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春のような移動性高気圧

饒村曜気象予報士
地上天気図(平成29年9月9日9時、気象庁ホームページより)

中国大陸から東進してきた高気圧によって、日本列島がほぼ晴天となりました。この高気圧を移動性高気圧といいますが、移動性とは、「ほとんど動きのない」に対する言葉です。

秋の移動性高気圧と春の移動性高気圧の違い

 秋だけでなく、春も移動性高気圧が日本付近を通過しますが、秋と春では少し状況に違いがあります。

 春の移動性高気圧は、発達しながら通過することが多いため、日本付近は高気圧の中心より西側の領域(後面)に入る期間が長くなります。高気圧の後面は、南からの暖かくて湿った空気が流れ込みやすく、また中国からの細かい黄砂の塵がやってくることから、視程が悪くなります。春霞という言葉があるように、空が霞むことが希ではありません。今年のゴールデンウィーク後半は、北緯35度を発達しながら東進する移動性高気圧により、ほぼ全国的に晴天となりました。

 これに対し、秋の移動性高気圧は東に進むにつれて衰弱したり、中心が停滞しがちであるため、日本付近は、北方からの澄んだ寒気が流れ込みやすい高気圧の中心より東側の領域(前面)に入る期間が長くなります。また、中国大陸も湿っているため、偏西風等にのってくる塵が少ないことから、視程が良くなります。このため、「天高く馬肥ゆる秋」と言われるように、天が高くなったように感じます。

 しかし、9月8日から11日にかけての移動性高気圧の中心気圧は、8日9時1012ヘクトパスカル、9日9時が1014ヘクトパスカルで、10日9時の予想が1018ヘクトパスカル、11日9時の予想が1020ヘクトパスカルと発達しています。

つまり、今回の移動性高気圧は、春の移動性高気圧のように、高気圧の後面に入る期間が長くなるタイプです。暖気が入りやすく、天高くとは感じられなかったと思われます。

高気圧のコースによる差

 移動性高気圧がきたら概ね晴れますが、どこでも晴れるというわけではありません。

 移動性高気圧が、北緯35度線を西から東に進む場合は全国的に晴天となりますが(図1の丸数字の3)、これより南を東進する場合、晴天は関東から西の地方だけで、これより北を東進する場合は北日本だけが晴天です。日本海北部から関東地方に進む場合は、全国的に晴天ですが気温は上がらず肌寒い日となります。

図1 移動性高気圧の動きと天気変化
図1 移動性高気圧の動きと天気変化

移動性高気圧のあとは低気圧の雨

 大きな移動性高気圧の通過後は低気圧の接近・通過で曇りや雨の天気となり、その後、再び移動性高気圧が通過して晴れるというように、天気が周期変化します。

 このため、春と秋の天気は、昔から移ろいやすい人の心に例えられています。

 例えば、「男心と秋の空(春の空)、女心と春の空(秋の空)」という言葉があります。移り変わりながら冷たくなるのが男心で、移り変わりながら熱くなるのが女心、あるいは、その逆ということでしょうか。

図2 予想天気図(平成29年9月11日9時の予想)
図2 予想天気図(平成29年9月11日9時の予想)

 週明けは黄海と東シナ海にある前線を伴った低気圧が接近・通過しますので、全国的に雨に注意です(図2)。

 また、台風18号が発達しながら沖縄の南海上に進んできますので、今のところ、西北西進を続ける見込みですが、台風の進路によっては、前線を刺激し、大雨の可能性がありますので、今後の台風情報等にも注意が必要です。

図1の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100、オーム社。

図2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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