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西山朋佳女流三冠(26)渡部愛女流三段(28)七番勝負進出!第1期ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月9日。第1期ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦、準決勝の2局がおこなわれました。結果は以下の通りです。

里見香奈女流四冠●-○渡部愛女流三段

西山朋佳女流三冠○-●加藤圭女流二段

 初代白玲の座を争う七番勝負には、西山朋佳女流三冠と渡部愛女流三段が進出しました。

西山女流三冠、堂々の勝利

 現在の女流棋界は里見女流四冠と西山女流三冠が「2強」と呼ばれています。

 七番勝負で初代白玲の座を争うのはその両者と予想した方は多かったと思われます。

 ▲加藤女流二段-△西山女流三冠戦は東京・将棋会館でおこなわれました。両者は初手合です。

 西山女流三冠は四間飛車。対して加藤女流二段はまずエルモ囲いに構え、のちにトラック囲いにスイッチしました。

 西山女流三冠は桂得の戦果をあげ、相手の飛角を抑え込みにかかります。少しずつポイントを稼いだあと、飛車を切って一気に決めにいきました。

 ここまで快進撃を続けた加藤女流二段も粘る余地がなくなり、最後は西山女流三冠が加藤玉を詰ませて勝ちました。

 終局時刻は14時18分。総手数は112手。七番勝負進出の本命の一人と見られた西山女流三冠が、着実に歩みを進めました。

渡部愛女流三段、二転三転の大熱戦を制する

 ▲渡部女流三段-△里見女流四冠戦は大阪・関西将棋会館でおこなわれました。両者は過去に女流王位戦五番勝負を2期続けて戦うなどして、通算成績は里見6勝、渡部4勝です。

 本局、里見女流四冠は中飛車。対して渡部女流三段は居飛車で銀2枚を中段に押し上げる作戦です。

 里見女流四冠が中央から動いたあと、渡部女流三段は飛車先から動いて反撃。と金を作り、香得の成果を得ます。中盤でリードを奪ったのは渡部女流三段でした。

 しかし中終盤の追い込みにかけては天下一品の里見女流四冠。二枚飛車で横から渡部玉を攻める形をつくり、勝負に持ち込んでいきます。そしてきわどい終盤戦となりました。

 一手を争う競り合いの中、まず抜け出したのは里見女流四冠でした。コンピュータ将棋ソフトが示す評価値の上では、勝勢に立ちます。しかし両者秒読みの中の実戦では、もちろん何が起こるかわかりません。「指運」(ゆびうん)とも思われる情勢の中、きわどい攻防が続きました。

 106手目。里見女流四冠は銀を打って渡部玉に迫ります。結果的にはこの手が疑問だったか。渡部陣は歩1枚で二枚飛車の利きを一時的にしのぐ形ができ、速度が逆転しました。

 渡部玉は絶対に詰まない形となって、あとは詰めろの連続で里見玉を寄せきれば勝ちです。両者ともに2時間の持ち時間を使い切って、一手60秒未満で指す最後の攻防。渡部女流三段は誤らず、ついに里見玉を寄せきりました。

 終局時刻は15時0分。総手数は123手。多くの方の目には、里見女流四冠が敗れ去るのは意外な結果と映るかもしれません。しかし「2強」に続く女流棋士もハイレベルな中で競い合っています。渡部女流三段の七番勝負進出も、決して「番狂わせ」というわけではありません。

 かくして第1期白玲戦七番勝負は西山朋佳女流三冠と渡部愛女流三段が頂点を争うことになりました。第1局は9月11日、東京都港区「グランドニッコー東京 台場」でおこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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