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優秀な若者はブラック企業から引き抜け! ――草刈り場となるブラック企業

横山信弘経営コラムニスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

働く前から「安定」を求める学生たち

昨年実施された「2017年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、「あなたが企業選択をする場合、どのような企業がよいと思いますか」という質問に対して「自分のやりたい仕事ができる会社」が1位。「安定している会社」が2位。「社風がよい会社」が3位。「働きがいのある会社」が4位。「福利厚生のよい会社」が5位。……となっています。

「これから伸びそうな会社」「自分の能力・専門を活かせる会社」「若手が活躍できる会社」がかなり少ない。「仕事ができる人」という定義に必ず入ってくるファクター「チャレンジ精神」が微塵も見られない結果と言えます。

また、会社の規模を問う質問では、大手企業を志望する学生は全体の約5割に達しています。この割合は過去と比べ増え続けており、ますます就活生の「安定志向」は強まっていると言えるでしょう。

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。

過去とは異なる目標を設定し、それを達成させる支援をし続けています。しかしベテラン社員たちは成功体験の呪縛があるため、現状維持バイアスにかかりやすい。現状を現状のままにしておきたい、頭ではわかっていても新しい行動や高い目標にチャレンジできない、ということはあります。だからこそ、私たちコンサルタントや世の中の多くの経営者は、この調査結果には少し寂しい気持ちにさせられるのです。

チャレンジ精神よりも大切な「ストレス耐性」

人生に「ライフサイクル」があるように、企業にも事業にも商品にも、すべてにおいて「ライフサイクル」があります。現在「100」のものが、5年後も「100」で、10年後も「100」で、15年後も「100」、20年後も「100」……だなんてことはありません。現在「100」 → 5年後「150」 → 10年後「90」 → 15年後「20」 → 20年後「0」……ということが普通です。

東芝という日本の経済を支え続けた歴史ある大企業が、いま解体されようとしています。19万人の雇用はどのように維持されるのか、世間が固唾を飲んで注視しています。このように、商品はおろか、事業も、そして巨大企業でさえも、10年も20年も同じ状態を続けることはありません。これからの時代、ますます「生き残る力」が必要になっていきます。誰にとっても、企業にとっても、変化に対応できる、より高い「ストレス耐性」が不可欠な時代がやってくるのです。

ストレス耐性を鍛えるために

それではストレス耐性を鍛えるには、どうすればいいのか。簡単に解説していきます。

人間が何らかの活動を起こすには、脳の神経細胞・ニューロンの発火が必要です。朝、布団から起き上がるときも、茶碗にご飯をつけるときも、大なり小なりニューロンが発火しているのです。しかし発火するたびにニューロンは傷つき、消耗していきます。この修復作業が繰り返されることにより、ストレス耐性がアップします。感染症を予防するためには弱めた病原体でワクチンを打ち、体内に抗体を作ります。それと同じこと。ストレスを受けることによって、ストレスに強くなるということです。

したがって、ストレスに対する耐性を向上させるには、適度なストレスを継続的に受ける必要があるのです。

やりたくないこと、できれば後回しにしたいことを早め早めにやる。少し苦手なことでも頑張ってやってみようと行動を起こす。この繰り返しで、ストレスに打ち勝つハートができあがっていきます。

なぜブラック企業に務めた若者がねらい目か?

低賃金、長時間の労働、上司や先輩からの激しい叱責など……。劣悪な環境のなかで2~3年を凄し、会社に反発することなくそれなりに頑張ってきたが、いよいよ限界だ。10年、20年先の将来を考えると、さすがにこの職場ではやっていけない。もう転職しよう。……こう思う若者は多いことでしょう。一昔前であれば、「辞めても他に行けるところがない」「会社なんてどこも同じだ」と諦める若者がたくさんいたと思います。しかし今は就活生・求職者が有利の「売り手市場」の時代。少子化の流れは止まりませんから、多少の浮き沈みはあってもこの状態は続きます。

それに今は「ブラック企業」がバッシングされる時代。前職を辞めた理由が、

「定時が夕方5時半なのにもかかわらず、夜9時まで働くのが義務付けられていました。最初は良かったものの、5年間給料は上がっていません。にもかかわらず、仕事は増えるいっぽうでした」

……であれば、誰でも同情してくれます。

「それぐらいあたりまえじゃボケ! 俺が若いころは毎日夜中まで働いたもんだ。お前のような学歴も資格もないヤツが贅沢言うな!」

……などと言う人はいないでしょう。

会社に入ってみればわかりますが、よほど特殊な仕事でない限り、いわゆる「スキル」の類は仕事をスタートしてからでも手に入れられます。反対に、特殊なスキルほど、今後はAIやロボット技術によって置換される可能性があります。大切なのは前述したとおり「ストレス耐性」なのです。どんな変化をも受け入れ、想定外のことがあっても自分の力で乗り越えようとする強い心です。

多くの企業はそういう人財を求めています。

高学歴で安定志向の若者より、2~3年でもブラック企業に勤めた経験がある若い人のほうが、喉から手が出るほど欲しい。特に経営者たちはそう思っています。そうなると今後は「ブラック企業」が草刈り場と化する可能性があると言えます。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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