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防衛まであと1勝の藤井聡太王位(19)一気に優位に立ったか? 王位戦七番勝負第5局2日目開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月25日9時。徳島県徳島市・渭水苑においてお~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第5局▲藤井聡太王位(19歳)-△豊島将之竜王(31歳)戦2日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

「渭水」とは水の集まる都のこと、水が集まるように人が集い、憩い、栄えることを願い名付けられました。

渭水苑ウェブページ

 対局に先立つインタビューで、両対局者は徳島の印象について、次のように語っています。

藤井「以前の家族旅行のときは祖谷(いや)温泉だったので、徳島市は初めてかなあ、と思うんですけど。市内、ここまで来る時、川が吉野川はじめ、たくさんあって、水の豊かな町なのかな、という印象を受けました」

徳島新町川と眉山
徳島新町川と眉山写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

豊島「徳島の印象は、やっぱり20歳のときに大塚国際美術館の方で、自分にとって初めてのタイトル戦(王将戦七番勝負第1局)を指したので、それがすごく思い出に残っています」

 王位戦第5局2日目朝。豊島挑戦者は青い座布団の下座、藤井王位は赤い座布団の上座に着きました。藤井王位は除菌シートで念入りに両手を拭いたあと、駒箱に手を伸ばします。盤の上には朝の光が差していました。

 両対局者が改めて駒を並べ終えたあと、1日目の指し手が再現されます。

 本局の立会人は深浦康市九段。記録係は生垣寛人三段(井上慶太九段門下、17歳)です。

深浦「では1日目の指し手を読み上げます」

生垣「先手藤井王位▲2六歩。後手豊島竜王△8四歩。・・・」

 戦型は相掛かりに進みました。

 1日目は、午前は早い段階で緊迫感のある局面まで進行。午後はスローペースでした。

生垣「▲7七銀」

 45手目、藤井王位が銀を三段目に上がった局面で、豊島挑戦者が46手目を封じました。

深浦「では封じ手を開封します」

 深浦九段が封筒にはさみを入れ、封じ手用紙を取り出します。豊島挑戦者は赤いペンで2一の桂に丸をつけ、3三に矢印を引いていました。

深浦「封じ手は△3三桂です」

 深浦九段の声を聞いてから、豊島挑戦者は自陣の桂を跳ねました。飛車取りです。いくつかある予想候補手のうちの一つでした。

深浦「では2日目、よろしくお願いします」

 両対局者は一礼して、2日目の対局が始まりました。

 豊島挑戦者は右手を頭に当て、早くも悩ましげなしぐさを見せます。

 藤井王位はペットボトルの「お~いお茶」をグラスに注いで、お茶を飲みます。藤井王位も当然、豊島挑戦者の桂跳ねは予想の一つだったことでしょう。2分ほどの消費時間で、当たりになっている飛車を最下段にまで引きました。

 王位戦七番勝負の持ち時間は各8時間の2日制。昼食休憩をはさんで、通例では夕方から夜にかけての終局となります。

「形勢も、消費時間もほぼ互角。この先も難しい中盤戦が続きそうです」

 そうまとめて、本記事をアップしようとしたところで状況は一変しました。

 50手目。豊島挑戦者は41分の考慮で銀を五段目に出ます。こちらは角取りです。

 ここでABEMAの「SHOGI AI」で示されている「勝率」の表示が急変。藤井54%から79%となりました。筆者手元のコンピュータ将棋ソフト「水匠4」でも評価値にして1300点ほど藤井王位よしとなりました。

 形勢の針は一気に、藤井優勢に傾いたことになります。時刻は10時を過ぎました。藤井王位は熟慮に入ったようです。もしここから藤井王位が端9筋に桂を跳ねると、藤井よしに進むようです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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