アイルランド代表を撃破したラグビー女子日本代表が”聖地”でNZ代表に初挑戦
これも女子ラグビーにとっては歴史的快挙か。欧州の強豪、アイルランド代表(世界ランキング6位)を撃破した15人制日本代表「サクラフィフティーン」が、ニュージーランド(NZ)代表(同2位)に初めて挑戦することになった。舞台は、あのNZラグビーの“聖地”、オークランドのイーデンパークである。
NZで開催されるワールドカップ(W杯)=10月8日開幕=に先立ち、このテストマッチは9月24日に実施される。しかも、男子ラグビーのブレディスローカップ、NZ代表「オールブラックス」対オーストラリア代表「ワラビーズ」の前座として行われる。ということは、収容5万人のスタンドはほぼ満員となるだろう。ワクワクするではないか。
29日開かれた女子日本代表の記者会見。当然、そのNZ戦の話題でもちきりだった。アイルランド戦で2トライと活躍したフルバック(FB)の松田凛日(りんか)は、「そこまで有名なスタジアムでプレーしたことはないので、すごく緊張しています」と顔をこわばらせた。客は多い方が燃えるのかと思いきや、20歳は小声で言った。正直だ。
「実は私は、お客さんが少ない方がプレーはしやすいんですけど…。多ければ多いほど、どんどん緊張してしまうので…。でも、自分にとっては、それもすごくいい経験になるのかと思っています」
松田凛日の父は、ラグビーW杯に4大会も出場した松田努さん。同じFB。大舞台を何度も経験し、大選手に成長していった。凛日が活躍したアイルランド戦の観客は女子ラグビーとしては異例の4569人が入った。スタンドの雰囲気を聞かれると、20歳は述懐した。
「(ディフェンス網を)抜けた時の歓声のあがり具合は、今まで感じたことがないものだったので、とてもうれしかったです」
女子日本代表のレスリー・マッケンジーヘッドコーチ(HC)はカナダ出身だが、来日する前はNZのクラブチームでコーチをしていた。3年前の就任会見の際、「日本代表はニュージーランドみたいに戦えるようになりますか?」と聞かれると、「そんなことはないでしょう」と応えた。こう、説明する。
「ニュージーランドのようなゲームをジャパンの選手にさせようとは思っていません。ジャパンらしくプレーしてもらいたい。人々にジャパンのように戦いたいと思ってもらい、選手たちにはジャパンらしく戦ってほしいのです」
レスリーHCは、NZとのテストマッチを「ジャパンが進歩した証」と位置付ける。日本代表が強くなって認知度も上がったからこそ、今回の招待試合が実現したのだろう。同HCは続けた。
「ワールドカップの初戦に向け、より深く学び、チームとして成長する非常に大きな機会となります」
会見の壇上では、レスリーHCの隣にプロップ南早紀主将が座っていた。NZ戦について、主将は「ワールドカップの初戦のカナダ戦より、大きなプレッシャーがかかるんじゃないでしょうか」と言い、前向きにとらえる。
「ワールドカップ前に大きなプレッシャーの舞台に立つことができるのは、チームにとって貴重な経験になるし、大きな前進にもなるととらえています」
どこで勝負するのか。
「相手がどういうチームであれ、まずは自分たちがどういうラグビーをしたいのか、どういう風に強みを出していくのかにフォーカスしていきたい」
そういえば、ラグビー専門誌の『ラグビー・マガジン』の今月号(10月号)の表紙を飾ったのは、ボールを抱えて突進する南主将である。ラグマガは1972年創刊。605冊目にして、女子選手がひとりで表紙を飾るのは初めてのこと。これまた歴史的快挙なのである。