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故郷フィラデルフィアのTVが報じた「劣勢が予想されるフルトン」

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
撮影:山口裕朗

 井上尚弥との決戦を控えたWBC/WBOスーパーバンタム級チャンピオンについて、ステファン・フルトン・ジュニアの故郷で放送されている「NBC 10 Philadelphia」が、短いニュースを報じた。試合の12日前のことだ。

 ニュース番組内でオンエアーされたのは、1ラウンドにも満たない短さだった。だが、フルトンの練習風景と共に、本人のコメントも拾っていた。

 「犯罪、ドラッグ、暴力に囲まれて育ったフルトンだが、ボクシングによって劣悪な環境から脱することができた。

 彼は言う。

 『フィラデルフィア出身のボクサーは、勝利への執念、メンタルが他の地域で育った選手と違う』と。

 21戦全勝のフルトンは、WBCとWBOの統一スーパーバンタム級チャンピオンだが、今回、キャリアで一番タフな試合を迎える。"不利"の予想を立てられながらも、日本へ乗り込むのだ。

 『どんなことを言われても気にしない。俺はタイトルを防衛するために日本に行くんだ。歴史を作ってやる!』。

 フルトンの言葉は、正鵠を射ている。"モンスター"と呼ばれるナオヤ・イノウエに勝てば、パウンド・フォー・パウンドにも名を連ねることになるだろう。負け犬だと思われている男が勝利すれば、まさしく歴史を作ることになる」

 そんな内容だった。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 確かにフルトンは、米メディアがパウンド・フォー・パウンド・ランキングに名を挙げる選手ではない。

 2021年1月23日にWBOスーパーバンタム級タイトルを奪取したフルトンは、次戦でWBC同級チャンピオン、ブランドン・フィゲロアとの統一戦が組まれた。

 この時、フィゲロアのファイトマネーが100万ドルだったのに対し、フルトンは半分の50万ドル。PPVの売り上げもWBC王者は55%を受け取る契約で、彼は45%で合意した。結局、フィゲロアの稼ぎはトータルで250万ドル、フルトンは100万ドルと水を空けられている。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 フィゲロアに判定勝ちして2冠チャンプとなり、2022年6月4日にダニエル・ローマンの挑戦を受けた折にも、ファイトマネーは上がらず。PPVの取り分は60%に引き上げられたが、受け取った総額はフィゲロア戦と同程度だったと報じられている。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「歴史を作る」という言葉の裏には、ジャパニーズ・モンスターに勝つことで、これまでに無い評価を得てみせる! というフルトンの希望が窺える。が、筆者は井上尚弥のKO勝ちと見る。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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