近い将来、メジャーリーグの球団が増えるかもしれない。ESPNをはじめとするいくつかの報道によれば、コミッショナーのロブ・マンフレッドが、オールスター・ゲーム当日に催されたBBWAA（全米ベースボール記者協会）の昼食会で、球団数を増やすエクスパンション（拡張）を行う可能性があることを、他の事柄とともに口にしたという。

１月にバド・シーリグ――日本ではバド・セリグと表記されることが多い――の後任としてコミッショナーに就任したマンフレッドは、これまでにもエクスパンションを匂わせる発言をしていた。また、メジャーリーグは過去にも、エクスパンションを繰り返してきた歴史を持つ。

ナショナル・リーグ（ナ・リーグ）が1901年創設のアメリカン・リーグ（ア・リーグ）と合意に達し、1903年にワールドシリーズが始まって以降、メジャーリーグは長らく16球団（リーグ８球団）のままだった。この間に存在した、1914～15年のフェデラル・リーグ（８球団）もメジャーリーグと看做されているが、このリーグが、ナ・リーグとア・リーグの２リーグ体制に加わることはなかった。

エクスパンションは1961年に始まった。ロサンゼルス・エンジェルスとワシントン・セネタース（現テキサス・レンジャーズ／1901～60年のワシントン・セネタースは現ミネソタ・ツインズ）が生まれ、ア・リーグは10球団に。翌1962年には、ナ・リーグにヒューストン・コルト.45's（現ヒューストン・アストロズ）とニューヨーク・メッツが誕生し、メジャーリーグは20球団（リーグ10球団）となった。

続いて、1969年に４球団が増えた。ナ・リーグにモントリオール・エクスポズ（現ワシントン・ナショナルズ）とサンディエゴ・パドレス、ア・リーグにはカンザスシティ・ロイヤルズとシアトル・パイロッツ（現ミルウォーキー・ブルワーズ）が誕生。この年から東西のリーグ２地区制――全24球団、各リーグ12球団、各地区６球団――も導入され、リーグ優勝を決めるリーグ・チャンピオンシップシリーズ（リーグ優勝決定シリーズ）が始まった。２シリーズとなって最初のポストシーズンを制し、ワールドチャンピオンに輝いたのは、創設８年目にして初めてシーズン勝率.500以上を記録したメッツ――ミラクル・メッツ！――だった。

1977年には、ア・リーグにトロント・ブルージェイズとシアトル・マリナーズが生まれる。さらに、1992年にブルージェイズがアメリカ以外に本拠を置く球団では初のワールドチャンピオンとなった翌年には、ナ・リーグにフロリダ・マーリンズ（現マイアミ・マーリンズ）とコロラド・ロッキーズが誕生。この年は各地区７球団のリーグ２地区制だったが、翌1994年からはリーグ３地区制に移行した。両リーグとも、東地区と中地区が５球団ずつで、西地区は４球団だった。

そして、1998年にも――現時点では最後の――エクスパンションが行われた。ナ・リーグにアリゾナ・ダイヤモンドバックス、ア・リーグにタンパベイ・デビルレイズ（現タンパベイ・レイズ）が加わって全30球団に。ただし、各リーグ15球団ではなく、ブルワーズがア・リーグからナ・リーグへ移り、ナ・リーグは16球団、ア・リーグは14球団となった。ナ・リーグの編成は東地区５球団、中地区６球団、西地区５球団、ア・リーグは東地区５球団、中地区５球団、西地区４球団。ここから、ナ・リーグにいたアストロズが2013年にア・リーグへ移り、各リーグ15球団、各地区５球団として、今日に至っている。

エクスパンションで誕生した14球団は、いずれも創設１年目は負け越していて、平均すると7.4年目に初のシーズン勝率.500以上を記録している。エンジェルスとダイヤモンドバックスの２年目が最も早く、マリナーズの15年目が最も遅かった。ポストシーズン初出場は平均12.9年目。ダイヤモンドバックスは２年目に地区優勝を果たしたが、レンジャーズは36年目にしてようやく辿り着いた。

ナショナルズとマリナーズはリーグ優勝が一度もなく、この２球団に加えて、レンジャーズ、アストロズ、ブルワーズ、パドレス、ロッキーズ、レイズも、ワールドチャンピオンにはなったことがない（エクスパンションで誕生した14球団以外は、すべて少なくとも２度、ワールドチャンピオンとなっている）。ロッキーズは地区優勝もなく、ポストシーズン出場は３度ともワイルドカードによる。一方、ロッキーズと同じ年に生まれたマーリンズも地区優勝は皆無ながら、２度出場したポストシーズンでは、いずれもワールドチャンピオンに輝いている。