ソファを置くのはもう古い? リビングの主役は「特大テーブル」の時代が来る理由
コロナ禍は、住宅にいろいろな変化を生じさせた。
郊外の住宅が関心を高めたり、住戸内にテレワーク用のスペースが設けられたりしているのだが、これもコロナ禍の影響では、と思える動きがある。
それは、大きなダイニングテーブルをLD(リビングダイニング)の中心に設置するマンションモデルルームが増え始めたことだ。
標準的なダイニングテーブルのサイズは4人用で「幅120センチ・奥行80センチ」。それよりも幅を広くして160センチとか180センチに、LDに余裕があれば200センチ、つまり2メートル以上にする。6人から8人の会食も可能になる特大のテーブルを置いて、3人家族、4人家族でゆったり使う。一方で、ソファはLDの端に追いやるか、隣接する洋室に配置……そんな暮らし方が提案されはじめているのだ。
冒頭の写真は千葉県浦安市で分譲中の「センチュリー浦安」で公開されているモデルルームの1つ。LDに幅180センチの特大テーブルを置いたシンプルな生活が表現されている。
「東京」をテーマに新しい暮らし方を提案しているもので、すっきりし過ぎている感じがしなくもない。が、必要に応じて、移動式道具箱やビーズ入りで形の変わるクッションなどを持ち込めば、楽しい空間になりそうだ。
部屋の使い方を固定しない、という自由さも、コロナ禍の今は心地よい。
下の写真は千葉県市原市で分譲が始まった「キャナルゲートシティ」のモデルルーム。ここでは、幅200センチの特大テーブルがLDの中心に置かれている。
これまでは脇役だった、ダイニングテーブル
大きなテーブルがLDの主役の座にすわることは今まで日本の住宅、特にマンションではなかった。
というか、モデルルームにダイニングテーブルを置くときは、標準サイズより小さめのものを選ぶことさえあった。なるべく部屋が広く見えるように、ミニサイズのダイニングテーブルを探したわけだ。
ダイニングテーブルを小さくしても、ソファは立派なものが置かれた。
それは、「LDの主役はソファセット」と考えられてきたからだ。
そのソファは、主にテレビをみるための席で、休日はパパの昼寝の場になりがち。が、ソファに家族が集まる光景は、近年多くの家庭で消滅しつつある。テレビをあまり見ない世代が増え、ソファは家族団らんの場ではなくなっている。
今は、テレビを見る時間よりも、スマホやパソコンを見る時間のほうが長い、という人が増えた。そして、コロナ禍で、家時間が多くなったとき、ソファでぐったりしているより、テーブルで勉強や仕事、趣味の時間を過ごすほうが前向きで好ましい、という気持ちもある。
ソファよりも、各自思い思いの時間を過ごすことができる特大テーブルのほうが今の生活スタイルに合っているわけだ。
その変化を敏感に感じとったマンション販売センターのスタッフが、各地で特大テーブルをLDの主役に抜擢しはじめた、ということだろう。
私も自宅に特大テーブルを導入した
確かに、家族が家にいる時間が増えた今、特大テーブルは魅力的にみえる。ステイホームの閉塞感が特大テーブルで解放されそうだ。
そう感じた私も、この春、自宅リビングに特大テーブルを導入した。
といっても、特大サイズなので、「置く場所がない」という状況では、買うことができない。
わが家の場合、幸か不幸か、使い続けていたソファが猫の爪とぎ攻撃により、表舞台から引退させてもよい状況になっていた。さらに、子供の独立などで、空いた部屋もあった。
そこで、リビングの模様替えをして導入した特大テーブルが、下の写真。幅180センチでカントリーの風合いがある。大幅に値引きしてあるのをみつけ、思い切って購入した。
使い始めると、食事の時間以外も家族の誰かが特大テーブルで時間を過ごしていることが多く、それは小さなダイニングテーブル時代にはなかった光景だ。
リビングの主役にすると、日当たりのよい場所になるので、家族が集まりやすいという効果も出るようだ。
なお、特大テーブル導入にあたり、システムキッチンに併設されているダイニングテーブルは、そのまま残してある。
大小2つのテーブルがあると、小さいテーブルは食材や食器の一時置き場として、また調理の補助台として活躍。小さなテーブルがあれば、食事時間に書類を広げたままにしても問題ないし、来客に備え、大きなテーブルをきれいにセットし、朝食は小さなテーブルで……といった使い分けもできる。
テーブルが2つあっても、まったく困らないのだ。
思い返してみると、昨年6月、東京都下で分譲されていたあるマンションのモデルルームでは、ダイニングテーブルとは別にもう1つ、作業台的なテーブルを置く生活が提案されていた。
家時間が増えると、ソファよりもテーブルのスペースが重宝する。だから、特大サイズテーブルの設置やテーブルの複数使いが考え出されるようになったのだろう。
試してみると、特大テーブルも複数テーブルも使い勝手がよい。コロナ禍をきっかけに、LDの主役がソファからテーブルに変わる可能性は十分にありそうだ。
幅180センチが、特大テーブルの基準
最後に、特大サイズのテーブルを導入する際のアドバイスをまとめたい。
特大サイズといっても、幅200センチを超えるテーブルは数が少なく、みつけるのに苦労する。幅200センチだと搬入に苦労することもあるので、160センチ幅か180センチ幅が現実的なサイズとなる。
特大サイズのテーブルをLDの主役にする場合、デザインに対する注意もある。
というのも、特大サイズのテーブルは、つくりが頑丈で、ハードな雰囲気になりがちであるからだ。大きく重い天板を支えるために脚が太い木製やスチールとなり、飾り気がなく、シンプルなデザインのものが多くなっている。
ワークテーブルの性格が強いデザインもあり、ソフトに仕上げられたインテリアにはマッチしないことがある。
特大サイズのテーブルをLDの主役にすると、インテリア全体もそれに合わせる必要が生じるわけだ。
そして、特大サイズのテーブルは生産数が少なく、値段が高くなりがち。「120センチ・80センチ」の一般的ダイニングテーブルならば、格安品をみつけることもできるのだが、特大サイズで大幅に安く売られているものを探すのはむずかしい(10万円以下ではなかなかみつからない)。
そこで、現状「120センチ・80センチ」のテーブルを使っている場合、同じ高さ、同じ奥行のテーブルを探したり、自作し、くっつけたり、離して使う手もありそうだ。その場合、2つのテーブルを「L」字型や「T」字型に配置してもおもしろいだろう。
特大テーブルの短所として、もう1つ覚悟すべきことがある。それは、特大サイズのテーブルは、結構重たいということ。50キログラム以上になることが多く、移動には2人以上が必要だ。
さらに、頑丈な脚部に足をぶつけると、思い切り痛い。家の中は素足で過ごす、という人の場合、足の小指をぶつけて涙が出るのも特大テーブルの「あるある」なのである。