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雪と心理学:なぜすべる、なぜ白い、なぜきれい、なぜ足跡をつけたくなる、そして雪と私達

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

東京を始め、日本各地から雪の便りです。そこで、「雪」について、心理学っぽく考えてみました。

■雪は何色か。

「白に決まってるでしょ!」とツッコミを入れられそうです。その通り、「白に決まっている」と私達は思っているので、雪はいつも白く見えます。

夕方になり薄暗くなれば、雪の色は本当は灰色になっていくのですが、雪は白と思っているので、照明が変わっても私達の目には白く見えます。

太陽の光の下で白く見えるものを蛍光灯の下に持ってくると、紫色っぽくなります。ただし、私達の目には、屋外で見たままの色に見えます。カメラは現実のまま映すので、紫がかって写るのですが、それでは困るので、カメラには「オートホワイトバランス」機能があって、照明が変わっても色が変わらないような仕組みがあります。

よく知っている物は、どの照明で見ても同じ色に見えますが、よく知らない物を特殊な照明で見ると、誤解することもあります。黒だと思ったら紺色だったり。刑事ドラマで、目撃者が見た車の色が実は違っていたり。たとえばデパートの売り場のようなところで見て、自宅に帰ってみると、あれ?こんな色だったかなと感じたり。そんな経験がきっとおありでしょう。

■雪道はなぜすべるのか

摩擦係数が下がって滑りやすくなって、という物理的な話はおいておきます。雪道は滑りやすいですが、雪国の人は簡単には滑りません。靴の違いもありますが、歩き方の違いもあります。

人は、道路や床の状況に応じて、歩き方を微調整します。長年歩いていれば、コツをつかみます。ほとんど歩いたことのない人は、通常の乾燥した道を歩くように歩くので、滑ってしまいます。

雪国の人も、予想外のところがすべると、転ぶこともあります。

私は今新潟市に住んでいますが、すべるはずの雪道を歩いているときには滑らないのに、建物内に入って床がぬれていて、滑りそうになったことがあります。

北海道紋別市(流氷が来る街紋別)に住んでいたこともあります。冬は町中がアイスバーンになります(坂道はロードヒーティングでとけていますが)。交通事故を起こさない運転のコツは、とにかく早め早めのブレーキです。みなさん、凍った道の運転がとてもお上手です。

私も6年暮らしていて運転には慣れましたが、シーズン始めはダメでした。どんなに頭で考えてブレーキは早めにと思っても、ブレーキが遅れがちになります。

流氷の海を進むガリンコ号(紋別):北海道無料写真素材集 DO PHOTO
流氷の海を進むガリンコ号(紋別):北海道無料写真素材集 DO PHOTO

しだいに冬道に慣れて、スピードと距離と路面状況とを感じ取りながら冬の運転感覚が戻ってくれば、安全に運転できました。

世の中に危険はいろいろありますが、自覚すること、予想すること、練習することが、必要でしょう。

町中アイスバーンになったりはしないけれど、所々予想外にアイスバーンになっている。そんなところが、一番危ないですね。

■雪はなぜ美しいか。

今日の昼間の新潟市も、町中にパウダーシュガーをかけたように美しい風景が見られました。一面の雪景色もきれいですね。たとえば、金閣寺の金色と真っ白な雪のコントラストは絶景です。

赤や緑の景色や建物に、白い雪。地面が白。これは、コントラストによって、赤や緑の色を浮き上がらせます。白いキャンパスに絵を描いたように。これは、きれいですね。

雪は、汚れを隠します。薄汚れた道路も、建物も、樹木も、真っ白な雪が汚れを隠します。まるで、新品になったように、美しく見えることがあります。

雪の「白」色は、純粋さや清潔さ、素朴さや、前向きな気持ちの象徴です。白を見ると、人は美しさとすがすがしさを感じます。

雪の舞う池袋キャンパス:立教大学(2014.2.4)

■新雪に足跡をつけたくなるのはなぜか

大人がロマンチックに雪を眺めていると、子供が走ってやってきて、ドカドカと足跡をつけたりします。子供でなくても、大人だって、そうしたくなるときはありますね。それは、なぜ?

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新雪にぎゅっと足跡をつける感覚は、プチプチをつぶす快感に似ていますね。また、新雪に踏み入っていくのは、開拓者魂、やる気とチャレンジ精神を刺激されるかもしれません。

新雪に自分の足跡を残すのは、もっと自分を認めて欲しいと願い、自分の存在感、自尊心を高める、自分らしさを求める行動かもしれません。縄張り行動(マーキング)的な要素もあるでしょう。

新しく美しいものを壊すという破壊衝動が満たされる、ストレス発散になったり、ちょっとしたいたずら心が満たされる面もあるでしょう。真っ白い新雪に自分が跡を残すのは、白い紙に絵を書くように、創作意欲が満たされるでしょう。

子供が、わざわざ歩きにくい新雪の部分を歩こうとするのは、困難な目標を目指す「達成動機」の表れとも言えるでしょう。

■雪は邪魔者?

雪のない都会っ子は、雪が降れば大はしゃぎです。非日常は、私達をワクワクさせます。でも、大雪の地域の人は、雪なんてうんざりでしょうか。たとえば、札幌市はあんなに人口が多くてあんなに雪が降るという世界的にも珍しい場所です。

札幌市は、除雪、雪対策で、毎年150億円ものお金をかけています。春になれば、とけてしまうのに。

雪は、都会生活では邪魔者です。ただし、スキー場にはもちろん必要。それに、美味しい米作りにも冬の雪が必要です。

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そして私達の人生の中にも、そんな雪のようなものがあるかもしれません。邪魔だけれども、時には必要。厄介で、対策を練らなければならないけれど、いずれ春になればとけるもの。

さて、いずれにせよ、ほどよく降ってくれるといいですね。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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