中小企業はもう「会社説明会」をやめたほうがいい! ~就活の短期決戦スタート
3月1日。経団連に加盟する大企業の採用活動が解禁されました。2017年卒の就活が本格的にスタートします。
私は企業の現場に入り、目標の「絶対達成」を掲げる営業のコンサルタントです。採用活動は営業活動と酷似しており、良い人材を採用するための活動は、商品を販売するためのマーケティング活動とそっくりです。これを別個で考えると、お金をかけた割には正しいリターンが乏しくなります。人事部の採用担当にトップセールスを配置する企業も増えています。攻めの姿勢をなくした企業は、良い人材を採用するどころか、誰も採用できないという憂き目にあうことでしょう。
まず、マーケティングをコストの視点で考えてみます。マーケティングに関わるコストは3種類あります。
■ 経済的コスト → お金
■ 時間的コスト → 時間
■ 精神的コスト → ストレス
コストをお金だけだと捉えている人は、採用やマーケティングのみならず、ビジネスをするうえで大きなマイナスです。必ず3種類あると考えましょう。次にアプローチの視点で考えてみます。アプローチには以下の2種類があります。
■ パーソナルアプローチ → 「1」対「1」
■ マスアプローチ → 「1」対「不特定多数」
マーケティングアプローチの方法として、広告やWEBプロモーションといった、マスアプローチしか思いつかない人は問題です。必ず2種類あると受け止めましょう。これらコストの概念、アプローチの概念を組み合わせて、マーケティングのみならず、採用活動も考察してみます。
てっとり早く期待したリターンを得るためには、「経済的コスト」か「精神的コスト」をかけたアプローチ手法を選択します。(時間的コストをかけられないから当然である)
営業やマーケティングは、コツコツ、地道な認知活動が不可欠ですが、このように「短期決戦」の採用活動であれば、「時間的コスト」をかけられません。お客様は「買わない」という意思決定がありますが、学生は「就職しない」という意思決定は基本的ありません。ということは絶対的な期限が決まっているため、「経済的コスト」か「精神的コスト」をかけるしかない、と考えましょう。
2つのアプローチ手法で考えると、マスアプローチは経済的コスト――つまりお金をかければかけるほど期待リターンが上がっていきます。ですからテレビCMや新聞広告などに巨額を投資することで、効果を期待できます。
他方、閲覧数の少ないWEBサイトやブログ、メール、説明会などでマスアプローチをしていても効果は低い。「認知」というリターンを得られても、相手に「行動」させるような意思決定を促すことが十分にできません。「やることはやった」という自己満足で終わるだけです。巨額を投資し、マス広告に頼ることができるのは大企業です。中小企業が同じやり方をしても、叶いません。
高度情報化時代になり、多くの人が「1対1」のパーソナルアプローチをしなくなりました。なぜならマスアプローチの特性として、「NO」のレスポンスがないからです。レスポンスは基本的に「YES」しかないのです。断りの反応がない分、ストレスがかかりません。ですから、ネットを使ったコミュニケーションや、大人数を前にした演説に頼るのです。
いっぽうパーソナルアプローチは「YES」であろうが「NO」であろうが、どちらでもレスポンスがあります。ですからアプローチに対するリターンのコンバージョン率は非常に高くなります。しかしアプローチの絶対数が低くなることと、当然のことながらパーソナルアプローチをする人の精神的コストが高くなります。
リターンの数――つまり採用の絶対数が少なくていい中小企業は、このコンバージョン率に着目し、経済的コストではなく精神的コストをかけるやり方を強く推薦します。つまり徹底したパーソナルアプローチです。経営理念であったり、事業のビジョンであったりを正しく話ができる人(理想は社長本人)が学生ひとりひとりに直接コミュニケーションをとっていくのです。
「どうせ我が社のような中小企業には来ない」「しょせん大企業がいい人材を奪っていく」というような負け犬根性の会社には、誰も目を向けないでしょう。どんな待遇なのか、どんな製品を扱っているのか、どんなキャリア形成を約束してくれるのか、ということより、その姿勢、その思考パターンそのものに魅力を感じないからです。
学生が集まるところに足を運び、地道にコミュニケーションをとる。営業と同じです。1年目、2年目はうまくいかなくても、何度も繰り返しているとコツを掴めてきます。どこへ行けば素晴らしい人材と出会えるのか。どう話せば相手の心を奪えるのか。すべて営業活動と同じ発想です。
その労力を惜しむと、イマイチの人材を雇って、その人たちの教育に膨大な精神的コストを支払うことになります。中小企業はマス広告であったり、合同説明会などに参加するなどはやめて、もっと直接的に本気度が伝わるコミュニケーション手法を選びましょう。あまりストレスがかかるようなことはしたくない、という会社には、同じように、ストレスがかかるようなことはしたくない、という人材しか集まりませんから。