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森保五輪ジャパン敗退の危機……準々決勝のポイントは『最強の盾』をいかに破るか

清水英斗サッカーライター
(写真:ロイター/アフロ)

東京五輪・男子サッカーは決勝トーナメントに突入。日本五輪代表は31日、準々決勝でニュージーランドと対戦する。

日本はグループステージでメキシコやフランスに2連勝を果たし、今後、準決勝以降に勝ち残れば、スペインやブラジルとの対戦が予想される。準々決勝で対戦するニュージーランドは一段落ちるイメージがあり、侮られがちだが、トーナメント戦で当たればこれほど嫌なチームはない。

とにかく、守備が堅いのだ。

[5-4-1]で自陣に引いてガチガチに守り、徹底してゴール前を固めてくる。グループステージのホンジュラス戦こそ、前半早々にオーバーエイジのキャプテン、DFウィンストン・リードが膝の負傷で交代し、大混乱に陥って3失点を喫したが、韓国戦とルーマニア戦は、共に無失点で切り抜けた。守備が非常に堅く、ゴール前のシュートブロックはなりふり構わず身体を投げ出す厄介な相手だ。

攻撃はプレミアリーグのバーンリー所属、191センチ91キロの長身FW、クリス・ウッドへ向けてロングボールを蹴り、こぼれ球を拾う。プレスをかけられたら、前線に大きく蹴ってしまうので、メキシコ戦のようなハイプレスもはまりづらい。ニュージーランドはシンプルな攻め方が徹底されており、精度も高い。吉田麻也、冨安健洋、板倉滉を中心とした空中戦と、遠藤航や田中碧らを中心としたセカンドボールへの対応が鍵を握る。

ニュージーランドはセットプレーも厄介だ。コーナーキックはGK前に人数を寄せて、密集を作り、そこへボールを蹴って混乱を引き起こす。頭で触っても、触らなくても、あるいは競り合いながらオウンゴールの可能性もあるようなボールを蹴り、クリアし切れなかったセカンドボールに詰めてくる。インプレーでも、セットプレーでも、セカンドボールの対処は要注意だ。

ここからはトーナメント戦に入るので、90分で決着がつかなければ、延長戦、さらにPK戦も行われる。守備の堅いニュージーランドには、そこまで持ち込まれる可能性もあり、実に厄介な相手だ。

4-0で大勝したグループステージのフランス戦は、ほとんど参考にならない。あの試合は前掛かりにならざるを得ない相手の立場を利用し、巧みな試合運びを見せた。しかし、準々決勝ニュージーランド戦は全く前提が違う。引き分けでもPK戦に持ち込める試合で、前掛かりになって隙を与えてはくれない。ガチガチに守る相手をどう崩すか、ロングボールにどう対応するか。

参考になるとすれば、グループステージの初戦、南アフリカ戦だ。あの試合は5バックで守る相手をなかなか崩せず、後半26分の久保建英のゴールで辛うじて1-0で勝ったが、ニュージーランド戦も似た展開が予想される。

久保のスーパーゴール、あるいは堂安律や田中碧らのミドルシュートにも期待したいが、もう1人期待したいのは、FW上田綺世だ。フランス戦の前半27分、34分の連続ゴールは、どちらも上田のシュートが起点となり、そのこぼれ球を詰める形だった。

ポイントは、上田のシュートがどちらもファーサイドをねらったことだ。シュートをファーサイドに打つ利点はいくつかあるが、その一つはGKがセーブしたボールが、ゴール正面にこぼれやすいことだ。ニアサイドへのシュートは、セービングで強く弾けばサイドやCKに逃げられるが、ファーサイドへのシュートは、フリック気味に流さなければ逆サイドやCKに逃げられない。しかし、それはオウンゴールの危険が大きいので、どうしてもファーへのシュートは、ゴール正面の詰めやすい場所にこぼれがち。そこへ久保や、酒井宏樹が逃さず詰めた。

林大地と上田のどちらが1トップに起用されるのかはわからないが、ニュージーランド戦でより適任はどちらか。楽しみなポイントだ。また、後半半ばまで0-0、あるいは追う展開になれば、三笘薫も相手の膠着をぶち破る重要な選手になるが、できれば早めに点を取り、楽に進めたいところだ。

また、もう1人のキープレーヤーは、イエローカードの累積で出場停止となる酒井宏樹に代わり、出場が予想される橋岡大樹だ。酒井の欠場は痛いが、いないものは仕方がない。代わりに出る選手に期待するしかない。

橋岡は慣らし運転となったフランス戦で、後半の投入直後、右サイドの1対1で縦に仕掛け、絶妙なクロスを供給した。フリーの旗手怜央がヘディングを外してしまったが、1点モノのチャンスメークであり、惜しかった。

ともすれば、このクロスの精度は酒井以上かもしれない。浦和時代に攻撃力が課題に挙がった橋岡は、一途にクロスの練習に打ち込み、それを武器として仕上げた。今は機械のように正確に、ゴール正面のスイートスポットへクロスを届けられる。あのクロスが、ニュージーランドを破る秘密兵器になるだろうか。

もっとも、クロスに至るボールの持ち出し方は、割とワンパターンなので、クロス耐性のあるニュージーランドに通じなければ、あまり縦に深く行かず、裏抜けの得意な上田へのアーリークロスなど、様々な攻め手を講じる必要はある。

困難な試合は必至だが、この『最強の盾』をぶち破らなければ、メダルはない。

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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