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「僅差で首位打者を獲得した三冠王」と「僅差で三冠王を阻んだ首位打者」。今年のセ・リーグは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
村上宗隆 AUGUST 7, 2021(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 今シーズン、村上宗隆(東京ヤクルト・スワローズ)は、打率.327、44本塁打、107打点を記録している。現時点では、いずれもリーグ・トップだ。

 本塁打王と打点王は、ここから長期の欠場がない限り、まず間違いないだろう。それぞれの2位は、24本塁打の岡本和真(読売ジャイアンツ)と73打点の大山悠輔(阪神タイガース)。その差は、20本塁打と34打点もある。

 ただ、首位打者は、そこまで確実ではない。むしろ、不透明と言ったほうがいい。2位の佐野恵太(横浜DeNAベイスターズ)が.325、3位の大島洋平(中日ドラゴンズ)が.321、4位の宮﨑敏郎(ベイスターズ)は.318を記録している。村上と佐野の差は3厘に満たず、村上と宮﨑も1分離れていない。

 村上が三冠王になれるかどうかは、打率にかかっている。

 これまでの三冠王も、延べ11人のうち5人は、打率2位との差が1分未満だった。1965年に三冠王の野村克也(.320)はダリル・スペンサー(.311)と9厘差、1984年のブーマー・ウェルズ(.355)はトミー・クルーズ(.348)と7厘差、1985年のランディ・バース(.350)はチームメイトの岡田彰布(.342)と8厘差。それらに加え、1982年の落合博満(.325)と新井宏昌(.315)、1986年の落合(.360)とブーマー(.350)も、1分差に見えるが、実際は1分未満だ。

 また、こちらは1分以上ながら、1974年の王貞治(.332)と木俣達彦(.322)も近かった。現時点では最後の三冠王、2004年の松中信彦(.358)は、小笠原道大(.345)と1分3厘差だ。王と松中を含め、11人中7人の三冠王は、打率2位との差が1分5厘未満ということになる。ちなみに、松中の場合、44本塁打はフェルナンド・セギノールとタイ。三冠のうち一つを他の選手と分け合った三冠王は、松中だけだ。

 一方、本塁打王と打点王の二冠を手にしながら、僅差の打率2位に終わり、三冠王を逃した選手もいる。裏返せば、僅差で首位打者を獲得し、他の選手の三冠王を阻んだという見方もできる。

 今世紀に入ってからは、2002~03年のセ・リーグでそれが起きている。2002年は、松井秀喜が打率.334、50本塁打、107打点を記録し、本塁打王と打点王を獲得したが、打率は福留孝介(中日ドラゴンズ)に9厘差をつけられた。2003年は、アレックス・ラミレスが2位の打率.333、1位タイの40本塁打、1位の124打点。この時は、今岡誠がラミレスを7厘上回り、首位打者を獲得した。

 なお、二冠王と他1部門が2位の選手については、本塁打王と打点王と打率2位以外のパターンを含め、こちらで書いた。

「「三冠王」に迫った打者たち。二冠&1厘差未満の打率2位や1打点差の打点2位、2本差の本塁打2位も」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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