シーディング 種まきと雨雲
11日(木)夕方、東京都心で突如、雨が降った。不意の雨は上層の雲がもたらした氷粒子によってできた雨雲によるもの。これを「雲の種まき:シーディング seeding」といい、人工降雨の基礎となった仕組みだ。
降水確率0%、でも雨に
日が照っているのに雨が降ることを天気雨、または狐の嫁入りといいます。11日(木)夕方の都心はまさにそんな天気でした。
こちらは11日午後4時の東京周辺の天気です。
東京から千葉にかけて、細長い雨雲が広がっています。東京大手町では16時15分から45分までの30分間、雨が降りました。
わずかな時間だったので、覚えのない方も多いでしょう。それでも、東京23区の昼間人口は約1200万人、1割の人が雨に遭遇したとしても100万人以上、影響の大きさは全国一です。
前日夕方(10日午後5時)の天気予報では、この時間の降水確率は0%でした。当日の天気予報でも降水確率は10%だったので、予想外の天気雨に驚きました。
なぜ、雨が降ったのでしょう?
これを解くカギは西から東へ広がった上層雲にあります。都心で雨が降り出す2時間前(午後2時)の雲の様子を見てみましょう。赤丸で囲った雲は上空最も高い所にできる雲で、細かな氷の粒でできています。
この薄いベールのような雲がスーッと伸びて、関東地方にかかった途端に雨が降り出しました。
雲の種まき「シーディング seeding」
雲の中に雨粒ができるためには核となる氷粒子が必要です。雨を降らせる十分な水があっても、雨粒の元となる氷粒子がない中層の雲からは雨が降りにくいのです。
このような雲に上層雲から氷粒子がもたらされると、それが核となって雨粒ができ、成長し、雨となります。
これを雲の種まき(シーディング seeding)といい、2種類の雲が組み合わさって雨が降る、とてもおもしろい仕組みです。
そして、これを応用したものが人工的に雨を降らせる「人工降雨」です、人の手による種まきは上手くいかないけれど、自然の種まきはあっという間に雨を降らせる、雲の中は不思議です。
【参考資料】
武田喬男,2005:種まきをする雲,気象ブックス015 雨の科学-雲をつかむ話,成山堂書店,51-56.