2017年バレンタインは松屋銀座に注目するべき3つの理由
バレンタインデー商戦
バレンタインデーに向けて、女性の方は誰にどのようなチョコレートを贈ろうか考えていますか。
反対に、男性の方は誰にどのようなチョコレートをもらえるか楽しみにしているでしょうか。
食の関連では、この時期はバレンタインデーが大きな商戦となっています。身近にあるコンビニエンスストアやスーパーマーケット、庶民的なケーキショップから本格的なパティスリーまで、どこもバレンタインデーをターゲットにしたチョコレート商品を販売しています。
ここ3年におけるバレンタインデーの商規模をみてみると、2014年が1080億円、2015年が1250億円、2016年が1340億円と堅調に伸びています。
サロン・デュ・ショコラ
バレンタインデーを見据えた世界規模となるチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ(Salon du chocolat)」も年々勢いを増しています。
東京会場に関しては、2003年に伊勢丹新宿店で始められてから認知が広がり、2015年にはより広い会場となる新宿NSビルへと場所を移し、そして15回目を迎える今年2017年には新宿NSビルの1.5倍もの広さを誇る有楽町の国際フォーラムで、2月2日から2月5日にかけて開催されています。
会場は広くなったものの、会場内は人で埋め付くされており、チョコレートに対する関心がますます高くなっている表れであると言ってよいでしょう。
百貨店のバレンタインデー
この日本のサロン・デュ・ショコラには、最初から伊勢丹新宿店が深く関わっていますが、バレンタインデーが年間チョコレート売上の3割を占めるだけあって、他の百貨店にとってもバレンタインデーは非常に重要な商戦です。
バレンタインデーには特別催事場を設けたり、様々なブランドを呼び寄せたり、個性溢れる商品を提供したりしています。
最大規模を誇る阪急うめだでは2014年に150ブランド1500商品ものチョコレート商品を販売しており、日本一の売上を誇るJR名古屋高島屋は2016年に18億円も売り上げているのです。
このように百貨店のバレンタインデーは商品数でも売上でも規模が大きいですが、中でも注目したいのが、松屋銀座です。
松屋銀座「7粒のきっかけ」
松屋銀座は「7粒のきっかけ」と題して、バレンタインデーに提供する商品を7つのカテゴリーに分けています。
- Creation
わたし好みを見つけるきっかけ。芸術的ともいえるガナッシュのハーモニーを。
- Premium Brands
ラグジュアリーな気分に浸るきっかけ。女心をつかむ、スターブランドの風格。
- Traditional
王道のセレクトで、想いを届けるきっかけ。愛されつづける、正統派のバレンタイン。
- BEAN TO BAR
知的に味わって、食通になるきっかけ。カカオと向き合う。ショコラティエの情熱。
- KAWAII
撮りたくなるルックス。趣味でつながるきっかけ。見た目で選んで、合言葉は「かわいい」!
- JAPAN
日本のよさに気づくきっかけ。ほっこり癒される、和スイーツがいろいろ。
- BAKE
新しいバレンタインのきっかけ。バターの香りで笑顔に、ティータイムのはじまり。
松屋銀座の限定商品
松屋銀座限定のブランドや商品は少なくありません。
「C.C.C.」と呼ばれる「チョコレートと愛好家の会」で殿堂入りを果たしたアルノー・ラ・エール氏のそば粉やパッションフルーツがマリアージュした「コフレ・アーウィッチ(ジョンヌ ソレイユ)」、および、クリオロの高級食材「マヌカハニー」入りチョコレート「マヌカハニー」は松屋銀座限定です。
注目ショコラティエであるクリストフ・ルッセル氏のチョコレートは関東では松屋銀座だけ、フルーツの老舗である千疋屋総本店(他系列の千疋屋は除く)はチョコレート商品自体が初めてで、百貨店では松屋銀座だけとなります。
注目する3点
以上のように、松屋銀座には他にはない希少なチョコレート商品があってどれも魅力的ですが、私が松屋銀座に注目している理由はこれとは別にあります。
それは以下の通りです。
- 本気の年
- 非チョコレート商品
- ノベルティの充実
それぞれのポイントと背景を説明します。
本気の年
最近ではバレンタインデーといえば百貨店と言われるくらいになりました。品揃えが非常に充実しているので、百貨店に来れば目的にあったチョコレートをほぼ間違いなく購入できます。
メディアでの露出が多いことも、「バレンタインデー」=「百貨店」というイメージを作り上げているでしょう。
しかし、そういった状況の中で、1869年の鶴屋呉服店を祖とする老舗百貨店の一つである松屋は、その旗艦店である松屋銀座で一昨年までバレンタインデーにほとんど力を入れていなかったのです。
2015年までは特設会場すら設置されておらず、17ブランド程度を提供するだけでした。昨年2016年になってようやく8階の半フロアに特設会場を設置し、50ブランド程度を販売するようになりました。
それが、今年2017年になると8階全フロアを使用し、100ブランド200商品を販売するようになり、百貨店最大級の規模まで拡充することとなったのです。
つまり、今年2017年は松屋銀座にとって、バレンタインデーで本気をだした年であると言えるのです。
では、ここ1、2年で急に拡充した理由は何でしょうか。
2017年バレンタインデーの責任者である食品部 MD課 バイヤー 鈴木章浩氏は「2015年まではブランド数や商品数が少なく、選択肢がほとんどなかった。しかし、お客様からのご要望にお応えするために、拡充することになった」と説明します。
加えて「恵方巻やハロウィーンなど様々な食の商戦があり、百貨店が関係ないというイベントはなくなった。あらゆることに挑戦していく必要がある」と、近年における動きの激しい食市場への対応であるとも話します。
バレンタインデーは昨年から力を入れ始めましたが、どうして昨年は8階の半分だけという規模だったのでしょうか。
鈴木氏は「最初の年でまだ実績がなかったので、様子をみながら開催することになった。しかし、大好評だったので、今年は思い切って全フロアを使用することにした。やりたいことができる」と気持ちを込めます。
2017年のバレンタインデーは松屋にとって、アイデアを全て具現化する時であると言えるでしょう。
非チョコレート商品
日本ではバレンタインデーで購入する商品はチョコレートと相場が決まっています。
そのような中で、松屋銀座は「JAPAN」「BAKE」といったカテゴリを設けて「和菓子」「焼菓子」をバレンタインデーの商品として提供しています。
和菓子に関しては、チョコレートを使ったものも、チョコレートを使っていないものも提供されています。
これに対して鈴木氏は「日本の伝統である和菓子をもっと盛り上げたいと、以前から考えていた。その想いから和菓子もバレンタインデーによいのではないかとご提供した。実演も行われ、見どころがある」と説明します。
「彩蜘蛛堂」の「恋もよう」はヴァローナ社製のチョコレートを使いながらも、和菓子らしい繊細なマーブル模様のテクスチャで恋心を表現し、彩り豊かな「薄氷本舗 五郎丸屋」の「Re:T5」は、口の中で溶けてトリュフチョコレートとは違うしっとりとした儚さを感じさせます。どちらとも和菓子ではないと表現できない質感でしょう。
焼菓子に関しては、「もともと焼菓子を中心とする手土産は松屋銀座の得意とするところであった。日持ちもするので、バレンタインデーにもよいのではないか」と鈴木氏は自信を覗かせます。
こういった非チョコレート商品について鈴木氏は「全部が全部チョコレート商品だけではつまらないのではないか。様々なお客様がいらっしゃるので、あらゆる需要に応えたい」とバレンタインデー商品を多様化させた理由を述べます。
チョコレートは確かに人気があるスイーツのうちの一つですが、苦手な人もいるだけに、商品が多様化すれば、バレインタインデー市場はより拡大し易くなるかも知れません。
ノベルティの充実
松屋銀座に注目する最後の点はノベルティです。
以下の通り、ノベルティが充実しています。
- 1000円以上購入で「体験型漫画サイネージ」利用
- 3000円以上購入、先着7000名に「幸福のブタ」フィギュアをプレゼント
- 5000円以上購入、先着5000名に「本音シール」をプレゼント
※いずれとも税込みの値段
特に「本音シール」が新しいアイデアです。バレンタインデーは通常、本命に向けたプランやイベント、仕掛けが多いですが、この「本音シール」は本命以外へ向けられたものになっています。
何かしらの展開を期待する男性からすれば、身も蓋もないメッセージになっており、そこが面白いところです。
- 「3倍返しでよろしく!!」
- 「
本気義理」 - 「恋愛禁止!いつまでも友達!」
- 「どう受け止めるか見ものだわ。」
- 「本気にしないでねー」
- 「喰ったらパワー出るぜ!」
鈴木氏は「本音シール」について「松屋銀座のお客様は、普段は40代や50代が中心。しかし、バレンタインデーには20代のお客様が多くいらっしゃるので、いつもとは違った面白いことを考える必要がある」と説明します。
携帯メールではもちろん、LINEやFacebookメッセンジャーなどのコミュニケーションツールでも絵文字やスタンプが普通の表現方法となっているだけに、「本音シール」は興味を持って受け入れられそうです。
ノベルティ以外の製作物、カタログも工夫されています。以前はA4やA5サイズでしたが、今回からはB5というポケットサイズになりました。
これに対しては「持ち運んで、参考にしてくださるお客様が多い。しかし、これまでのサイズてはバッグに入らず、折らざるを得なかった。利便性を高めるために、小さくして持ち運びできるようにした」と理由を述べます。
トークショーも開催
松屋銀座では、チョコレートの魅力をより多くの人に伝えるために、トークショーも開催します。
2月8日は多くの受賞歴を誇るカカオハンター小方真弓氏のトークショーが行われ、翌2月9日から11日の3日間にかけては、昨年大盛況だったことを受けて、サロン・デュ・ショコラにも寄稿し、チョコレート業界に造詣の深いショコラコーディネーター市川歩美氏が毎日異なる著名なショコラティエを招いてトークショーを行います。
トークショーは他の百貨店でも行われますが、松屋銀座のトークショーには市川氏や小方氏といった旬の方が招聘されているので注目したいです。
飛躍のチャンス
日本におけるバレインタインデーは、女性から男性へと贈るものから、お世話になった人へ贈る「義理チョコ」、さらには友達に贈る「友チョコ」や自分で楽しむ「自己チョコ」など進化していますが、松屋銀座は自身が得意とする焼菓子を取り入れたり、日本の伝統を盛り上げようと和菓子にも焦点を当てたりし、これまでのバレンタインデーの枠組みに囚われていません。
むしろ、本命以外の相手に渡す「本音シール」を作るなどして、後発らしい自由な発想でバレンタインデーの楽しみ方を進化させています。
2月14日バレンタインデーの曜日は、2016年は日曜日で義理チョコの需要が見込めず、業界全体で思ったほど伸びませんでしたが、今年2017年は火曜日となり義理チョコの需要も十分に見込めるだけに、バレンタインデーにようやく本腰を入れた松屋銀座にとっては、またとない飛躍のチャンスになるのではないでしょうか。