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デトロイトで催される世界タイトルマッチ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Dennis Mosley/Salita Promotions

 6月3日、WBA/WBC/IBF/WBOミドル級王者、クラッサ・シールドがリングに上がる。2022年10月15日以来のリングとなる。シールドは、ロンドン、リオと2大会連続で五輪金メダリストとなり、プロでも無傷のまま3階級を制した。先の試合で、ミドル級でも4冠を統一した女子ボクシングの第一人者だ。目下、13戦全勝2KO。

 会場となるのはミシガン州デトロイト。NBAのピストンズとNHLレッドウィングスのホームであるリトル・シーザーズ・アリーナ。同州フリント出身のシールドにとっては、地元開催と呼んでいい。

 デトロイトから誕生した伝説の名チャンプ、トーマス・ハーンズも記者会見場に姿を見せた。

Dennis Mosley/Salita Promotions
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 シールドの相手は、2021年4月17日にWBAライトヘビー級/WBCヘビー級タイトルを獲得したハンナ・ガブリエルズ。ガブリエルズはこれまでに、WBAライトミドル、WBOウエルター&ライトミドルと4階級にわたってベルトを巻いた実力派だ。

 両者は2018年6月22日にも対戦し、シールドが判定勝ちを収めている。が、ガブリエルズは初回に右アッパーと左フックのコンビネーションでシールドをキャンバスに沈めた。シールドがプロ・アマ問わずノックダウンされたのは、この試合だけである。

 試合発表記者会見での両者の言葉をご紹介しよう。

Dennis Mosley/Salita Promotions
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 クラッサ・シールドは言った。

 「夢のような試合が実現したわ。フリントで生まれ育った私は、ピストンズの試合を見るために何度もアリーナに足を運んできた。ピストンズが優勝した時は祖母と一緒にテレビ観戦した。リトル・シーザーズ・アリーナでファンの前で戦えるなんて...プロになった時には想像も出来なかった。

 私はデトロイトの地で、家族や友人の前で過去に何度も戦っている。ハンナ・ガブリエルズは 6月3日に大変な苦痛を味わうことになる。それを証明するからみんな観に来てね。この世界で、リングで私を倒せる女性はいない。

Dennis Mosley/Salita Promotions
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 プロになってから、私は数々の難関を乗り越えてきた。ハンナ・ガブリエルズは最大の障壁だった。当時、私は2本のベルトを持ち、5勝0敗だった。ハンナ・ガブリエルズは18勝1敗で、強敵だった。ダメージの無いダウンだったので、カウントされた時は腹が立った。私はとても動揺し、そしてイライラして『彼女と、もっと戦いたい』って発言したの。すぐにでも再戦したかったわ。

 ダウンを喫した後、3-0の判定で勝利したけれど、今回はノックアウトを狙う。私は世界中を旅しながら、ハンナ・ガブリエルズよりもずっと大きな選手と戦って、トップに立っている。地元のファンに自分自身を証明するために勝つわよ」

Dennis Mosley/Salita Promotions
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 ハンナ・ガブリエルズも話した。

 「デトロイトに来られて、とても光栄です。人々が楽しんでくれるような戦いをお見せしたいと思います。私たちの2018年のファイトは素晴らしかったと記憶しています。接戦だったと思うし、私はクラッサの勝利に気分を害してはいません。彼女は女子ボクシングの顔であり、偉大な選手です。とても多くのことを成し遂げてきた人です。リングの上だけでなく、外でもプレッシャーに耐えてきましたね。彼女は自分の言葉に裏打ちされた自信を持っています。

 ただ2年前、クラッサが154パウンドのファイターとなった際、私がチャンピオンだったのに、何だかんだと理由をつけて私を避けたんですよ。だから今、私は160パウンドで彼女からベルトを奪うためにここにいます。

Dennis Mosley/Salita Promotions
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 私にとって、この試合は大きなものです。私の父はかつてボクシングをしていました。祖父はストリートファイターでした。曾祖父は、コスタリカに奴隷制度が残っていた時代に鉄道工事に従事していました。私は多くのものを背負い、コスタリカを代表してリングに上がります。自分の血に誇りを感じながら戦います」

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 自動車産業の衰退から、ゴーストタウン化が止まらないデトロイト。フォード、クライスラー、GMの本社が立ち並び、かつては米国産業をリードした。ジョー・ルイスや当地出身のハーンズが活躍することで、更に街は活気付いた。

 栄枯盛衰は世の常だが、彼女たちはモーターシティーに多少なりともボクシング熱気を取り戻せるか。

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 64歳となったハーンズは、6月3日のイベントをどのように見るのだろうか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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