就活迷子にならないポイント5点~2024年卒の就活生のために
◆2024年卒は広報解禁前にすでに佳境
2024年卒就活(2月現在、大学3年生)がすでに進んでいます。
政府の就活ルールでは広報解禁(説明会開始など)が3年生3月、選考解禁が4年生6月となっています。
が、この就活ルールはあくまでも目安。順守するかどうかは企業次第であり、罰則もなし。そもそも、就活時期については日本で大卒就職が定着した100年前から現在に至るまで法制化されていません。
当然ながら、就活時期は企業次第に。
しかも、2010年代前半から就活は学生有利の売り手市場となっています。逆に言えば、企業からすれば「採用氷河期」。コロナ禍も、この売り手市場/採用氷河期は一部の業界を除き、変わるところがありません。
その結果、就活時期は年々、早期化と長期化が同時進行しています。
長期化については後述するとして、まずは早期化についてご説明します。
就職情報会社・ディスコの調査(キャリタス就活2024学生モニター調査・1月1日時点)によりますと、1月1日時点で本選考を受けた就活生は51.1%(2021年卒35.2%)、内定を得た就活生は14.9%(2021年卒7.0%)。
いずれも、2021年卒から大幅に増えており、それだけ就活が早期化していることを示しています。
◆早期化に焦って就活迷子に
それでは、ディスコ調査にあるように、就活生全体が早期化しているか、と言えばそうではありません。
実はここにはちょっとした数字のトリックがあります。
就職情報会社の調査はディスコに限らず、その多くが自社メディア、つまり、就職情報サイトの登録学生が母数となっています。
就職情報サイトを登録して、しかも、アンケート調査に回答する就活生の大半は、それだけ就活サイトを使い込み、就活が進行しています。
就活が進行している就活生を母数とする以上、データから早期化が見えるのは当たり前です。
就活中の大学生全体ではどうなのか、それを示すデータはありません。
私が大学キャリアセンターなどを取材した限りでは、「超早期組(3年生3月時点ですでに内定が複数・または内定承諾で就活を終了)は1割、早期組(3年秋から冬にかけて就活開始)が3~4割、中間層(3年2月か3月ごろから就活開始)が2~3割。残り2~4割が出遅れ組・無気力組」と言ったところです。
もちろん、これはあくまでも私が各大学を取材して感じたものであり、根拠はありません。
「うちの大学は超早期組がもっと多い」とか「中間層はもっと多いはず」などのご意見もあるでしょう。
地域や大学によって差があるにせよ、就活生によってその進行度合いが大きく異なります。
しかも、一定数はすでに内定取得済み。
そうなると、就活を始めたばかりの就活生は焦ってしまいます。
「××は内定を貰っているのに、自分はまだこれから。どうしよう…」
焦って逆に何も手を付けられなくなる。言うなれば就活迷子に。
しかも、就活迷子から、気持ちが落ち込みひどくなると、就活そのものをやめてしまいます。そもそも論として、選考に参加しなければ内定を貰えるわけがありません。ゼロには何を掛けてもゼロにしかならないのですから。こうなると、いくら売り手市場と言っても、セルフ氷河期状態になってしまいます。
それでは、就活生がこの就活迷子から脱却し、内定を得るためにはどうすればいいでしょうか。ポイントは5点あります。以下、データと超早期組・就活迷子の違いを示しながら解説していきます。
◆ポイント1:内定取得済みの友人・知人に一喜一憂するなかれ~就活時期は分割化へ
超早期組:3年3月以前に内定
就活迷子:3年12月~2月に就活開始
→「就活を早く始めていなかったから、その分だけ不利ですよね?」「志望企業の選考にはもう間に合わなさそう」
関連データ:
2023年卒マイナビ企業新卒採用活動調査「6月時点での採用充足率」
8割以上22.9%(2020年卒23.5%)、5~7割21.4%(2020年卒20.7%)
就活の早期化が全体で進んでいるのであれば、選考解禁となる6月時点で企業の採用活動はほぼ終了しているはずです。
ところが、マイナビの調査によりますと、6月時点での採用充足率は8割以上と回答した企業は22.9%。5~7割と合算しても44.3%しかありません。この傾向はコロナ禍以前の2020年卒とほぼ同じ(合算で44.2%)。
残りは内定まで至っていないわけで、これは就活の早期化が一部の就活生にとどまっていることを示しています。
では、早期化がウソか、と言えばそうではありません。前記のディスコ調査の通り、内定済みの就活生は一定数、存在します。
早期化の就活生がごく一部となるカラクリは就活(採用)の長期化と分割化です。
売り手市場が定着した2010年代後半から各企業とも水面下で進んでいきました。
これは、具体的には大学受験と同じく、選考時期を複数回、設けるというものです。
企業からすれば、選考時期を複数回実施する手法は2000年代以前だと悪手、とされていました。それだけ手間も増えますし、結局のところ、早期選考の方が良い就活生が多いからです。そこで、選考時期はどこか1回で統一。だからこそ、日本の就活の特徴は「新卒一括採用」と呼ばれていました。
ところが、売り手市場が長期化していくにつれ、この「一括」の部分が崩壊していきます。選考時期をどこか1回に限定してしまうと、企業の多くは十分な内定者を確保できません。であれば、手間暇がかかったとしても選考時期を複数回実施するしかない。そう踏み切る企業が相次ぎました。
マイナビ調査の採用充足率が6月時点で5割未満と回答した企業が半数以上を占めるのは、売り手市場とこの選考時期の分割化が影響しています。
それだけ就活時期は長期化しているとも言えます。
いずれにせよ、友人・知人などが内定取得済みだったとしても、就活生は一喜一憂する必要はありません。「人は人、自分は自分」と割り切って、自分の就活を進めるのが一番です。
◆ポイント2:「業界絞り」という謎ルールにだまされるな
超早期組:早い時期に業界を絞る(または広く受ける)
就活迷子:超早期組を見て無理に絞ろうとする
→「業界を絞った方が内定を得やすそう」「業界が絞れないので、それだけ焦ってしまいます」
関連データ:
マイナビ「2022年卒大学生活動調査(5月)」
未内内々定なので「業界」の幅を広げる
31.6%(3月) 36.4%(4月)
就活生、特に就活迷子となる1~3月に急増する相談がこの「業界絞り」です。
しかも、現在、一般書店・大学生協で流通している就活本のうち、「業界絞り」を推奨している就活マニュアル本は私が確認しただけで5冊ありました。
その逆に、「業界は絞るな」としている本は1冊のみ(『内定メンタル』光城悠人、すばる舎、2021年)。
業界を絞った方が内定を得やすかったのは2000年代以前の話で、現在では正直古いマニュアルです。
マイナビ調査によると、就活途中、それも3・4月という時期に業界の幅を広げた就活生は、30%以上、います。
いや、このマイナビデータや「業界絞りが古い」という私の言を信用できない、という就活生の方は、総合職に就職した先輩学生の内定先を調べてみてください。おそらく、かなり高い確率で複数業界から内定を貰った人の方が多いはず。
もちろん、超早期組の中には業界を極端に絞って内定を得た、という学生もいます。ただ、そういう超早期組は、かなり早い時期に自身の志望先を考え、そのための対策に時間を費やしています。だからこそ、業界を絞って就活に成功しています。
一方、就活迷子状態の就活生はそうした超早期組の業界絞りなど参考になりません。しかも、総合職就職であれば、企業からすれば業界を絞る就活生だから内定を出す、なんて話はないのです。
もちろん、業界は選考参加企業を決めていく目安の一つにはなります。
ただ、総合職としての就活であれば、その業界を無理に限定したところで、有利にはなりません。それよりは、業界とは関係なく、企業カラーなどで検討していく方がいいのではないでしょうか。
◆ポイント3:二度手間をかけてフィルター突破を
超早期組:就職情報サイトのエントリー(ブックマーク)だけでなく、LINEなども登録
就活迷子:就職情報サイトのエントリー(ブックマーク)だけで十分
→「エントリーしても、セミナー情報などが来ず、友人には来た。これは学歴フィルター?」「エントリーしたら、LINEだの、企業独自の採用サイトだのを登録しろ、とのメール。うるさいので無視しています」
関連データ:
ディスコ「キャリタス就活2024学生モニター調査(1月1日時点)」
就職活動に関する情報入手先
SNS(LINE、Twitter、Instagramなど)32.5%(2021年卒18.3%)
LINEでの企業の採用アカウントの登録
54.8%(2021年卒40.9%)
就職情報サイトに登録後、企業情報を検索。気になる企業をブックマーク(エントリー)さえしていれば、黙っていても、セミナーや選考情報が届く。
そんな幸せな時代がかつてありました(2010年代まで)。
ところが今はそうではありません。
詳しくは、2022年6月に出した「就活サイトで二度手間フィルターが定着~先輩就活生が後輩に教えたい『就活のワナ』」にまとめました。
簡単にまとめると、経済団体・大学団体の話し合いにより、就職情報サイトで早期のインターンシップなどを出すことが大幅に制限されたのです。
しかし、企業からすればインターンシップは1日で十分ですし、制限などは無視したい。
そこで、就職情報サイトのブックマーク(エントリー)をした就活生に対して、LINEや企業マイページ、企業の採用独自サイトなどを登録するように促すメールを送るようになりました。
多くの就活生はそうした二度手間を面倒がって、スルーします。
ところが、この二度手間をかけないと、セミナーや選考情報が入ってきません。
この二度手間フィルターに気付いた就活生は都市部を中心に増加しています。ディスコ調査でLINEでの企業の採用アカウント登録数が2021年卒から10ポイント以上、増えているのはこの二度手間フィルターに気付いたから、と言えるでしょう。
就活迷子となった就活生は、この二度手間フィルターをきちんと突破してください。別に難しい話をしろ、というわけではありません。単にLINE(あるいは企業マイページ、企業の採用独自サイトなど)を登録するだけなのですから。
◆ポイント4:一点突破ではなく、同時進行で
超早期組:早い時期に様々な就活対策に着手
就活迷子:どこから手を付けていいか分からない
→「やるべきことが多すぎて何を優先したらいいのか分からない」「結局、何からやればいいですか?」
関連データ:
ディスコ「キャリタス就活2024学生モニター調査(2月1日時点)」
2月の行動予定
自己分析や選考試験対策をする 61.0%
企業の本選考を受ける59.7%
インターンシップ等のプログラムに参加する 56.7%
就活準備イベント(合同説明会)に参加する 46.9%
就活迷子からはこの質問も多く出ます。
自己分析のセミナーに行けば「自己分析が最優先」。適性検査のセミナーに行けば「適性検査対策が一番重要」。マナー講座に行けば「マナーが大事」。新聞社の新聞読み方講座に参加すれば「新聞を読み続けることが将来を左右する」…。
言っていることがバラバラです。
だからこそ、就活迷子は迷子になってしまいます。
これはちょっと冷静になれば、自社(事業者)の宣伝をしていることは分かるはず。
そんなの、私も例外ではなく、私単独のセミナーであれば「石渡の新刊『ゼロから始める就活まるごとガイド2025年度版』(講談社)を読めば大丈夫」と宣伝するに決まっています。
真面目な話、就活中は、やるべきことが一気に増えます。
では、どうすればいいか。答えは石渡の新刊…、ではなく、同時進行の気持ち悪さに耐えられるかどうかです。
時間に余裕がない以上、何か一点を一気に進めることは不可能です。
結局のところ、同時進行で少しずつ、進めていくしかありません。話が一気に進まないので、気持ち悪さを覚える就活生も多いでしょう。
ですが、就活以降の社会人でも、同時進行で複数の仕事を抱えることはよくある話です(マルチタスクと言います)。
社会人の前哨戦が就活である以上、同時進行でどのように効率的に進めていくか、考えてみてください。
なお、客観的に言って、時間がかかるのは適性検査対策、新聞や企業セミナーなど。一方、自己分析は、次の項目でも説明しますが、一人で抱え込むより、企業セミナーなどに参加しながら考えていく方がはっきりしていきます。
◆ポイント5:得点法で行動量を増やせ
超早期組:インターンシップ・セミナーなどにダメ元で参加していく
就活迷子:どれが得か損か、悩んで、結局は参加数が少ない
→「志望企業のイベント・セミナー以外は参加したくない」「どのイベント・セミナーに行けば得ですか?」
関連データ:
ディスコ「キャリタス就活2024学生モニター調査(2月1日時点)」
インターンシップの参加希望社数 7.5社(2022年卒7.4社)
「インターンシップ等の参加後に企業から受けたアプローチ」
インターンシップ参加者限定セミナーの案内 77.3%(2022年卒69.2%)
早期選考の案内 67.1%(2022年卒57.5%)
懇談会、社員座談会の案内 52.0%(2022年卒45.9%)
ディスコ調査によると、インターンシップの参加希望社数は7.5社。そのインターンシップに参加すると、早期選考などの優遇措置があることがデータからも明らかです。
超早期組の就活生は、このインターンシップから早期の内定に結びついた人が多いと言えます。
就活迷子の就活生も、そのことは理解しており、だからこそセミナーやインターンシップ、合同説明会などをどうするか、あれこれ考えます。
しかし、超早期組と就活迷子のスタンスは大きく異なります。
超早期組はポジティブで、ちょっとしたイベントやセミナーなどでも、「もしかしたら得るものがあるかもしれない」、いうなれば得点法で参加していきます。
一方、就活迷子は、「志望企業が参加していない合同説明会は行きたくない」「どれに行けば、損をしないのか」など、減点法で考えがちです。
就活の序盤であれば、就活生の視野は相当、限定されています。それで、判断しようとしても、見逃す情報の方が多いはず。
それよりも、超早期組のように、得点法で行動量を増やすようにしてみてください。その方が、多くの企業情報・就活情報を得て、自身にもプラスになるはずです。