マナーよく穏やかにラストランが終了「留萌本線」深川―留萌間最終列車乗車記
2023年3月31日をもってJR北海道の留萌本線、石狩沼田―留萌間35.7kmが廃止された。留萌本線の最終列車は、深川駅を20時13分に発車する留萌行と、留萌駅を20時20分に発車する深川行の2本だった。途中の峠下駅で最終列車同士の列車交換が行われ、留萌行の最終列車は留萌駅に到着後、乗客を降ろした後、回送列車となり深川駅へと回送され石狩沼田―留萌間は鉄道としての歴史の幕を閉じた。
筆者は、運行最終日、深川駅を20時13分に発車する留萌行の最終列車に乗車した。
深川発留萌行の最終列車に乗車
筆者が、留萌本線の起点となる深川駅へと到着したのは日が西に沈みかけていた18時00分頃のこと。深川駅から留萌駅に向かう列車は、18時9分発と20時13分発の2本をもって廃止となり、翌日からは石狩沼田駅が留萌本線の終着駅となる。
深川駅では、6番のりばには18時9分発の留萌行となる4両編成のディーゼルカーが停車しており発車を待っていた。最終列車となる20時13分発の留萌行についても、駅舎側の1番のりばにすでに最終列車乗車のための整列スペースが置かれており、十数名の乗客が列をなしていた。
18時9分発の留萌行は、大きな混乱もなく定刻通りに深川駅を発車。その後、最終列車の待機列は係員の誘導により4番のりばへと移動していったが、この時点でも20名にも満たないほどで待機列の人数が劇的に増える雰囲気もなかったことから、筆者は、留萌駅からの折り返し列車が到着する直前まで深川駅舎内で様子を見ることにした。
一方の留萌駅は、深川駅とは異なり、16時30分頃には20名ほどが駅舎外に用意された整列スペースに待機しており、19時過ぎには黒山の人だかりが出来ている様子がツイートされていた。
深川駅発最終列車待機列へ
筆者は、留萌駅からの折り返し列車となる最終列車の入線が近づいた19時過ぎに、深川駅の4番のりばへと向かったが、深川駅での待機列はまだ30人に満たないほどで、ラストランとしてはやや寂しい印象だ。留萌行の最終列車への乗車は、留萌駅到着後、翌日まで深川方面に戻る手段がないことから宿泊が必須で、この日は留萌市内のほとんどの宿が満室であったということから留萌市民以外にとっては、難易度の高いラストランとなっていたようだ。
待機列に並びしばらくすると、前方に並んでいた男性がおもむろに「ありがとう留萌本線 最終列車乗車記念証明書」と書かれた硬券の配布を始める。こちらは非公式の乗車証明書のようであったが、ラストランを少しでも盛り上げようとするファンによるこうした心遣いをうれしく感じる。
19時23分、およそ8分遅れで留萌駅より列車が到着。これが、折り返し留萌行の最終列車となる。深川駅で再度、留萌駅へと折り返す乗客が待機列へと加わることになるが、混雑状況はそれほどでもなく19時35分頃には最終列車への乗車が許された。
穏やかなラストラン
最終列車の深川駅への入線後は、皆、思い思いの撮影タイムとなり、特に乗務員室の窓越しに運転席横に掲げられた乗務員用の時刻表を撮影しようと列をなしていたのは印象的な光景であった。
列車の撮影に当たって特にホーム上が荒れるようなこともなく、留萌行の最終となる深川駅20時13分発の列車は、定刻通りに発車。途中の秩父別駅では、数名の高校生の下車があり、地域の日常利用者もラストランの乗客に混ざっていたようであった。
4両編成の車内は、全員が着席してもまだ空席が残る程度の乗車率で、数えたところ深川から乗車した人数は105名であった。
深川駅を発車して約15分。石狩沼田駅には、ホームを埋め尽くすほどの地元の方々と、「銀河鉄道999」のブラスバンド演奏に迎えられて到着。翌日からはこの石狩沼田駅が、留萌本線の終着駅となる。
その後も各駅で大勢の地元住民の方々に見送られながら、峠下駅で最後の列車交換。留萌駅から深川駅に向かう最終列車も4両編成であったが、こちらは立ち席客が多く見受けられたのは対象的だった。
留萌駅には、深川駅を発車して約1時間後の21時17分、大勢の方々に迎えられながら到着。最終列車はその後、21時30分頃に回送列車として深川駅へと発車していった。深川への回送列車の見送りについては、マナーを乱す者もいなく穏やかなラストランとなった。
(了)