝鮮から金を調達していたことがわかった。
このためこの年の3月、米商務省は北朝鮮と金の取引をしていた25社に100万ドル単位の罰金など制裁を科したが、北朝鮮の金がアンダーグランドで取引されている実態がはからずも浮かび上がる格好となった。
サイバーによるビットコイン強奪が北朝鮮の核・ミサイル開発の主な資金源と言われているが、北朝鮮には金が埋蔵されている。「ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)」が2012年3月に発表した各国の金の埋蔵量によると、北朝鮮の埋蔵量は2千トンで、世界10位にランクされていた。
一般的にはあまり知られていないが、米国の金融制裁措置によりマカオの銀行にある北朝鮮の口座(総額で2千5百万ドル=当時のレートで30億円相当)が凍結され、「北朝鮮の外貨事情は逼迫した」と報じられていた2006年、北朝鮮は判明しただけでも1300kgの金塊を密かにタイへ輸出し、凍結された額よりも3億円多い約33億円(当時の相場)の外貨を手にしていた。2006年と言えば、7月に「人工衛星」の発射が、10月に初の核実験が行われた年でもあった。
現在、金の1グラムの価格は1万円前後で推移している。埋蔵量が2千トンもあれば、金だけで北朝鮮は莫大な資金を確保できる。
北朝鮮の最大の貿易パートナーである中国は昨今、金を買い集めていると伝えられているだけに北朝鮮の金の密輸は後を絶たないだろう。