Yahoo!ニュース

Z世代は結婚を面倒くさがるワケ。「法律婚したくない」派は婚活現場にも…

植草美幸結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸
(写真:アフロ)

■Z世代の約6割が「一生独身でも気にならない」と回答した調査が話題に

ビッグローブ株式会社(東京都品川区)のオウンドメディア『あしたメディア by BIGLOBE』が、全国の18~69歳の男女1000人(うち、18~24歳のZ世代350人)を対象に「若年層の意識調査」を発表しました。

調査によると、Z世代の47.4%が「結婚(法律上の結婚)したいと思わない」、60.6%のZ世代が「一生独身でも気にならない」と回答したとのことです。

■「結婚したい、結婚したくない」の揺れ動きを繰り返すもの

改めて、結婚への関心の薄さが浮き彫りとなる調査結果です。結婚年齢や生涯未婚率の上昇が、出生数にも影響を与えていると考えられているため、若年層の結婚への関心は、大人世代も他人事ではありません。

「婚姻率が下がった」「デート経験がない男女が増加」という報道や調査情報が出るたびに、若者があえて結婚しない選択をするようになったと思われるかもしれません。しかし、現場で20年近く婚活の動向を追っていると、多くの人は「結婚したい、結婚したくない」の揺れ動きを何度も何度も繰り返し、結婚相談所の門を叩きます。

20代前半では「いつかは結婚したいけれど、キャリアを積みたいから今じゃない」、20代後半で結婚ラッシュが来ると「そろそろ結婚したい」「いやいや、まだ遊びたい」、30歳前後で仕事が楽しくなってくると「無理して結婚しなくてもいい、いい人がいれば結婚してもいい」、35歳を迎えると「やっぱり結婚したい、一生独身かもしれない」と不安になる方が多数派です。

結婚相談所に入る方でさえも、誰もがずーっと強い結婚願望を持ち続けているかというとそうではないのです。コロナ禍になって、外食禁止・リモート勤務となり、急に家庭への憧れを持った方も多いでしょう。

今はまだ結婚する気がなくても、いつでも「結婚できる自分」になっておくことは、どなたにとってもマイナスにはなりませんし、人間的な成長につながると考えます。

■なぜZ世代は、結婚に関心が薄いのか? 時代背景を読む

”コロナ新卒”の世代は現在26歳で、ちらほらと結婚相談所でもお見受けするようになりました。不安感から早期に婚活を意識する方が増加傾向です。

今回Z世代とされているのは18〜24歳で、さらに年下ですから、中高生~大学時代をコロナ禍で過ごした世代で、コロナ禍による学生時代の人間関係、社会的な距離感が背景となっています。

今回の調査で、25〜29歳の41.6%、Z世代の39.7%が「選択的夫婦別姓が制度化されたら結婚したい」、52.6%が「子供はほしくない」と回答しているそうです。子育ての負担、親や親戚との付き合い、苗字が変わること、戸籍制度などが面倒で、よほどのメリットがなければ避けたいと感じていることが伺えます。

一方で、「法律婚にはこだわらないがパートナーと暮らしたい」と回答したZ世代は半数以上(51%)もいたそうですから、好きな人と一緒にいたい、楽しくデートしたいという憧れは、昔の人と変わらず持っているのです。つまり、入籍や婚姻という、昔の“イエ制度”的な古臭さは重荷だけれど、デートや同棲などの楽しい恋愛や、面倒くさくないパートナーシップは欲している人が大半です。

離婚率は上がっているので身近な人や著名人、親世代が離婚したり、夫婦仲が悪い人たちを見聞きすることで、面倒な結婚をして、さらに面倒な離婚をするなら、良いところ取りの気軽な関係の方がいい、好きだから一緒にいるというシンプルな関係ならばいい、と考えるのでしょう。

コロナ以外の時代背景でいえば、70%以上の家庭が共働きですから、両親は忙しく、子供は一人っ子が増え、習い事は加熱。SNSの発展やコロナの影響で子供たちは同世代の限られた人間関係の中に暮らすので、趣味や価値観の似たコミュニティとしか関わりたくない、そうでない関係は知らないからこそとっつきにくく、だから親しくないお相手の親族とまで深く関わらなくてはいけない結婚は面倒くさいと感じるのは自然でしょう。

決して「これだから最近の若者は」と言いたいのではなく、実はこれは自然な流れであり、新しい風だと考えています。

■「法律婚を選ばない」のなら、自分たちなりの区切りをつけて

なぜなら、都心部のより女性の社会進出が進んだエリアの婚活現場では、Z世代より上の世代でも、「法律婚にはこだわらない」「選択的夫婦別姓を希望する」という人がいらっしゃいます。

私は結婚相談所の代表として特別なコースを受け持っているので、海外育ちの会員様が2〜3割もいらっしゃり、その影響で先進的な結婚のスタイルを見聞きするのです。具体的には、女性が社会進出し、医師や研究者などになると記名の論文を書いたりしますが、入籍で名前を変えると面倒なことが多くなります。そうなると、まさに「名前を変えてまで入籍したくない」「メリットがあるなら入籍してもいい」という今回のZ世代の調査と近しい意見をお聞きします。

一般的な婚活現場では、双方の結婚の意志が固まったらすぐに入籍するのが一般的ですが、彼ら彼女らは、 2~3年一緒に過ごしてから必要に応じて、または、妊娠・出産・子育てなどで不便を感じたら入籍すればいい、という判断をすることがあります。

実際の例では、私の結婚相談所で、海外駐在員の女性と、国内外に転勤の可能性がある会社員の男性が33歳同士で事実婚を選択しました。お互い特殊な環境で、仕事に熱意があったので、結婚して同居・妊娠・出産をするのは難しい、古い結婚のカタチになぞらえると乗り越えることが多すぎると思ったそうです。それでも不安定な時代に、お互いが自分らしくいられるパートナーが欲しい、それにピッタリの相手を見つけたいと考えていたので、いつか不便が出れば法律婚を考えようと誓い合いました。

最後に、法律婚を選ばないパートナーシップを結ぶ方々にアドバイスしていることをお伝えしましょう。法律婚にはこだわらないからこそ、いつ法律婚をしてもいい前提で、ご両親、もしくは友人など信頼できる人たちに宣言するなど、自分たちなりの区切りをつけることが大事です。入籍をせずに結婚パーティーをするのもよいでしょう。いわば、「婚約」の期間をずっと続けていくのです。

一般的な事実婚は、くっつくのも簡単な分、別れるのも簡単になりやすいもの。ただ気軽な恋愛関係でもいいのですが、結局は膝を突き合わせて向き合うことができなければ、関係が長く続かず、ただの恋愛ごっこや、同居人の友達と変わりません。

これからは男女ともお互いが働き、お互いが支え合えれば、どんな形でもいいと思う方が増えていくでしょう。

結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸

千葉県出身。青山学院大学卒業。結婚相談所マリーミー代表、恋愛・婚活アドバイザー。1995年に、アパレル業界に特化した人材派遣会社、株式会社エムエスピーを創業。そこで培ったコーディネート力を活かし、2009年、結婚相談所マリーミーをスタート。以後10年以上にわたり年間約1,000組の恋愛・結婚に対するアドバイスを行い、業界平均15%と言われる成婚率において、約80%の成婚率(※)を記録している。『結婚の技術』『婚活リベンジ!』など、著書は計14冊。メディア出演の他、地方自治体をはじめとした講演依頼も多数。(※) 成婚退会者数÷全体退会者数で算出。

植草美幸の最近の記事