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実はシビアなマリオの世界!? 生きてピーチに会える確率は、わずか0.2%ほどかもしれない…

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー

先月4/28より日本でも公開が始まった映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』、本日でちょうど公開一ヵ月となりました。全世界での興行収入は日本円換算で1700億円を突破し、世界的な大ヒットとなっています。

ゲームではアクションやコースクリアの際に少し声を出す程度のマリオですが、もちろん映画では沢山のセリフをしゃべり、活き活きと活動しています。そんな姿を見ていると、ついついマリオに感情移入してしまい、急にマリオが心配になってきました。

マリオの住む世界って過酷すぎないか!?

「過酷」と「過ぎる」で二重表現になっていることはさておき、話をすすめましょう。

ゲームの主なストーリーは、大魔王クッパにピーチ姫をさらわれ、マリオが助けにいくというもの。やることは単純明快ですが、その道のりがとても険しいです。
ゲーム内でマリオは、穴に落ちたり、鉄球をぶつけられたり、溶岩に飲まれたりと、数えきれないほどの危険な目に遭っています。

ゲームでは、コインを集めたり、敵を連続で踏んだりすることで残機を増やし、やられてもやり直すことができます。ですが、本来は命は一つ。敵にぶつかったくらいならいいとしても、溶岩の海に落ちたりすれば一巻の終わりでしょう。

つまり、本来なら無事にピーチに会うためには、一度もやられずに1機のみでゲームをクリアする必要があるわけです。

YouTubeなどには、1機もやられずにクリアする動画もあるが・・・

動画配信サイトにアップロードされている実況プレイや、RTA(リアルタイムアタック)などの動画の中には、1機もやられずにマリオシリーズをクリアしているものもあります。
でも、あれは何度も何度も練習してコースを覚えているからこそできること。
初めてそのコースに挑むのとは条件が違います。

とはいえ、私のような下手っぴプレイヤーの操るマリオでは、命がいくつあっても足りません。そこで、マリオは超人的な身体能力かつ超絶反射神経の持ち主だと考えて、上手なプレイヤーが初見でプレイしているときが本来のマリオだと考えます。

プレイヤースキルだけでは回避できない初見殺し系の罠

いくら技術があっても避けられないのが、初見殺し系の罠です。

初見殺しとは、見えない位置から敵が襲ってきたり、ジャンプしたと思ったら見えない壁(隠しブロックなど)があり、それにぶつかって穴に落ちたりするという罠のことです。
知らないうちに回避していたり、慎重にプレイすればなんとか見破ることができたりする場合もありますが、かいくぐれるかどうかは半ば運次第でしょう。

1機もやられずにクリアできる確率はどれくらいなのか?

攻略本も、プレイ経験もないマリオが一機もやられずに全ステージ、全コースをクリアできる確率はどれくらいあるのか計算してみます。

はじめに条件を設定する

まず、マリオのコース数について検証してみます。
(下記数値は、攻略に必須ではないエクストラステージも一部含み、やられる確率がほぼゼロのボーナスステージは抜いています。最短経路で攻略すればコース数は下記より少なくなります)

ファミコン版のスーパーマリオブラザーズは32コース、スーパーマリオブラザーズ2は52コース、スーパーマリオブラザーズ3は88コース。
スーパーファミコン版のスーパーマリオワールドは70コースで、それ以降のNewスーパーマリオブラザーズ(以下、ニューマリ)は、ニューマリ1で80コース、ニューマリ2で81、ニューマリWiiで77コース、ニューマリUで82コースでした。

他のシリーズでは100コースを超えるものや、コースごとに全然厚みが違って単純にコース数を語れないものもありますが、ニューマリなど最近の傾向から、ここではコース数を80として考えます。

次に、マリオが無事にコースをクリアできる確率を考えます。

これはプレイヤースキルと運によって変わってきますが、80コースをざっくりと前半40コース、後半40コースと分けて考えて、前半の簡単なステージは95%の確率で、後半の難しいステージでも90%の確率でクリアできると仮定します。

中には「いやいや、自分はもっと上手いぞ!」と感じる人もいるかも知れませんが、全体のクリア確率の平均が92.5%は、最初から最後までを初見で6機しかやられずにクリアできる数値なので、充分高い数値なのではないでしょうか。

この条件で、計算してみよう!

上記の条件で、最初から最後までを通して1機もやられずにクリアできる確率を算出してみます。

まず、1機もやられないまま前半の40コースをクリアできる確率は、95%(0.95)の40乗で、0.1285…より、約13%になります。
10回挑んだら、1~2回くらいは上手くいく程度ですね。

次に、後半40コースをクリアできる確率は、90%(0.9)の40乗で、0.01478…となり、約1.5%になります。
100回に1~2回くらいしか上手くいかない、これはかなり低い確率ですね。

そして、この両方共を同時に達成できる確率は、0.001899…となり、およそ0.2%です。
つまり、500回のチャンスがあって何とか1回上手くいく程度。…過酷です。

超シビアかつ、シリアスな世界観!?

生還確率500分の1の過酷ミッションに挑む一人の配管工の物語。
命がけのミッションに赴くマリオの勇敢さや、過酷な境遇に置かれても陽気に振る舞う姿勢。
そんなことに思いを馳せれば、マリオにもシリアスな緊張感が生まれます。また、ゲームをプレイするときにも、今までと違う味わいがあるかもしれません。

・・・いや、そんなのマリオじゃないですよね。

やっぱり、マリオは肩の力を抜いて、気楽に楽しむべきでしょう!!

※ イメージ(なお、これは毒キノコなのでご注意を)
※ イメージ(なお、これは毒キノコなのでご注意を)

もちろん、現在公開中の映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』も、全世代の全年齢の方が安心して楽しく見られる作品ですよ!!

作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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