大谷翔平選手が「ワクワクした」「実家感がある」と語った日本のコンビニ 海外から見たすごい魅力度
WBCで優勝した侍ジャパン。中でもMVPに輝いた大谷翔平選手の活躍は目覚ましく、いまだに興奮が冷めやらない。
各メディアでさまざまなサイドストーリーが紹介されているが、そのひとつ、大谷選手があるメディアに語った「コンビニに入ってワクワクした」「すごい実家感があった」というエピソードに筆者は目が留まった。
記事によると、大谷選手は地方でCMの撮影中、トイレに行きたくなって、コンビニに立ち寄った。たまたま他のお客さんがいなかったため、ゆっくりと「コンビニ」の店内を堪能できたという。
大谷選手ほどの有名人になると、せっかく日本にきても、気軽にコンビニにも行けないのかと思ったが、コンビニに行って「ワクワクする」「楽しい」「うれしい」と思うのは、外国から久しぶりに帰省した日本人には、よく理解できる感覚なのではないだろうか。
あの小さな建物の中に、多数の商品がところ狭しと置かれ、まるで「宝箱」のように見える。こうした気持ちは、大谷選手のように、久しぶりに日本に帰ってきた日本人だけでなく、外国人観光客も同じように抱いている。
旅の達人でもワクワクする
筆者がよく取材する中国人観光客も同様だ。
日本のインバウンド市場では、しばしば観光地の整備(英語、中国語の看板や標識、Wi-Fiの設置など)が必要との声が聞かれるが、SNSが発達したいま、ネットでどんなことでも検索できるので、通訳も不要だし、交通アクセスの紹介、観光案内なども不要だ。
日本のWi-Fi整備は遅れているので、これはもっと設置するべきだと思うが、基本的に、外国人が1人で日本にやってきて困ることは、数年前と比較して、ずいぶん減った。
個人旅行の場合、目的地も事前に自分でいくらでも検索できる。とりあえず有名な観光地に行く人もいるが、リピーターになると、そういうところにはもう行かない。自分の趣味や嗜好に合った、自分だけの目的が明確にあるからだ。
旅の目的が個人によって、どんどん多様化、細分化しているため、それを分析したり、マーケティングしたりして、ビジネスに活かすことは難しくなっているが、どんな外国人、どんな旅の達人でも「ワクワクする」「エキサイティングだ」と感じるもののひとつが、日本のコンビニではないかと筆者は感じている。
用がなくても立ち寄りたくなるコンビニ
数年前のことだが、ある中国人観光客に「来日して、何がいちばん思い出に残っているか」と聞いたところ「ホテルの目の前にあったコンビニ」と答えて、驚いたことがあった。
その人は日本に数回来たことがあり、当然、コンビニにも立ち寄ったことがあったが、あちこちで出歩いて、最後に疲れてホテルに戻る際、ホテルの向かい側にあるコンビニに必ず寄り、「店内をちょっと物色する」ことを滞在中の日課にしていた、と話していた。
その人が暮らす上海にも、もちろんコンビニは多数ある。「ローソン」(羅森)や「ファミリーマート」(全家)などのほか、中国の地元系コンビニもたくさんあり、最近では日本と同じく、淹れ立てのコーヒーもあるし、お菓子やアイス、ドリンク、日本風のおにぎり、文房具や雑誌なども充実している。
だが、その中国人は「日本のコンビニのようなワクワク感はないんです」と話す。
その人によれば、「まるで有名ケーキ店のものかと思うような美味しいデザートや、お菓子のおまけ、日本にしかないようなドリンク、タオルや下着、化粧品まである。用事がなくても、ちょっと店内をうろついて、何か1つか2つ、買って帰ることが楽しい。そういう気持ちはこれまで感じたことがない。日本の百貨店のショッピングとも違うもの」だという。
日本人も帰宅途中、何となくコンビニに立ち寄る人が多いと思うが、同じような感覚なのだろう。
大谷選手が「実家感があった」とメディアに語ったのも、もしかしたら、以前、実家の近くのコンビニに立ち寄ったときの「思い出」が蘇り、懐かしい気持ちになったからかもしれない。
照明が明るくて、ホッとする
同様の意見は、香港に住む友人からも聞いたことがある。香港にもコンビニは多数あるが、品揃えという点では日本にかなり劣る上、その人は「店の清潔感、照明の明るさが違う」という。
確かに、日本のコンビニの照明は煌々と明るく、地方などではとくに、夜遅くに道端で見つけると、ホッとするものだ。日用品、必需品を買うスーパーなどと違い、「とくに買うものがなくても、立ち寄ってみたくなる」、そんな存在感にあふれている。
海外在住の日本人の友人は、いつも日本から海外に戻る際、「前夜にコンビニで買いだめする。子どもが日本のコンビニのお菓子を楽しみに待っているから」と話していた。
大谷選手の今季の報酬総額の推定はメジャー史上最高額で約85億円、と報道されたばかりだが、そんな大谷選手でさえ「ワクワクする」魅力がある日本のコンビニ。日本のインバウンドにおいても、見直される存在ではないかと思う。