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台風一過の「木枯らし1号」 台風22号は温帯低気圧になってから発達 

饒村曜気象予報士
木枯らし(ペイレスイメージズ/アフロ)

温帯低気圧になってから発達

 秋雨前線を刺激し、南西諸島や、西日本から東日本の太平洋側に大雨を降らせた台風22号は、10月30日午前0時に三陸沖で温帯低気圧(低気圧)に変わり、発達しながら千島列島に向かっています。

 房総半島沖を北上しているときの台風22号の中心気圧は、985ヘクトパスカルですが、予報では、低気圧に変わって千島列島に達した時には964ヘクトパスカルになります(図)。

図 予想天気図(平成29年10月30日9時の予想天気図)
図 予想天気図(平成29年10月30日9時の予想天気図)

 つまり、台風に強い寒気が流入したことにより、台風から低気圧に変わることで20ヘクトパスカルも発達する予報です。

 気象庁では、常に「台風から低気圧に変わった」という表現を使い、「台風から低気圧に衰えた」という表現は使わないのは、台風22号のようなことがあるからです。

 台風から変わった低気圧により、全国的に強い風が吹き、強い寒気が南下してきます。このため、「木枯らし1号」が吹くかもしれません。

10月30日12時追記:気象庁は、10月30日昼前に東京地方と近畿地方で「木枯らし1号」が吹いたと発表しました。東京地方は昨年より10日早く、近畿地方は昨年より1日遅い「木枯らし1号」です。

木枯らし1号

 気象庁の天気相談所では、東京地方における「木枯らし1号」は、下記の事項を基本として総合的に判断して発表しています。

 同様のことを、大阪管区気象台の天気相談所でも行っていますので、近畿地方でも「木枯らし1号」の発表があります。

 東京の「木枯らし1号」の基準

条件1 期間は10月半ばから11月末までの間に限る。

条件2 気圧配置が西高東低の冬型となって、季節風が吹くこと。

条件3 東京における風向が西北西~北である。  

条件3 東京における最大風速が、おおむね風力5(平均風速が毎秒8メートル)以上である。

 台風22号が温帯低気圧に変わると、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となり、寒気が南下して強い北西の季節風が吹きますので、条件1、条件2、条件3は満たします。

 問題は風速ですが、東京地方の10月30日(月)の天気予報は、「北西の風やや強く 23区西部でははじめ北西の風強く 晴れ」となっています。

 気象庁の天気予報で、「やや強い風」というを表現したときは、「毎秒10メートル以上15メートル未満の風」の意味です(表1)。

表1 気象庁が発表する風の表現
表1 気象庁が発表する風の表現

 東京地方の10月30日(月)の天気予報は、少なくとも8メートル以上の風が吹くという予報ですので、条件4を満たしています。

 「木枯らし1号」の条件をすべて満たす予報ですので、週明け早々に気象庁から冬のたよりである「木枯らし1号」の発表があると思われます。

 最近の「木枯らし1号」の発表日をみると、10月30日の発表であれば、早くもないし、遅くもない発表といえるでしょう(表2)。

表2 最近の「木枯らし1号」の発表日
表2 最近の「木枯らし1号」の発表日

 夏を代表する「台風」から、一転して、冬の訪れをつげる「木枯らし1号」です。

 東京都心部の10月30日(月)の朝の最低気温は14度ですが、日中は19度まで上がったあと、気温がどんどん下がってきます。そして、31日(火)朝の最低気温は9度まで下がります。

 荒っぽい季節変化ですので、体調管理には注意が必要です。

図、表1、表2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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