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北緯35度を東進する移動性高気圧は、ほぼ全国的に晴天

饒村曜気象予報士
鯉のぼり(ペイレスイメージズ/アフロ)

春や秋には、中国大陸から東進してきた高気圧が、日本付近を3から4日ごとという周期で通過します。

この高気圧を移動性高気圧といいますが、移動性とは、「ほとんど動きのない」に対する言葉です。

今年のゴールデンウィークの移動性高気圧

今年のゴールデンウィークは、5月1日に朝鮮半島にあった、1020ヘクトパスカルの小さな高気圧は、ゆっくりと南東進のち東進して1028ヘクトパスカルの大きな高気圧になっています。

図1 地上天気図(5月1日9時)と予想天気図(4日21時の予想)
図1 地上天気図(5月1日9時)と予想天気図(4日21時の予想)

このため、高気圧の南東側にある南西諸島では曇や雨となりましたが、ほぼ全国的に晴れの天気となっています。極端な暑さもなく、爽やかな行楽日和が続いています。

春の移動性高気圧と秋の移動性高気圧の違い

春だけでなく、秋も移動性高気圧が日本付近を通過しますが、春と秋では少し状況に違いがあります。春の移動性高気圧は、今年のゴールデンウィークのように、発達しながら通過することが多いため、日本付近は高気圧の中心より西側の領域(後面)に入る期間が長くなります。

高気圧の後面は、南からの暖かくて湿った空気が流れ込みやすく、また中国からの細かい黄砂の塵がやってくることから、視程が悪くなります。

春霞という言葉があるように、空が霞むことが希ではありません。

これに対し、秋の移動性高気圧は東に進むにつれて衰弱したり、中心が停滞しがちであるため、日本付近は、北方からの澄んだ寒気が流れ込みやすい高気圧の中心より東側の領域(前面)に入る期間が長くなります。また、中国大陸も湿っているため、偏西風等にのってくる塵が少ないことから、視程が良くなります。このため、「天高く馬肥ゆる秋」と言われるように、天が高くなったように感じます。

高気圧のコースによる差

実際の気象は、これほど単純ではなく、移動性高気圧がどのようなコースを進むかによっても日本の天気は変わります。

移動性高気圧がきたら晴れとは単純ではありません。

移動性高気圧が、北緯35度線を西から東に進む場合は全国的に晴天となりますが(図2)、これより南を東進する場合、晴天は関東から西の地方だけで、これより北を東進する場合は北日本だけが晴天です。

日本海北部から関東地方に進む場合は、全国的に晴天ですが気温は上がらず肌寒い日となります。

今年のゴールデンウィークの移動性高気圧は、最初は南東進したため北から寒気が入りましたが、ほとんどが北緯35度線を西から東に進んでいます。

このため、ほぼ全国的に晴れの天気となり、行楽日和が続きました。

図2 移動性高気圧の動きと天気変化
図2 移動性高気圧の動きと天気変化

移動性高気圧のあとは

今年の5月2日は、立春から数えて88日目の「八十八夜」です。この時に摘むお茶は、昔から最高級のものとされてきました。また、お茶に関するイベントも、多くは「八十八夜」の日に行われます。

霜の心配がほとんどなくなり、明治45年(1912年)に発表された童謡「茶摘」では、「夏も近づく八十八夜」と歌われていますが、夏の気配が感じられるのが、八十八夜です。

中国大陸には停滞前線が現れていますので、ゴールデンウィーク最後の土日は全国的に雨や曇りの予報となっています。

東京の週間天気予報では、

6日(土)曇り(信頼度C)

7日(日)曇り時々晴れ(C)

8日(月)晴れ時々曇り(A)

9日(火)曇り(C)

10日(水)曇り一時雨(C)

となっています。

月曜日の晴れの予報の信頼度だけは高いのですが、土日の曇りの予報、火水の曇りや雨の予報の信頼度は低くなっています。

つまり、最新の天気予報に注意が必要という週間天気予報になっています。

大きな移動性高気圧の通過後は曇りや雨の天気となり、その後の走り梅雨を経て、やがて梅雨の季節になります。

図1の出典:気象庁ホームページ

図2の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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