【名古屋市】「稽古を通して学んだことが寺の取組みに通じている」禅寺の副住職が語る合気道と向き合う意味
合気道は精神修行
今回、取材に応じていただいたのは、副住職の髙岡慈寛(たかおかじかん)さん(以下、慈寛さん)。「『護身術』として紹介されることも多い合気道ですが、私は『精神修行』と捉えています」大学時代から始めた合気道から学んだことがお寺の取り組みに通じているのだとか。詳しいお話を聞かせていただきました。
コロナ禍に帰国が困難な者を救った禅寺「相生山徳林寺(あいおいやまとくりんじ)」
横浜市鶴見区に位置する曹洞宗の大本山「總持寺(そうじじ)」にゆかりを持ち、100年以上の歴史を持つ「相生山徳林寺(あいおいやまとくりんじ)」
日本に滞在する外国人を支援する団体には知られたお寺で、それらの団体から多くの相談が寄せられ、これまで生活に困窮するたくさんの外国人を受け入れてきました。今回のコロナ禍においては、失業し、住むところを失った状態で帰国の機会を待つベトナム人の駆け込み寺として寝泊まりできる場所と食料を無償で提供したのだそうです。
「私の父である現住職が博愛の心でベトナムの人たちを支援したのですが、こうした心というのは湧き出てくるもので、理屈とか効率的、合理的といった観点からは決して生じないものです。そして、こうした心が湧き出てくる状態というのは平常心である時だと感じています。心が乱れていては、こうした心境にはなれませんよね。この平常心を養うことができるのが合気道だと捉えており、寺の活動を受け継ぎ高めていくことに通ずると考えています」(慈寛さん)なるほど、「平常心」を養うことこそが、お寺の取り組みに通ずるものだったのですね。
合気道の稽古を通して自分の心の乱れを整える
「合気道の稽古は型稽古です。合気道にはいくつもの型があり、二人一組となってひたすら型の稽古をするものです。ただ、いくら型稽古といえども強い人と組む時はやはり怖いもので、その怖さが平常心を奪います。心が乱れた状態で技をかけると変に力んだりして姿勢が乱れ、技が奇麗にかかりません。すると、技をかけられた方も嫌な顔をしたり苦悶の表情を浮かべたりします。それを見て、自分の心の状態をかえりみ、その乱れに気づいて修正していくのです」(慈寛さん)相手がいるということが大切なのだそうで、座禅のように一人で修行して悟ったような気分になるも、そこに他人が登場するととたんに心が乱れてダメダメになるというのは、人との関わりを大切にするお寺においてはあるまじきことであると。
師匠の看板を借りて
相生山徳林寺の合気道道場は、三重県に本拠地を置く合気道神武館の支部道場であり、「そこまでやる気があるのだったら自分の看板を貸してもいい」と言ってくれた慈寛さんの師匠の看板を借りて、およそ1年前に開設しました。稽古が行われるのは毎週水曜日と土曜日の午後6時から7時までの1時間。女性や小中学生も通っています。
合気道を、他人と関わることで自分の心を整える武道と捉えると、この心を整えるという点で、禅寺と相性が良いと言えます。博愛の心は一滴の潤いを与えてくれるもの。そうした心を持った人が多ければ、余計な争いも減るのでしょう。また、老若男女、みなそれぞれの生活の中で緊張したり心配したりと、平常心を保つことが難しい場面に遭遇することも多いと思いますが、そんな時でも平常心でいることができれば、後になって自分の言動を後悔したりするといったことも少なくなりそうです。定期的にこうした場に参加して、自分の心の状態を客観視する習慣を身につけておくのも良いかもしれません。
相生山徳林寺では、老若男女問わず稽古の見学や体験を随時受け付けているそうです。初心者も大歓迎とのことなので、興味がある方は気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
施設情報
施設名:相生山徳林寺
住所:名古屋市天白区天白町野並相生28-341
TEL:052-896-1606
公式サイト:外部リンク