Yahoo!ニュース

劇的! 彦根東 甲子園初勝利  夏の甲子園開幕

森本栄浩毎日放送アナウンサー
夏の甲子園が開幕。彦根東が9回、波佐見を逆転サヨナラで破って甲子園初勝利を挙げた

 台風の来襲で一日遅れとなった夏の甲子園開幕。今大会は公立がわずか8校と戦後最少となったが、開幕試合はその公立同士。両校力を出し切っての熱戦は、1点を追う彦根東(滋賀)が、波佐見(長崎)に逆転サヨナラで6-5と劇的な勝利。創部124年、甲子園初出場から67年で掴んだ念願の1勝だった。

中盤以降、彦根東が逆転許す

 試合はシーソーゲームとなった。

先手を取られた彦根東は、3回、吉本の逆転3ランが飛び出し、序盤で優位に立った
先手を取られた彦根東は、3回、吉本の逆転3ランが飛び出し、序盤で優位に立った

1点を追う彦根東は3回裏、2死から相手失策と安打で2者を置いて、6番吉本孝祐(3年)が逆転の3ランを放つ。4-2と序盤で優位に立った彦根東だったが、頼みのエース増居翔太(2年)が制球に苦しみ、波佐見に反撃を許す。6回に濱田倫(3年=主将)の安打で1点差に詰め寄られると、7回には満塁から4番内野裕太(2年)に逆転の2点適時打。5回以降は波佐見の左腕隅田知一郎(3年)に要所を締められ、9回裏を迎えた。

彦根東 主将が代打で口火切る

 9回の先頭は8番増居だったが、村中隆之監督(49)は迷わず、「チームのために一番やれる選手」と背番号1の松井拓真(3年=主将)を代打に送る。ブルペン待機で登板の可能性もあったが、指揮官はこの窮地での起用を考えていた。期待に応え、松井は詰まりながらも中前に運んだ。犠打で好機を広げ、1番原晟也(3年)が続く。1死1、3塁となって、2番朝日晴人(2年)の3球目に原がスタート。二塁併殺の守備隊形だった波佐見は、大きく弾んだ朝日の三ゴロで併殺を取れず、松井が生還。5-5の同点となった。「ランエンドヒット。9回は『自分たちのやれることをやろう』と選手に声を掛けた。松井は魂のヒットだった」と口火を切った主将を褒めた。

4番が冷静に初球を快打

 追いつかれた波佐見は、ここで右腕の村川竜也(3年)に投手交代。次打者がストレートの四球で歩くと、打席にはここまで4打席無安打の4番岩本道徳(3年)が入る。

9回2死、4番岩本の右前打で2塁走者の原が間一髪で生還。彦根東が逆転サヨナラ勝ち
9回2死、4番岩本の右前打で2塁走者の原が間一髪で生還。彦根東が逆転サヨナラ勝ち

「それまで中途半端でチームに迷惑をかけていた」と4番としての責任を感じていたが、冷静さも失っていなかった。「フォアボールのあとだったので、初球に甘くくると思っていた」と高めの直球に迷わずバットを出すと、打球は右前に抜けた。原が懸命に本塁へ殺到。返球もよく、際どいタイミングだったが、わずかに俊足の原が勝り、劇的な逆転サヨナラとなった。

甲子園でも「ブレイクスルー」

 村中監督は滋賀大会でも、増居を軸に、右腕本格派の松井、変則左腕の原功征(2年)らをうまく使い回して、近江、八幡商、滋賀学園などの強豪を「ブレイクスルー」(それまで突破できなかった壁を破るの意)してきた。「甲子園でもブレイクスルーできた。価値ある1勝」とインタビュー台で感激の表情を浮かべた。同校最大の目標だった甲子園1勝を果たし、次戦以降に期待は膨らむばかりだ。

公立同士 これぞ甲子園

 波佐見もよく戦った。予選では経験しなかった追いかける展開も、一時は逆転につなげ、力は発揮できたはずだ。1番村川大介(3年)は、3安打を放って、予選.583(14安打)の本領を発揮した。4番内野は弾丸ライナーで右中間に突き刺さる大会1号で甲子園のファンの度肝を抜いた。内野と3番の早熊拳太は2年生で、次チームでも中心になるだろう。「後輩たちにはこの悔しさを忘れず、最後まで諦めない試合をして欲しい」と主将の濱田は声を絞り出した。強豪私学全盛の甲子園にさわやかな風を運んだ公立同士の熱戦は、「これぞ甲子園、これぞ高校野球」という開幕にふさわしいナイスゲームだった。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

森本栄浩の最近の記事