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アンガールズ田中さん「妻の親の職業を知らない」は、婚活ではあり得ない?

植草美幸結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸
(写真:イメージマート)

お笑いコンビ「アンガールズ」の田中さん(48歳)が、義理の親の職業を知らなかったことが話題になっています。テレビ朝日の番組「アメトーーク!」で「親が学校の先生芸人」にゲスト出演した田中さんは、収録前に妻から「私の親、先生だよ」と告げられて初めて知り、「職業まで聞かなかった」と語ったとのことです。

田中さんは、1月に30代の一般女性と結婚。収録から放送まで時差があるとしても、結婚して半年以上経っているのに、親の職業を知らない…というのは確かにユニークです。

田中さんはプロポーズのエピソードでも、「彼女の返事を聞く前に、間違って指輪をはめてしまった」といううっかりエピソードを明かしていらっしゃいますから、そんな彼の微笑ましい部分をフォローできる優しい奥様なのでしょう。そんな当人同士の相性は素晴らしいものです。

今回は、この件をきっかけに、婚活現場でのご両親とのやりとりや考え方についてお伝えします。

◆親の職業や家柄は、結婚にどんな影響がある?

私の結婚相談所では、真剣交際から成婚までの間に、必ずご両親に結婚のご挨拶をするように勧めています。コロナ禍でも、玄関先やオンラインでもいいので、対面するように勧めていました。

結婚の挨拶は準備が7割。その場で何を話すか考えるのではなく、当日までに「結婚への準備」「結婚式について」「結婚後どうしていくのか」などを2人の意見として答えられるようにします。そのためには、自身の両親についてお互いがリサーチして、「うちの両親はこういう職業でこういう性格・好みだから、こんな風に伝えてもらえるとうれしいな」というふうに、準備することになります。

「親の職業」については、「自分は旧家の出でもないし、そういうのは血筋が由緒正しい方との縁談に限ったものでは?」と大げさに感じる方もいるかもしれません。しかし、 両親や親族の職業を含めた家柄は、結婚前に知っておいたほうがよいものです。

家柄については様々な考え方があり、ご両親や親族からお相手が受けている影響は大きいもの。そして、後から考え方を変えることも難しいので、ご両親や親族を無視して無理にマッチングしても、最終的に問題が再燃して潰れてしまうことがあるからです。

よくあるのが、医師家系のお母様が医師の息子を育て上げるのに苦労したので、「希望通りのお相手でなければ認めない」とおっしゃる事例です。具体的には、「医者になるために苦労してこの子を育てたのですから、もっと条件のいい女性でないと認められません。今からでも破談にしてください」という話をされる親御さんがいます。また理由として、お相手自身のことだけではなく、そのご両親について指摘されることもあります。例えば、「ご両親が健在ではないので、結婚式の見栄えが悪い」とか、「母親一人の元で育ったことに抵抗がある」など、差別的なことをおっしゃられるケースもあります。


逆に、お相手のご両親や親族の考え方を聞いたり推測して、当人が辞退する場合もあります。ある事例では、女性は良家のお嬢様で、お相手男性に士業の方を希望されていたので、システム上弁護士の男性とお見合いが成立しました。しかし、その男性は、自身のお父様が中学校までしか出ておられず、家柄を含めた考え方や価値観が合わないと考え、「大変ありがたいお話ですが、家柄が釣り合いません」と辞退されました。そういった相性がよくない結婚をすると、自分だけでなく、親もつらい思いをする場合があることを仕事柄知っていたのかもしれません。逆に言うと、家柄の相性がよければ、そういった不要な苦労を避けられる場合が多くあります。

結婚すると最初の1年目は、お互いの価値観の擦り合わせに忙しいもの。婚活中や交際中にどんなに話し合ったとしても、いざ結婚して同居をしてみると、お互いが「当たり前」だと思っていたことに、たくさんの違いがあることでしょう。私の結婚相談所では、結婚後にその苦労が少なくて済むように、また、スピード結婚でもスムーズに進めるように、文化が似ている、もしくは、文化が違っても擦り合わせやすい相性かどうかという点を考慮してマッチングしています。

◆「相手の親」を知ることは、面倒なようで実は効率的

ある婚活女性は、お相手のご両親に会うことなく急いで結婚し、1年後の妊娠中に離婚しました。彼女は薬剤師でしっかりと稼ぎがあり、相手の男性は父親の家業を引き継いだ社長でした。彼からの猛アタックで交際に進みましたが、プロの私の目から見ると相性はイマイチ。「もう少し違うお相手とも会ってみたら?」と別の方も薦めましたが、「毎日、仕事帰りに迎えに来てくれる。クマさんみたいでかわいい。私にだけ優しく、愛されている実感がある」と真剣交際に進みました。

ご両親に結婚の挨拶をする段階になると、ひとり親だった彼のお父様が「今は忙しい」と言い、特例として一度も会うことなく成婚しました。その後、実は彼のお父様が住む実家はゴミ屋敷で、妊娠中に改めて挨拶に伺った際も玄関先で帰されたり、新婚旅行先で彼が添乗員やホテルのスタッフなどに対してキレる性格だとわかったりと、様々なトラブルが発生してしまったのです……。

親御さんとの交流がまったくないまま結婚し、当人の相性だけでうまくいくご夫婦ももちろんいらっしゃることでしょう。成人同士ですから、自分と相手の相性が良ければいい、もし反対されても押し切ってでも結婚する、という覚悟は否定しません。

でも、結婚の準備を進める中で、まずは両親・きょうだい・親戚と関わることで、お互いが育ってきた価値観や文化を知ることは、面倒なようで実は効率的です。実際にお会いしたときの直観的な調和や違和感は、意外にも鋭いものです。

調整が難しいギャップがあった場合には、身を引いた方がいいケースもあります。破談や離婚の際、「思い返すと違和感があった。相手のバックグラウンドを知る時間がなく、焦って結婚してしまった」と語る人は少なくありません。

離婚の理由として、「価値観の違い」がよく挙がりますが、それは、「今まで培ってきた相手の文化を受け入れられなかった」「理解してあげられなかった」ということ。結婚前に相手の文化や価値観をよく見極めるために、婚活では、ご両親との相性をできるかぎり確かめておいて損はありません。


結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸

千葉県出身。青山学院大学卒業。結婚相談所マリーミー代表、恋愛・婚活アドバイザー。1995年に、アパレル業界に特化した人材派遣会社、株式会社エムエスピーを創業。そこで培ったコーディネート力を活かし、2009年、結婚相談所マリーミーをスタート。以後10年以上にわたり年間約1,000組の恋愛・結婚に対するアドバイスを行い、業界平均15%と言われる成婚率において、約80%の成婚率(※)を記録している。『結婚の技術』『婚活リベンジ!』など、著書は計14冊。メディア出演の他、地方自治体をはじめとした講演依頼も多数。(※) 成婚退会者数÷全体退会者数で算出。

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