企業よりも古い? 大学生たちの「就職意識」
■ 大学生の「安定志向」さらに強まる
大学生と企業とを比べると、大学生の意識のほうが古いと言える。そう疑いたくなるような、調査結果が出ています。
「2019年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、「あなたが企業選択をする場合、どのような企業がよいと思いますか」という質問に対して「自分のやりたい仕事ができる会社」が1位。「安定している会社」が2位。「給料の良い会社」が3位。「社風が良い会社」が4位。「働きがいのある会社」が5位……となっています。
注目すべきは、2位「安定している会社」のポイント。17年卒が対象のときは「28.7%」。18年卒は「30.7%」。そして19年卒は「33.0%」と、急増しています。
反対にダウンしているのが5位「働きがいのある会社」。「16.0%」「15.1%」「13.7%」と、13年卒のとき「23%」ほどあったポイントが下降しつづけています。
企業の規模を問う質問では、大手企業を志望する学生は全体の約5割に達するなど、この割合は過去と比べ増え続けています。ますます就活生の「安定志向」は強まっていると言えるでしょう。
■ 企業が求める人物像は「真逆」
企業が求める人物像を見ていきましょう。
日立製作所は「困難に立ち向かい、最後までやりとげられる人財」。任天堂は「覚悟をもって困難に向き合い、お客様の笑顔のために前向きに挑戦を続けていける人」を、JALは「失敗を恐れず常に新しい事に挑戦し、人任せにすることなく最後までやり遂げる人財」を求める、と発信しています。
このような、日本を代表する企業のみならず、大企業も中小企業も、総じて「困難に向かって積極的にチャレンジできる人」を必要としています。「安定」を求める大学生の意識とは、ドンドンかけ離れているようです。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。「絶対達成」というコンセプトを持っているせいか、私どもが関わる企業の経営者、人事担当者も当然「安定」を求める学生を敬遠します。
大企業も、順風満帆の企業でさえ、そうです。
今後、人口縮小社会に突入し、これまでの常識がまったく通用しない時代が到来すると、わかっているからです。ベテラン社員ではできないチャレンジャブルな精神と、革新的なアイデアを、企業は若者たちに期待しています。
■「困難に立ち向かうことができる人」とは?
企業が発信する情報を解析すると、「困難に立ち向かい、チャレンジし続ける人」が求められていることがわかっています。
技能もスキル(コミュニケーション能力含む)も、企業へ入ってから学びぶことができます。社会人になってから、トレーニングで身につけることが可能なのです。ですから企業側は、その「スペック」にそれほど期待しません。
期待するのは、常識レベルの「忍耐力」「ストレス耐性」です。企業へ入ってからではなく、その前に「困難に立ち向かえるぐらいのストレス耐性」ぐらいは身につけておいてほしいと願っています。
それではストレス耐性を鍛えるには、どうすればいいのか。簡単に解説していきます。
人間が何らかの活動を起こすには、脳の神経細胞・ニューロンの発火が必要です。朝、布団から起き上がるときも、茶碗にご飯をつけるときも、大なり小なりニューロンが発火しているのです。
しかし発火するたびにニューロンは傷つき、消耗していきます。この修復作業が繰り返されることにより、ストレス耐性がアップします。感染症を予防するためには弱めた病原体でワクチンを打ち、体内に抗体を作ります。それと同じこと。ストレスを受けることによって、ストレスに強くなるということです。
したがって、ストレスに対する耐性を向上させるには、適度なストレスを継続的に受ける必要があるのです。
やりたくないこと、できれば後回しにしたいことを早め早めにやる。少し苦手なことでも頑張ってやってみようと行動を起こす。この繰り返しで、ストレスに打ち勝つハートができあがっていきます。
社会人になる前に、どれぐらい「やりたいこと」だけでなく「やるべきこと」を繰り返しやってきたか、が問われます。どんな知識、どんなスキルを持っているかよりも大切な「性格スキル」と呼ばれるものです。
超人手不足だからといって、努力しない学生は必ず見抜かれます。一般的な企業がどのような人財を欲しているか、必ず情報収集しましょう。インターネットで調べれば、多くの調査データが手に入ります。志望動機を聞かれたら、
「御社を志望した理由は、安定していると思ったからです」
と言ないこと。「考えが古い」「情報収集能力が足りない」と、採用担当者に受け止められるだけだからです。