F1ベルギーGPを前に前半戦をおさらい。日本期待の角田はランキング13位
残念なことにF1日本グランプリは中止になってしまったが、8月29日(日)決勝のベルギーGPから「F1世界選手権」の2021年シーズンが再開する。
今季は全23戦が予定されている中の11戦を消化。F1日本GPなどがキャンセルとなり、2戦の開催地がまだ決まっていない状態だ。コロナ禍の混乱はあるものの、ヨーロッパではすでに有観客でグランプリが開催され、例年以上に激しいバトルが展開される今季のF1は非常に大きな関心を集めていると言える。
王者争いはハミルトンvsフェルスタッペン
下馬評通り、今季はメルセデスvsレッドブル・ホンダの一騎打ちとなった。しかも、ルイス・ハミルトン(メルセデス)vsマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の優勝争いという非常に分かりやすい構図が生まれており、それもファンの大きな関心を集めている一因だ。
特に日本ではフェルスタッペンのファンが急増。今年でホンダがF1から撤退することもあり、日本のファンの多くはフェルスタッペンを応援するムードだ。
しかしながら、王者ハミルトンは強しだ。開幕戦バーレーンGPで優勝すると、序盤の4戦で3勝をマーク。フェルスタッペンとのマッチレースを展開しながらもレース巧者、王者らしいパフォーマンスを見せつけてきた。
その流れを変えたのはフェルスタッペンのモナコGP優勝だ。ポールポジションのシャルル・ルクレール(フェラーリ)の脱落にも助けられたが、フェルスタッペンは自身初のモナコGP優勝で、今季2勝目をマーク。ここで一気に勢いづいた。
第5戦アゼルバイジャンGPでは不運なタイヤトラブルでフェルスタッペンが優勝を逃すが、セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)が移籍後の初優勝。フランスGP、地元レッドブルリンク(オーストリア)の連戦でもフェルスタッペンが優勝し、ホンダパワーユニットはモナコGPから5連勝を達成した。
シーズンの流れはフェルスタッペンが掌握したかに見えたところで、アクシデントは起きた。イギリスGPのトップ争いでハミルトンとフェルスタッペンが接触。フェルスタッペンは大クラッシュすることになる。ハミルトンはそのままイギリスGPを制したが、世界中から集中砲火を浴びることになったのだ。
続く第11戦ハンガリーGPではオープニングラップから多重クラッシュが発生。フェルスタッペンが巻き添えを食らってしまうことになった。赤旗中断後の再スタートでは首位のハミルトン以外がグリッドに並ばず、ピットでドライタイヤに交換する珍事も発生。首位を失ったハミルトンはオーバーテイクショーで3位まで追い上げた(繰り上がりで2位)。
フェルスタッペンはイギリスGPでのリタイア、ハンガリーGPの後退でランキング2位にドロップ。ハミルトンとのポイント差は8点となっている。
【ドライバーランキング】
1.ハミルトン(メルセデス)=195点(4勝)
2.フェルスタッペン(レッドブル)=187点(5勝)
3.ノリス(マクラーレン)=113点
4.ボッタス(メルセデス)=108点
5.ペレス(レッドブル)=104点(1勝)
【コンストラクターズランキング】
1.メルセデス=303点(4勝)
2.レッドブル・ホンダ=291点(6勝)
3.フェラーリ=163点
4.マクラーレン=163点
5.アルピーヌ・ルノー=77点(1勝)
※第11戦終了時点
角田はランキング13位
今季は日本人ドライバー、角田裕毅(つのだ・ゆうき)が参戦していることもあり、日本でもF1への関心が高い。7年ぶりの日本人F1ドライバー登場であり、特にシーズン開幕前の注目度の高さは過去に例がないほどの関心を集めていたと言える。
というのも事前のテストで堂々の2番手タイムをマークしたからだ。英語を流暢に話し、ルーキーながらも堂々とF1の世界で立ち振る舞う姿がSNSなどで紹介されると、ありとあらゆるメディアが角田の存在に飛びついた。
開幕戦バーレーンGPは度肝を抜く走りで9位完走。しかし、第2戦エミリア・ロマーニャGP では予選中に単独クラッシュを喫するなど、攻めすぎる姿勢が災いし、第7戦アゼルバイジャンGPまで無得点のレースが続いていた。
序盤戦のスランプを改善するため、角田は生活拠点をレッドブルのファクトリーがあるイギリスからチーム「アルファタウリ」のホーム、イタリアに移した。チームの近くで暮らし、エンジニアと多く時間を過ごすことにより、角田は移住したことによる良い効果を感じているようだ。苦戦続きで崖っぷちと見られていたが、アゼルバイジャンGP以降は入賞し、ポイントを獲得するレースも多く、ハンガリーGPでは自己最高位の6位入賞を果たした。
過去の日本人F1ドライバーでルーキーイヤーの最上位は中嶋悟(1987年)の4位。まだまだそこには届かないが1987年当時はホンダのターボエンジンのアドバンテージも大きかっただけに、決して最強クラスのマシンに乗っているわけではない角田は健闘していると言っても良いだろう。
サマーブレイク明けにやってくるのはスパ・フランコルシャンサーキットでのベルギーGP。ここは昨年、角田がFIA F2でポールポジションから優勝を飾ったコース。自身の評価を確実なものにしたコースでの活躍が期待される。
残念ながら日本グランプリの凱旋レースは実現できなかったが、日本のF1を背負う希望として後半戦、光り輝く存在になっていくのではないだろうか?
刺激的なスピードは見納め
今季の残りレースがどれだけ開催されるかはまだ不透明な部分があるものの、接戦のチャンピオン争いを含め、後半戦は要注目のレースが続く。
壁のようにそびえたたつ急坂にあるコーナー、オー・ルージュを持つスパ・フランコルシャンでの第12戦ベルギーGP、フェルスタッペンの地元であり新設計のサーキットであるザントフールトでの第13戦オランダGP、予選からトーを使い合う激しいスリップストリーム合戦も魅力のモンツァでの第14戦イタリアGPなど、ヨーロッパの名物コースでのレースが続く。
速度域の高いこういったコースで、ハイパワーかつハイダウンフォースのF1マシンの刺激的な走りは今年が見納めとなる。来季からは後方乱気流を生み出すボディワークが大幅に禁止された新車両規定のマシンとなる。ラップタイムは3秒以上遅くなると言われており、速さよりもオーバーテイクの機会を増やしていこうというコンセプトのもと作られたマシンになる。
年間予算の制限もあり、チーム間の差が縮まる事で来季以降はより接近戦が見られるようになると期待されているが、開発の自由度が高い現行レギュレーションのマシンでカッ飛んでいくF1の走りは魅力的だ。
ただ、現行規定はチーム間の差が大きいのが難点。角田らが乗るアルファタウリなどのプライベーターが後半戦で急激に浮上するとは考えづらいが、特に来季以降はドライバーの実力という部分が大きくクローズアップされるので、マシンやチームの実力以上の結果を残すドライバーがいるかも楽しみにしたいところ。
新レギュレーション下の時代を担うと考えられるランド・ノリス(マクラーレン)の初優勝にも期待したいところだし、メルセデス昇格かどうなのか人生が揺れ動く可能性大のジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)、ハンガリーGP で初優勝を果たしたエステバン・オコン(アルピーヌ)ら若手のパフォーマンスにも注目だ。
また、今季をもってホンダがF1活動を終了させるので、その締めくくりでチャンピオンを獲得できるのかどうなのか、クライマックスは大盛り上がりになること間違いなしだ。キーになってくるのはベルギーGP、オランダGP、イタリアGPの直近3連戦。フェルスタッペンが勝ったことがないコースばかりとなるが、シーズン終盤戦に備えるためにもここを全て勝ちたいはずだ。ホンダの最後の大仕事に期待したい。
【2021年残りのレース】
第12戦・ベルギーGP(8月29日)
第13戦・オランダGP(9月5日)
第14戦・イタリアGP(9月12日)
第15戦・ロシアGP(9月26日)
第16戦・トルコGP(10月3日)
第17戦 (未定)
第18戦・アメリカGP(10月24 日)
第19戦・メキシコGP(10月31日)
第20戦・ブラジルGP(11月7日)
第21戦 (未定)
第22戦・サウジアラビアGP(12月5日)
第23戦・アブダビGP(12月12日)
※2021年8月26日時点、日付は決勝レース日