WBCで最後に感動を呼んだ「きれいに並べられた靴」 日本人の几帳面さに外国人が感嘆
WBCの決勝で侍ジャパンはアメリカを下し、優勝を果たした。試合終了後の24日、山田哲人選手がインスタグラムに投稿した1枚の写真は、日本人だけでなく、外国人の間でも大きな感動を呼んだ。
その写真とは、大谷翔平選手、ダルビッシュ有選手と3人で撮った記念写真だ。建物の玄関付近で撮られたもので、3人のさわやかな笑顔が印象的だったが、SNSで多くの人が“反応”したのは、そこではなかった。
人々の目が釘付けになったのは、3人の背後にわずかに写り込んだ「たくさん並べられた靴」だった。
ずらりと並べられた靴の意味
その靴はすべて、そのまま履いて外に出られる向きに、きちんと並べ替えられており、しかも、横一列にびしっと並んでいて、乱れていない。
これに多くの日本人が「後ろの靴がすごくきちんと並んでいる!」「几帳面な日本人らしい」「まるで高校野球の合宿所みたいだ」「クラブ活動の教えが、ちゃんと生きているんだな」などと反応したのだ。
ほんの少ししか写っていない靴に“注目”した人が多かったのは、日本人ならではだと筆者は思ったが、日本人のSNSの反応を見て、感嘆する外国人もいた。
筆者の知人の在日中国人だ。彼は大の野球好きで、今回のWBCも全試合を観戦したというが、日本人の反応を見て、SNSに「さすがに几帳面な日本人だ」と書き込んでいた。
本人にもう少し詳しく話を聞いてみると、こんな意見が返ってきた。
「正直、最初は『そこか!』って思いました。自分は気がつかなかったんです。だって、少ししか写っていなかったから。
でも、日本人がSNSに『野球部の教えが生きている!』と書いているのを見て、やはり、日本人が成長する上で、中学・高校時代に経験するクラブ活動の存在は大きいものなんだな、それがWBCとか、サッカーのワールドカップなどのプロのスポーツにもつながっているのだなと思い、うらやましく思いました。
それから感じたことは、ベンチの清掃、整理整頓、ゴミ拾いなども、見た目をきれいにして、気持ちよくすることだけでなく、内面(心)も整えることにもつながるということだと感じました。これが日本人の精神性につながっているんですね。
靴でも、ロッカーでも、ベンチでも、きれいになっていれば、自分だけでなく、他人も使いやすい。つまり、誰かへの思いやりや、リスペクトにもつながることだと思いました」
「靴を揃えること」は当たり前ではない
「ちょうど思い出したのですが、自分の家の近所の歯医者は、入り口で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えるのですが、そこでも日本人は靴をきちんと揃えていて、脱ぎっぱなしの人は1人もいないということです。
スリッパも、次の人が履きやすいように、前向きに揃えていますね。
日本に住んでいるとそれが当たり前なので、自分も同じように靴を揃えていたのですが、これは海外では、スタンダードではないでしょう。
もちろん、靴を脱ぐという機会自体、日本ほど多い国は少ないということがありますけれど、少なくとも、中国では、これ(脱いだ靴をきちんと揃えること)を全員が実現するのは難しいかな、と思いました。
自宅では、中国人も脱いだ靴をきちんと揃えて、きれいにしているのですが、公共の場となると、いろいろな人がいるので、なかなか難しい……そう思いました。
この知人の話を聞いていて、私は中国のスーパーの買い物カゴをのせるカート置き場のことを思い出した。
少なくとも、コロナ禍前の2019年ごろまで、筆者が中国のスーパーに行くと、使い終わったあとのカートはあちこちの向きに放置されており、元の場所に戻している人は少なかった。
また、幼い子どもが買い物カートに乗るため、カゴの中に靴の泥がついていることもよくあった。
筆者は中国から日本に戻ってきて、スーパーに行くたびに、カートが元の位置にきれいに並べられているところを見て、日本人ながら「すごいな」と感嘆したものだった。
ずっと日本に住んでいると、あまり気がつかないのだが、使ったものを前と同じところに戻すことは、次にそれを使う人への「思いやり」なんだ、と思った。
日本では、こうしたことを家庭だけでなく、学校でも、クラブ活動などでも繰り返し教えられ、身につけていくが、その心が、WBCのあの1枚の写真にも現れていた。そのことが、日本人だけでなく、外国人をも感嘆させたのだろう。