新番組に見る女性タレントの活躍 「3人」「トーク」「リアリティー」「芸人」代表的な4つのフォーマット
テレビ各局が春の改編を迎え、新番組を含めたバラエティーのラインナップが出揃った。そこで気付くのは、女性タレント中心の番組が増えたことだ。
テレビ朝日の深夜枠だけでも、昨年から放送されている『トゲアリトゲナシトゲトゲ』(3時のヒロイン・福田麻貴、Aマッソ・加納、ラランド・サーヤ)、『キョコロヒー』(ヒコロヒーと日向坂46・齊藤京子)に加えて、『イワクラさん×吉住さん』(蛙亭イワクラと吉住)、『阿佐ヶ谷ワイド!!』(阿佐ヶ谷姉妹)の2番組が新たに加わった。
そのほか、レギュラーMCの指原莉乃、いとうあさこをはじめとする女性タレント軍団が男性ゲストの素顔をあぶり出す『トークィーンズ』(フジテレビ系)のレギュラー化が決定。また、『ヒロミ・指原の“恋のお世話始めました”』(テレビ朝日/ABEMA)や『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)など、相変わらず恋愛をモチーフとしたバラエティー番組も人気を博している。
こうした番組は、和田アキ子の『アッコにおまかせ!』(TBS系)、山田邦子の『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』(フジテレビ系)など、女性タレントが冠番組を持つ流れとは別の文脈を感じる。「女性3人」「トークバラエティー」「リアリティー番組」「芸人(+タレント)」という代表的な4つのフォーマットから、それぞれの成り立ちや特性を考えてみたい。
『やっぱり猫が好き』が女性3人の基盤に
女性タレント3人の番組というと、真っ先に思い浮かぶのが1988年~1991年まで放送された『やっぱり猫が好き』(フジテレビ系)だ。
基本的には3姉妹が住むマンションの一室を舞台としたシチュエーション・コメディーで、長女をもたいまさこ、次女を室井滋、三女を小林聡美が演じている。ドラマとはいえ、アドリブと思われるやり取りも多く、まるでトークバラエティーを見ているような臨場感があった。
実際、この「女性3人」のフォーマットは、トークバラエティーとして確立。1994年から放送が開始した『おそく起きた朝は…』(同・現在のタイトルは『はやく起きた朝は…』)は、松居直美、森尾由美、磯野貴理子のトークが好評を博し、タイトルを変更して25年以上続く長寿番組となっている。
一方で、2009年にテレビ東京の「ドラマ24」枠で放送された『セレぶり3』では、“友人3人がルームシェアするマンションの一室”と設定を変え、コメディードラマとして引き継がれた。「セレブへのあこがれ」のみを共通点とする3人(浅見れいな、中村ゆり、野波麻帆)が同居生活を始め、セレブになりきれない滑稽な日常を送るというものだ。
現在放送中の『トゲアリトゲナシトゲトゲ』も、3人がレギュラー出演するという形式は同じだ。“キャラクターの違う固定メンバー3人”というところが、ドラマやバラエティーに広がりを持たせるのかもしれない。
ゆるいトークから女性の行動分析へ
ゲストを招いたゆるいトークバラエティーも定番の一つである。この形式で思い出されるのが、PUFFYの大貫亜美と吉村由美が司会を務める『パパパパPUFFY』(テレビ朝日系・1997年~2002年放送終了)だ。
電気グルーヴ・ピエール瀧、TOKIOの国分太一と城島茂、今田耕司と東野幸治、当時まだ全国的な知名度は低かった俳優・大泉洋など、毎回多様なゲストが登場。ゲストとともに1曲歌い、ロケVTRを見ながらトークを繰り広げ、最後にゲストを喜ばせる企画を行うのがルーティンだった(番組後期はロケ企画が増加)。
この要素は、ベッキーを司会に据えた音楽トーク番組『月光音楽団』(TBS系・2005年~2010年終了)にも引き継がれている。トークと音楽ライブでパートを分け、基本的にはそれぞれ別のゲスト出演者が登場する。初期こそ俳優の佐藤隆太、石垣佑磨がレギュラーだったものの、比較的早い段階で安田美沙子、夏川純、山本梓にバトンタッチされ女性メインの番組となった。
同時期の2005年に篠原涼子、優香が司会の『空飛ぶグータン~自分探しバラエティ~』(フジテレビ系/関西テレビ制作)がスタート。毎週、篠原と優香が交代で女性ゲスト2人とロケを行い、女性の行動を分析する企画「自分探しパーティー」が好評を博した。
2006年から江角マキコをはじめとする姉妹設定の『グータンヌーボ』としてリニューアルされ、2012年放送終了。この放送時期に「ガールズトーク」という言葉が出てきた記憶がある。その後、長谷川京子ら4人がMCを務める『グータンヌーボ2』として復活し、2019年~2021年まで放送される人気番組となった。
『テラスハウス』以降、リアリティー番組が人気に
ゆるさから女性の行動分析へ。この傾向は、恋愛リアリティーショーが支持される前兆だったのかもしれない。
1999年スタートの恋愛バラエティー番組『あいのり』(フジテレビ系)、久本雅美、中島知子がメインの『恋するハニカミ!』(TBS系・2003年~)が2009年に放送終了。明石家さんま司会の恋愛トークバラエティー『恋のから騒ぎ』(日本テレビ系・1994年~)も2011年に終了している。
その後、2012年から複数の男女がシェアハウスする模様を記録した『テラスハウス』(フジテレビ系・2014年放送終了)がヒット。タレントのYOUらがスタジオキャストを務める番組で、2015年からネットフリックスで新シーズンの配信がスタートすると世界的な人気を獲得した。その後の動画配信サービスにおける恋愛リアリティーショー人気を確固たるものとした番組と言える。
ただ、番組演出を起因とするSNSの誹謗中傷によって問題が発生し、2020年に番組は打ち切りとなった。番組視聴者の熱量の高さが、悪い方向に走ってしまった悲しい事件だった。
その半面で、リアリティー番組の要素はいまだ求められ続けている。Amazonプライム・ビデオの『バチェラー・ジャパン』にしろ、地上波の『あざとくて何が悪いの?』にしろ、男女のリアルな動向を観察する切り口に変わりはない。
またこうした番組には、レギュラーもしくはゲスト出演という形でほぼ間違いなく男性タレントが登場する。女性の本音に対する、ある種の“緩衝材”として必要とされるのかもしれない。
「芸人+タレント」と「芸人メイン」
ここ数年で目立つのが女性芸人の活躍だ。お笑い養成所によって絶対数が増え、テレビが若年層の男女をターゲットにし始めたことで、若手芸人にチャンスが生まれた背景もあるだろう。主に二つのフォーマットを軸に露出が増えている。
一つは、「芸人+タレント」という形式だ。このタイプの深夜番組というと、久本雅美と和田アキ子が司会を務めた『アッコとマチャミの新型テレビ』(日本テレビ系・2001年~2005年放送終了)が思い出される。しかし、ここにはテレビの被り物をした三村マサカズらが登場するミニコーナーがあったりと、ゲスト出演者以外の演者も少なくなかった。最近の番組は、もう少しタイトで対等なポジションという印象が強い。
たとえば4月から4週連続で放送される特番「レディファーストバラエティ『横澤×カレン』」(読売テレビ)は芸人×モデル(横澤夏子と滝沢カレン)、『キョコロヒー』は芸人×アイドル(ヒコロヒーと齊藤京子)というもので、番組の色こそ違うが“別ジャンル2人がタッグを組む”というスタンスは同じだ。演者の数は予算も関係しているだろうが、少なくとも先輩後輩の垣根は感じない。
もう一つは、「芸人メイン」の番組だ。2007年に放送されたテレビ朝日の特番『キレイ(仮)』(全2回)が個人的には思い出深い。出演者はオアシズの光浦靖子、大久保佳代子、まちゃまちゃ、だいたひかる、森三中の黒沢かずこ、村上知子、大島美幸、ハリセンボンの箕輪はるか、近藤春菜、柳原可奈子の10名。
“女性芸人が真剣に美しさを追い求める美容バラエティー”をテーマとしながらも、明らかに共演者を笑わせにかかるエピソードトークにはジワジワとこみ上げるものがあった。この種の笑いは、男女を問わない。その意味では、『トゲアリトゲナシトゲトゲ』にも通じるところがある。
現在放送中の『阿佐ヶ谷ワイド!!』は、ゆかりの深い“杉並区阿佐ヶ谷”を素敵な街にしようと阿佐ヶ谷姉妹が働き掛ける東京発の地域密着型バラエティー。『イワクラさん×吉住さん』は、街を行き交う人の小さな悩みや秘密を聞いて本音で語り合うトークバラエティーだ。どちらも彼女たちの持ち味が生かされており、今の時代ならではの番組だと感じる。
トレンドを象徴する『イワクラさん×吉住さん』
とくに『イワクラさん×吉住さん』は、ここ最近のトレンドを象徴していると感じてならない。
2009年に『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「人見知り芸人」が放送されて以降、ネガティブな思いや悩みそのものが芸人の個性として定着したように思う。実際、昨年に同番組で放送された「生きづらい芸人」(吉住がプレゼンした企画で、蛙亭・イワクラも出演)は、ネット上で多くの共感の声が上がっている。
また、2015年から『ダウンタウンなう』(フジテレビ系・2021年放送終了)でスタートした「本音でハシゴ酒」、2019年からスタートした『あちこちオードリー』(テレビ東京系)のように、“タレントが本音を語る”という趣旨の番組が支持されるようになった。
今年4月からは、司会者2人による疑似生放送(パイロット版は生放送)のトークバラエティー『午前0時の森』(日本テレビ系)がスタートするなど、ラジオ的な要素を含む深夜番組も出てきている。このすべてにオードリー・若林正恭が絡んでいるのも興味深いところだ。
『イワクラさん×吉住さん』は、こうした流れと2人の個性が見事にハマった番組ではないだろうか。王道の“あるある”の共感ではなく、個人的な気持ちやエピソードに“寄り添う”というスタンスが実に新鮮なのだ。