ノート(142) 検察側による被告人質問の内容とその分析(上)
~裁判編(16)
勾留177日目(続)
いったん休廷
「終わります」
弁護人がそう言い、静かに腰掛けた。これで弁護側の被告人質問はすべて終わったが、ちょうど昼時となったため、裁判長が休廷を宣言した。
裁判所地下の仮監に戻ると、すでに独房の床に昼食が置かれていた。刑務官らが拘置所から運んできたもので、ドカベンサイズの赤い弁当箱に入れられた米麦飯のほか、プレートに乗せられたサバの塩焼き、春雨炒め、白菜漬け、大根の桜漬けだった。
昼食時にはフルーツや紙パックのジュース、コーヒーなどが添えられることが多かったが、この日は200mlのパック牛乳だった。
ただ、午後に検察側による被告人質問が予定されていたことから、これに備え、昼食の前に仮監の接見室で弁護人と接見し、最後の打ち合わせを行った。
検察側の反対質問は、弁護人による被告人質問で出てきた供述の弾劾や確認などが中心となるが、それ以外の話題に発展することもある。これに備え、すでにこの公判までの間に弁護人と想定問答を練っていたことから、接見ではその最終確認が中心となった。
接見を終え、冷たくなった昼食をとり、独房で少し待っていると、午後の裁判が始まる時間となった。
検察側の反対質問が始まる
「検察官、どうぞ」
刑務官に連れられて再び大法廷に入り、両手錠と腰縄を外され、証言台の椅子に座ると、裁判長が法廷内左側の検察官席を見ながらそう言い、被告人質問を促した。速記官は、午前の法廷で最初に担当していた女性に替わっていた。
「私からお尋ねします」
被告人質問は、捜査段階で塚部貴子検事を取り調べた熊田彰英検事が担当した。僕の弁護団は熊田検事が作成した塚部さんの供述調書をすべて「不同意」にしていた。そのため、熊田検事の仕事ぶりが日の目を見ることはなかったが、公判で晴れ舞台が回ってきたというわけだ。
なお、彼は僕の2期後輩だが、この3年後に検事を辞め、弁護士に転身している。今では「ヤメ検」として、小渕優子元経産相、甘利明元経済再生相、佐川宣寿元理財局長らに対する疑惑の火消しに奔走したことで有名だ。
「2号書面請求」を見据えて
まず、冒頭の具体的なやり取りは、次のようなものだった。
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