『金スマ』ドラマ特集でジャニーズ忖度の「こびりつき」、看過できない『ごめんね青春!』錦戸亮の名前消し
10月13日のTBS系のバラエティ番組『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』のなかで、テレビ局による「ジャニーズ忖度」と受け取られかねない内容が放送された。
この日の放送回では「心が震えたTBSドラマ」と題し、これまでTBS系で放送されたテレビドラマが特集された。1位には2023年の話題作『VIVANT』が選ばれたほか、『半沢直樹』『JIN-仁-』などが上位にランクイン。そんななか、物議を醸したのが19位の『ごめんね青春!』である。
Wikipedia、Netflixなどでも「主演」は錦戸亮だが…
2014年に放送された宮藤官九郎脚本の同作は、とある男子校と女子校の試験的な共学化やその背景を描いた物語。ジャニーズ事務所所属のグループ、関ジャニ∞に当時所属していた錦戸亮が“共学クラス”を受け持つ教師・原平助を演じたほか、同じく教師役に満島ひかり、学生役を永山絢斗、重岡大毅(ジャニーズWEST)、波瑠、トリンドル玲奈、川栄李奈(AKB48(当時))らがつとめた。
『ごめんね青春!』放送時の記事などでは、「主演」は錦戸亮とアナウンスされていた。Wikipediaでの番組紹介でも錦戸亮を「主演」とし、配信中のNetflixでも錦戸亮の名前がキャスト欄の一番手に明記され、彼を中心とした場面写真がメインで使用されている。誰がどのように見ても「主演は錦戸亮」とするものである。
ただ「心が震えたTBSドラマ」では、19位の『ごめんね青春!』の主演俳優は「錦戸亮」ではなく「満島ひかり」と伝えた。これには番組の視聴者も憤りや違和感を持ったようで、「主演は錦戸亮」との声が続出。また錦戸亮本人も自身のXで「19位満島ひかり主演ごめんね青春!」というコメントを投稿した。
なかったことにされた稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の存在、『スッキリ』では山里亮太が言及
9月7日に開かれたジャニーズ事務所による記者会見では、ジャニー喜多川氏による性加害に関することだけではなく、ジャニーズ事務所を退社したタレント(いわゆる「辞めジャニ」だが、本来はこのような言葉は使用するべきではない)に対するメディア露出の妨害・圧力なども議論された。会見以降、妨害・圧力についてテレビ局をはじめとするメディアの加担もあったことが問題視されている。
そうしたことを見つめ直し、「ジャニーズ事務所への忖度をなくしていこう」としているなか、2019年にジャニーズ事務所を退社した錦戸亮の名前を「なかった」かのように放送した『金スマ』の特集内容は大きな問題だ。たとえミスや勘違いだったとしても、ジャニーズ問題の近況を考えればあまりに慎重さに欠けたものではないだろうか。
振り返れば2017年、その年もっとも輝いた男性たちを表彰する『GQ MEN OF THE YEAR 2017』の授賞式をめぐるテレビ局の対応が波紋を呼んだ。数多くのメディアが取材するなか、元SMAPの稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾も授賞式に登壇し、ほかの受賞者らと一緒に並んだ。ただ、日本テレビ系、フジテレビ系では3人の存在を“黙殺”したとされた。
日本テレビ系の『スッキリ』では3人の姿を極力を見せないような編集・放送がなされた。ほかの受賞者とは違って、3人についてのテロップ紹介はまったくなかった。明らかな「名前消し」だった。
ただ、ナレーション(「天の声」)を担当した南海キャンディーズの山里亮太はそのやり方にたまりかねたのか、「そうそうたるメンツが並んでいるわけですから。斎藤工さんとか、長谷川(博己)さんとか、香取くんとか、草彅さんとか、吾郎さんとか」と3人についても触れた。MCの加藤浩次も「そうか、香取くんと草彅くんと吾郎ちゃんも選ばれているのね」と受け答えた。しかし本来、そんなやりとりがおこなわれること自体が異様である。当時、番組を観ていても気味の悪さを覚えた。その気味の悪さの正体は、テレビ制作側による「ジャニーズ忖度」が働いていたからに他ならない。
テレビをはじめとするメディアは、そうやって観る者に植え付けていた「ジャニーズ忖度」の気味の悪さがどういうものであるのか、現在もまだはっきりと把握できていないのかもしれない。
そういった点でも今回の『金スマ』で放送された「『ごめんね青春!』主演」の問題は、なんらかの「説明」が求められるものだろう。放送前に同ドラマについて簡単にリサーチをかければ「主演・錦戸亮」であることは明白。と言うより、そもそも自局のドラマである。かつては自分たちで「主演・錦戸亮」を宣伝もしていたはずなのだ。そのため、単純に「ミスでした」で済むとは思えない。
「ジャニーズ忖度」の「こびりつき」を感じさせる今回の一件。メディアの信用に関わる出来事としても番組の対応が注視される。