阪神・原口文仁選手「またゼロからのスタート」 地元後援会イベントにて―前編―
昨年に続き、ことしも原口文仁選手の地元・埼玉県大里郡寄居町でイベントが行われました。原口選手にとって初の地元開催だった昨年は寄居町商工会青年部50周年記念事業としての野球教室で、ことしは昨秋に誕生した『原口文仁後援会』の主催行事です。後援会発足1年を迎え、今回のイベントは午前が「ふれあう会」と題した野球教室、午後は「励ます会」で会員限定の懇親会、この2部構成でした。
※昨年の野球教室はこちらの記事でご覧ください。→<根っこにある“オンリーワン”の想い… 阪神・原口文仁選手の故郷を訪ねて>
24日の朝10時から始まった野球教室・ふれあう会は、寄居町を中心に大里郡の野球チームから小学生(一般参加も含む)約100人が、寄居町運動公園野球場に集合!後援会の田中静雄会長の開会宣言に続いて、子どもたちの呼びかけで三塁側入り口に原口選手が現れました。昨年の記事でもご紹介した正木裕人(まさきひろと)さんと、ことしは参加できた戸澤秀志(とざわひでゆき)さんの親友2人、それと後輩たちに付き添われての登場です。
そこからキャッチボール、ティーバッティング、投球練習。投球練習で原口選手は各チーム1人ずつ、ピッチャーの球を受けています。ピッチャーへの声掛けはもちろん、ボール球もしっかり捕るキャッチャーにも「ナイスキャッチ!」という言葉。その次は“原口選手に挑戦!”というコーナーで、それぞれのチームのエースが投げ、原口選手が打つ対決形式です。かっこいい女子エースもいましたよ。
ついで参加者には内緒だったサプライズ企画。タイトルは“原口選手、驚異のロングティー披露”です。子どもたちはバックネット側に移動。ここは硬球を使用し、正木さんのトスで打ったんですけど、さすがにそれまでとはスイングスピードも違いましたね。何本か柵越えを披露して、ラストは納得できずにおかわりするなど会場を沸かせた原口選手。大きく飛ぶ打球を見送る、子どもたちの表情が印象に残っています。
予定時刻を40分以上過ぎての終了でしたが、あっという間だったような感覚です。最後は参加した少年少女たちと手を合わせ、彼らが作った花道を通りながら退場していった原口選手。来年はまた活躍して、みんなに再会することを誓ったでしょう。
「来年はいいところをたくさん見せたい」
場所を移しての「励ます会」が14時に始まるため、その前に控室で囲み取材をさせていただきました。それほどのんびりできる時間がなかったことに加え、締めの質問だった「ことしを漢字で表すと?」に思いのほか時間を要してしまい…実は主役の原口選手が14時の開宴に遅れる事態となったのです。しかも私たちはちゃっかり間に合うという申し訳なさ。お待たせした会員の皆様、本当にすみません!
盛り上がった「励ます会」については、後編で書かせていただきますので少しおまちください。では野球教室終了後の原口選手のコメントです。まず、昨年に続いて開催された地元での野球教室に「地元でこうやってさせてもらえるというか、後援会が発足して約1年、こういう行事をしてくれる感謝もありますし。少しでも野球をやる子が増えてくれたらという思いもあります」と話しました。
行事といえば、ことし8月27日の巨人戦(東京ドーム)が後援会企画の観戦ツアーだったのに、なんとその前日に登録を抹消されてしまって…。活躍を見てもらえなかったのが残念。「そうですね。そりゃ悔しいですよ。そういうツアーとか計画してくれたところで、自分の成績が悪かったせいで迷惑をかけたので。来年は何とかたくさん、いいところを見せられるように頑張りたいと思います」
毎年オフにこうやって帰省している原口選手ですが、地元で思い出すことは?「いやもう、ずっと小さい頃から野球をやって、すごく楽しかったっていうのが一番ですね。あとは怒られて。怖い人に(笑)」。これ、後援会の会長でもある少年野球チームの田中代表のことかな。楽しかった思い出が一番ですか?「やっぱり小さい時に楽しかったおかげで、野球を続けられている子も多いと思うので。ほんと小さい子には、技術とかいう前に楽しんでもらいたいなと思います」
原口選手自身、野球教室に参加した経験は?「なかったですね。小さい頃はまったく触れる機会がなかったです、プロ野球選手と」。あら、触れる機会はありましたよね?「ないですよ」。小学5年の時、熊谷市のデパートで行われた巨人・阿部慎之助選手のサイン会へ行ったと。「あ、あったわ!野球教室はなかったですね」
ゼロからのスタート。もう一回!
さて、秋季キャンプから戻ってからのトレーニングはどのように?「まあ継続ですね、ずっとしっかり動けていたので。(球団の)外で、ですけど。今は帰ってくる時間とかだったので、少し体をリセットしています」。去年もそうだったと思いますが、このオフはより危機感があるのでは?と聞かれ「危機感というか、またゼロからの立場になったので、もう一回ですね。何とかアピールしかないので。結果だと思います」と原口選手。
結果という意味でも、2月のキャンプからが大事になりますね。「一番はそこですよねえ。打つ方も、守備も」。実戦でとにかく結果を出すと?「何とかね、少ないチャンスだと思うので、アピールして。キャッチャーでアピールって、なかなか難しいですけど」。外国人選手やベテランは後半に出て来ます。早い段階でアピールが必要でしょう。「まあそこまでは。毎年いつも2月1日に全力でできるように、そういう思いで作っているので。そこまで変に意識することなく普通に。初日からアピールできるように」
そういえば、ロサリオ選手がキャッチャーもできると聞いてどう思ったかという質問に「いやもう、関係ないですよ。自分がやると決めたので。もう後戻りはできないから、やるだけです」とキッパリ言い切りました。なので、周りは関係ないと?と尋ねたら「いや、違います」という答え。違うの?「違います」。どう違う?「やらなくちゃいけないので周りは気にしない。気にしないといけないけど」
ああいう選手が一塁やDHで実戦に出ると、チャンスも減ってくると思われます。そこまでに結果がほしいところ?「うーん、まあなかなか難しいですけど。まずキャッチャーで試合に出ていかないとね。DHでも打たないといけないですけど、まずキャッチャーで出ていって、ですね。打つ方のアレとかじゃなしに、守備はやらないと」
練習試合やオープン戦では相手もどんどん走ってくるかと。「もちろん、そのために今準備しているので。いい形でキャンプに入っていけるようにします」。梅野選手や坂本選手ら、他の誰よりも刺す!くらいの気持ちで?「もちろん。でも別にプラスアルファはね。そんな10個も20個も走られたら、そりゃヤバイですけど。ある程度、勝負できるくらいに持っていければ」
結果を出すことしかアピールの方法はない
ところで、きょうのロングティーがどうだったかと聞いてみたら、原口選手は「よかったんじゃないですか、まあまあ。去年よりはるかに飛んでる。感覚が違いましたね」と言います。その打力でもアピールできるのが持ち味だと思いますが、秋季キャンプからバッティングもしっくり来ている?「いい部分もありながら、今また少し変えたりしているところなので。またバッティング練習をしてみて、よければ」
中谷選手が少ないチャンスでオープン戦3割&打点王と気を吐いた今春。それこそポジションがなかったところからのアピールでした。「そうですね。結果を出せば誰でもチャンスがあるということなので、そりゃもちろん。プラス、キャッチャーをやっていて打っていればチャンスがあるのか?っていうのは、ちょっと分からないですけど」
金本監督は原口選手を使いたいはず。有無を言わせない活躍をすればいいわけですよ。「結果を出せばね。それしかないですね。アピールといっても、結果を出すしかアピールはないので」
1月はどれくらいキャッチャーの練習ができますか?「やろうと思えばいくらでもできると思う。ピッチャーの球を捕るのは、鳴尾浜へ行ったり、向こうへ帰ってからじゃないとできないですけど。やれることはたくさんあるので」。年明けは俊介選手との自主トレ予定で「とりあえず午前中はバッティング、ノック、ランニング。そこで今までだったら一緒にトレーニングできたんですけど、そこはちょっといろいろ個別練習をしてという感じ」だそうです。
『辛』から『耐』へ、そして輝く
ここからです。ある記者さんが「ことしを漢字一文字で表すと」と質問をして、原口選手からは「肩」とか、巻き返すの「巻」、つかむの「掴」などいくつか挙がったものの、今ひとつピンと来なかったみたいです。こちらから悔しいの「悔」は?と提案してみると「それはベタなんですよ~イヤなんですよ~」と却下されました。
とにかく表したい気持ちは何?というところから、やり直し。「ことしは自分の中でも、ちょっと寂しかったですね。成績もそうだし、試合に出られなかったし」と言うので、ここはやはり試合に出られなかったことだとしましょう。では、その気持ちは寂しかったのか、悔しかったのか、つらかったのか。
すると「つらかった。つらい。『辛』にしよう。辛抱の辛も含めて、辛抱しなくちゃいけない1年。これ、いいじゃないですか!ことしは辛抱の年だったので」と一気に事が運びました。なるほどね。辛の字はベタじゃないんですね。
じゃあ来年は?「輝く」。え、また新たなものが唐突に出てきましたよ。「掴む」はやめたの?「あー時間がない」と焦りながら考える原口選手。やがて…
「わかった!我慢だ。我慢はどういう字?」。我という字に、と説明しかけると「それはわかってますよ。一文字だったら?耐える?おっ、それでいきましょう!」。忍耐の忍ではなく耐の方ですね。「チャンスが少ないし、その中でいかにメンタルな部分で耐えて、しっかり準備して結果を出すか。いいじゃないですか~」と、まさに自画自賛だったので笑っちゃいました。
そして大急ぎで帰り支度をしながら、ひとこと。「あ~やっと決まった!もお~ほんとに」。いやいや、原口くん。それはこっちのセリフです。 ※後編へ続く。
<掲載写真はすべて筆者撮影>