南極史上初の20.75℃観測も「なんの意味もない」の意味
今月9日(日)南極のシーモア島で、気温が20.75℃まで上昇したとガーディアンが伝えています。同記事によると、これまでの南極圏の最高記録は1982年にシグニー島で出された19.8℃とのことで、これを1℃も上回る気温です。
南極はこれまでも、世界でもっとも温暖化が進んでいる地域であると言われてきました。
例えば過去100年間の気温で比較してみると、世界の平均気温の上昇率が0.73℃であるのに対し、南極は約3℃となっています。単純に割り算をすれば、南極では4倍の速度で温暖化が進行しているといえるのです。
しかし今回、この20.75℃の記録が発表された際、少し気になることがありました。観測に携わったブラジル人科学者のカルロス・シェイファーさんがAFPに対し、下記のような意味深な発言をしているのです。
なぜ20℃超えという初の事態が起きたにもかかわらず、「気候変動の傾向に関しては、何の意味もない」と言い切れるのでしょうか。
シーモア島の観測所
記録が観測されたシーモア島は、南極半島の先端にある16個の群島のうちの1つで、島内にはアルゼンチンのモランビオ基地があります。平均気温は夏季は1℃、冬季はマイナス21℃にもなる極寒の地です。
モランビオ基地では長年気温の測定が行われてきましたが、今回のデータは違う場所でとられたようです。
ワシントンポストの記事によると、今回はブラジルの観測基地での値ということです。そしてここは過去12年間しかデータをとっていないのだそうです。つまり観測期間が短いために、正式な記録としては認定されない可能性があるというのです。
結局その意味は?
ということを踏まえて、先の発言を再び読んでみます。
「この記録は一度限りの気温であり、同地での長期的なデータセットの一部ではないため、気候変動の傾向という点については何の意味も持たない」
なるほど、この研究者の意図は、超高温の背景に気候変動があるかどうかということではなく、そもそもこの場所における観測記録が短いから、気温のトレンドを見るには意味がない、ということを言っていたのです。
とかく記録的な気温を見ると、しかもそれが南極での話となると、温暖化と関連付けたくなる流れがあります。にもかかわらず、この研究者は実に冷静です。
とはいえ、今月6日には南極半島のアルゼンチン・エスペランサ基地で気温が18.3℃まで上昇しています。こちらの方は、南極大陸の観測史上もっとも高い気温である可能性が高いようです。
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