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公営競技の未成年者に向けたプロモーション活動について

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

公営競技業界の方々はなんでこんなにセンスがないのでしょう。以下京都新聞からの転載。

車券記入する机無かった競輪場、高校生が自作して寄贈 京都

https://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20190310000044

京都府向日市寺戸町の京都向日町競輪場に、北桑田高(京都市右京区京北)の森林リサーチ科の生徒が、車券記入用の机を寄贈した。これまで場内には机がなく、利便性の向上につなげる。[…]

運営を委託されている「日本写真判定」が北桑田高に依頼した。競輪場内には机がなく、府内の高校生の作品を通じて自転車競技に親しみを持ってもらおうと企画した。机は車券売り場前に置かれる。

大前提として、なぜ公営競技業界が未成年のギャンブルを楽しめない世代である高校生に対して「親しみを持ってもらおう」と思ったのか。

実はこの種の未成年者を対象とする公営競技のプロモーションは、競馬場にポニー牧場を作って子供の誘客を狙う施策を筆頭として、各公営競技場において共通して行われているプロモーション行為であります。一方でギャンブル場である各公営競技場に積極的に未成年者を寄せようとする施策に対しては、当然ながら批判もある。この点に関しては国会でも厳しく取り上げられたことがあります。以下、2018年6月1日衆院内閣委員会での質疑より。

「あえて子供をダシにして競馬場や競艇場に連れてくることはやらないで欲しい。子供の遊び場を用意しないで欲しい。如何思いますか?」と初鹿議員に問われ、それぞれの公営競技を所管する各官庁は以下のように答えるわけです。

〇農水省: 競馬場は全体がギャンブル場というよりは勝ち馬投票券を購入する場もあれば、馬事文化を学ぶ、そして馬に直接触れる経験が出来る数少ない場でもあり…

〇経産省: 競輪、オートレースは、競輪がオリンピック競技であることなどスポーツとしての側面もあり、競技自体を観戦する楽しみも有していると考えており…

と競馬、競輪、オートレースを所管する2官庁はそれぞれの立場での答弁を行うワケですが、ボートレースを所管する国交省政務官は同様に

〇国交省: モーターボート競走場は単に舟券を購入する場ではなく、モーターボート競走を観戦し、水辺に親しむという側面がある為に…

と説明しながら、流石に「水辺に親しむ」は無理があり過ぎるだろということで説明者ご自身が思わず笑ってしまい、それをキッカケとして議場が爆笑の渦に巻き込まれるわけであります。正直「苦しい言い訳」すぎるのは、各公営競技を所管する官庁自身も感じているワケですよ。

ましてや、冒頭でご紹介した京都の向日町競輪場での青少年に対するプロモーション活動は、競輪競技のスポーツとしての側面に着目したものですらなく、なぜか地元高校生に「車券記入用の机」を寄贈させるというギャンブル施設の機能のど真ん中にあるモノを通して自転車競技に「親しみを持ってもらおう」とする謎企画。もはや「競輪はスポーツだ」の逃げ口上すら成り立ってない状態であります。

個人的には、各公営競技がスポーツの側面があるのは事実であって、その部分にまで未成年者の入場規制をかける必要はないとは思いますが、一方で投票券を購入するエリアに関しては何をどう説明しようとも、それがギャンブル場であることには変わりありません。少なくとも、投票券購入エリアに関しては厳密にその他エリアと区切った上で、入退場者全員の年齢確認を行うという施策はあって然るべきなのではないかな、と思う所であります。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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