大雨災害の不通区間、秋田県の奥羽本線に本日乗車してみた
先日の豪雨で大きな被害を受けた秋田市ですが、筆者は前から仕事の予定が入っていましたので、災害で不通になっている奥羽本線の区間(秋田-大曲間)に乗らなければなりませんでした。
昨晩は大阪に宿泊し、本日秋田県の横手市に向かうため、伊丹空港から飛行機で秋田へ飛び、空港バスで秋田駅に到着しました。
途中、水没した地域をバスが通れないため、一部区間で経路が変更になっていた以外は特に支障もなく秋田駅に到着しました。
秋田駅からは目的地の横手まで切符を買おうとすると、切符売り場にこのような看板が出ていました。
代行バスの案内です。
でも、通常電車で50分ほどの秋田駅から大曲駅まで、バスだと3時間もかかるようです。
ふと下の方に目をやると、
「大曲⇔秋田間をご利用の際は、こまち号をご利用ください。」
(乗車券または定期券のみでご利用いただけます。)
とあります。
秋田新幹線に振替乗車しているようです。
券売機の近くに係の方がいましたので、「特急券は要らないのですか?」と尋ねると、「はい、要りません。精算窓口で紙をもらって改札口を通ってください。」とのこと。
秋田→横手間の乗車券1340円を購入して新幹線の改札口を通りました。
これが精算窓口でもらった紙です。
業務連絡書(甲)と書かれています。
筆者はその内容に興味を持ちました。
連絡先:関係各駅 各カレチ(カレチとは乗客案内をする車掌長のことです。)
発行年月日:2023年7月22日 6時00分
発行者所属氏名印:職員の名前と印
連絡事項:本件所持のお客様は大雨被害による不通のため、こまち(秋田-大曲間)の便宜乗車対応をお願いします。
記事:許可者
奥羽本線の秋田-大曲間は新幹線と在来線が並走しています。
一見複線区間に見えますが、複線というのは上り線と下り線がそれぞれの線路を走る仕組みの線路ですが、新幹線と在来線が並走するこの区間は、それぞれの線路をそれぞれの列車が走る単線並列という仕組みになっていて、大雨で線路が大きな被害を受けたのは在来線の線路の方なので、もう片方の新幹線の線路には被害が少なく、新幹線だけが走れるのです。
だから、在来線の電車は運休ですが、新幹線は徐行区間はあるものの、ほぼ平常運転ということで、秋田⇔大曲間の乗車に限って「便宜乗車」という形で特急券無しで新幹線に乗車できるのです。
それにしても筆者が面白いなあと思ったのはこの業務連絡書。
こういうものを乗客に持たせて「はい、これで乗ってください。」とは、まるで昭和の時代のような印象を受けました。
なにしろ、同じ会社内であり、秋田-大曲というたったひと駅間だけの事ですから、お互いの駅で理解していれば済むと思うのですが、いちいち全員の乗客にこの紙を持たせているということは、いったいどういう意味があるのか。
「乗車券だけで本当に新幹線に乗っていいのだろうか?」という乗客の不安解消のためならともかく、わずか30分ほどの間に車掌さんがしっかりと車内検札に来て、乗車券とこの業務連絡書を所持していることをチェックしていましたし、大曲の駅に到着すると中間の新幹線改札口で駅員さんがこの紙を全員から回収していましたので、つまりは特急券を持っていないことの証明書のようなものだと考えられますが、自分の会社の中の連絡事項を乗客に託しているようで、なんとなく違和感を覚えたのであります。
途中、路盤が流された区間を徐行して通りましたが、足場が悪そうな場所で、重機を入れるために頭上の架線も撤去していました。隣の線路を新幹線が通る区間ですから工事もそう簡単ではないと思いますが、8月初旬の運転再開を目指しているようです。
大曲駅に到着した新幹線「こまち」からは百名以上の乗客が下りてきました。
ひと駅間ですが、地域需要がこれだけあるということにも驚かされました。
こちらは大曲駅を17時に出る列車代行バス。
秋田―大曲間は新幹線に乗れることを考えると、代行バスは運休している在来線の途中駅の乗降客用だと思いますが、土曜日で学校が休みだからでしょうか。バス2台で運行されていましたが、こちらはガラガラの状態で発車して行きました。
秋田、大曲の両駅には被災個所の写真が掲示されていました。
こういう写真があるとお客様も状況把握がしやすいですし、駅係員や乗務員などの案内、誘導もたいへんスムーズで、新幹線利用者と地元利用者という利用特性が違う乗客が混在する中で、筆者が見た限りでは全くトラブルもなく運行されていました。
ただ、この業務連絡書というのを何百枚もコピーしていちいち乗客に渡して車内検札、改札口で回収というハンドリングに少々驚いた次第です。
普通乗車券や定期券でそのまま新幹線に乗車できるということは、確認してはいませんが青春18切符でもおそらく乗れるのでしょう。
だとすれば若者の旅行で今だけの貴重な体験ができるかもしれませんね。
不通区間の1日も早い復旧を願っております。
※本文中に使用した写真はすべて筆者撮影のものです。